表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇女の帰還―約束の耳飾り― 番外編集  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

ーエリーナとエリアスー (なぜ皇后がエリアスの秘密を知っていたかの話)

本編と外伝、どちらにも通じる番外編です


エリーナは、国王が年を重ねてから生まれた、初めての女の子だった。


そしてエリアスは、国王の二男の息子として生を受けた。


叔母と甥という関係ではあるが、年齢は近い。


エリーナは甥というより弟のように、エリアスをかわいがっていた。


そしてエリアスに自分のお古のドレスを着せては、楽しそうに笑った。


「妹みたい」


エリアスは嫌がることはまったくなく、むしろ喜んでいるようだった。


ままごとをしたり、人形遊びをしたり――


二人はいつも部屋の中でいっしょに遊んでいた。


国王夫妻も、エリアスの両親も、二人がどんな遊びをしているのか知らなかった。


侍女たちは「仲がよろしいこと」と、微笑ましくその様子を見守っていた。


しかし――


それは五歳を過ぎても、七歳を過ぎても、終わることはなかった。


王は王妃を亡くし、悲嘆に暮れていた。


母を亡くしたエリーナとエリアスが寄り添っていることを、むしろ喜んでいた。


やがてエリアスの背が伸び始め、エリーナのドレスが着られなくなった時、エリアスは嘆いた。


「私も、ずっとドレスが着たい」


エリーナと侍女たちは、自分たちのせいだと思い込むようになった。


責任を感じ、こっそりと生地を調達し、エリアスに合うサイズのドレスを仕立てる。


やがてエリアス自身もそれを学び、自分でドレスを作るまでの腕前になった。


皮肉なことに、年齢を重ねるにつれ、エリアスの見た目は誰よりも男性らしくなっていった。


背は高く、たくましく、精悍な顔立ち。


「これじゃあ、ドレスが着られない……」

エリーナに愚痴をこぼす。


「仕方がないわ。あなたは男性なのですもの。

 もうあきらめて、男として生きるしかないわ」

エリーナはそう説得したが――


エリアスの心は、すっかり乙女だった。


そしてエリーナの自責の念は、消えることなく残り続けた。


やがてエリーナは嫁ぐことになる。


「エリアスをお願い。必ず、この子の秘密は守って」

事情を知る侍女たちを残し、エリーナは嫁いでいった。


嫁ぎ先では、女性騎士が護衛として仕えることになった。


任務中は甲冑に身を包んでいるが、任を解けば普通の女性に戻る。


「……何かが違う」


その時になって初めて、エリーナの中に、エリアスへの違和感が芽生えた。


エリーナは女医に相談した。

「知り合いに、こんな子がいるのです」と。


女医は答えた。

「ごく稀ですが、そういう方はいらっしゃいます。

 女性でありながら、自分は本当は男性だと感じる方。

 あるいはその逆も」


「それは、男性にもあるのですか?」


「あります。私は女医ですので直接診たことはありませんが、症例は聞いております」


「育ち方の影響は……?」


「いいえ。生まれついてのものかと。

 魂が、入れ物を間違えた――そうとしか説明できません」


エリーナは、ほっとしたような、けれど拭いきれない思いを抱えた。


本当に、自分のせいではないのか――と。


やがて時は流れ、ある時、エリーナは里帰りをする。


兄たちから「父の様子がおかしい」と聞いたからだ。


久しぶりに会ったエリアスは、変わらないままだった。


「あのね、今日訪問してきた隣国の王女、女性騎士なんだけど――

 とても背が高くて、体格は男性のようなのに、顔はとてもきれいで……

 着ているドレスがすごく似合っていてね。うらやましかったの。

 婚約者と一緒で、とても素敵だったわ」


うっとりと目を輝かせる。


「それは……よかったわ」


エリーナの顔が、わずかに引きつった。


そして翌日――


それが、ひとつの悲劇へとつながることになるとは、夢にも思わなかった。


数日後、突然決まったエリアスの結婚。


父の様子もおかしい。


婚約を破棄された女性騎士と、その婚約者のことも気にかかる。


エリーナは、言葉にできない思いを抱えていた。


そして、結婚式の晩、女性騎士に短い謝罪の文を渡してもらった。


だがしばらくして、結婚後の二人が穏やかに暮らしていると聞く。


侍女からの手紙にはこう書かれていた。


「お嫁に来られた方は、エリアス様を深く理解してくださり、

 一緒にドレスを選ばれることもございます。

 まことにありがたいことでございます」


「ありがたいことだけど……いいのかしら……」


エリーナは頭を抱えた。


「でも……ある意味、恩人ね。本当にありがたいことだわ」


――その後、内乱に巻き込まれ、自らが皇后となり。


そして自分を救い出してくれた騎士と、

そのエリアスの妻であった女性騎士との間に生まれた娘を引き取ることになるなど――


この時のエリーナは、まだ知る由もなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ