表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エデン プロトコル 〜 楽園の徒花、散りゆく瞬に花は咲くのか 〜  作者: βαch
デウス エクス マキナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/129

第60話:インテルラゴスの嵐

 決勝当日。空は、リベロ博士の不吉な予言を証明するかのように、漆黒の雨雲に覆い尽くされていた。


 インテルラゴスのすり鉢状のコースは、逃げ場のない巨大な「水槽」と化している。


ボム・ジア(Bom dia)! 全世界が息を呑んで見守る中、シグナルがブラックアウト! インテルラゴス決戦が今、スタートしました! 視界は完全に閉ざされています!」


 実況の絶叫が轟く。

 水飛沫を爆発させて突進する20台のマシン。1コーナーを最速で駆け抜けたのは、やはりマジシャンだった。


「見てください、マジシャンのあのライン! 全車がハイドロプレーニングを恐れてイン側を空けているのに、彼はあえて川となっている最深部を、浮き上がることもなく最短で抜けていきました!」


「……信じられん。統計学的には、あのアプローチでの完走率は0.03%以下だ。彼は、路面の摩擦係数を『計算』しているのではない。……風と水に、自らの質量を同調(シンクロ)させている。……もはや、物理学への冒涜ですよ」


 その神がかり的な背中を、乱菊は逃さなかった。


 カイザーの計算も、モンスターの咆哮も、今は背景に過ぎない。


 彼女の全リソースは、マジシャンのコンソールへと、一筋のプライベート・リンクを繋ぐことだけに注がれていた。


『見せなさい。貴方のその「神聖さ」という名の、最高に精巧なペルソナを』

(……深淵の底、貴方の正体を……今度こそ暴いて差し上げますわ)


 豪雨のケメル・ストレート、時速300km。


 乱菊は自らのマシンがスピンする確率をあえて「無視」し、マジシャンの(スリップ)の真後ろへ飛び込んだ。


 通信強度は最大。


 乱菊は、これまでの「収穫」で蓄積した全論理を、一つの(プログラム)に変えて叩きつけた。


 ――接続――





 だが、そこは今まで見たどの空間とも違っていた。


 壁がない。


 床がない。


 ただ、果てしない「空」と「風」が吹き抜けるだけの、空虚な空間。

 

「……な、に……? 何も、定義(デフィニション)されていない……?」


 乱菊の意識体が、その空白に立ち尽くす。


 そこに、ふらりと現れたマジシャンが、いつも通りの抽象的な微笑みを浮かべた。


「……君は、何をそんなに急いでいるんだい? ……そんなに強く『名前』を求めていたら、風を掴むことはできないよ」


「……黙れ。……貴方のそのポエム、どんな暗号(コード)が隠されているのか、私がすべて解読して差し上げますわ。……『赤が青に溶ける』? 『涙の色』? ……その論理的な意味を……!」


 乱菊は、マジシャンの「ポエム」という名のデータを、強引に自らの演算回路へと流し込んだ。








 ……それが、彼女の破滅へのトリガーになるとも知らずに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他に下記にも転載しています。
カクヨム>
アルファポリス>

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ