表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キジン師匠の裏祓い+α  作者: 朝霧 陽月
第2章 救って巣くう人でなし編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

第23話 仔犬がポメ太郎になった日【ポメ太郎視点】 ー過去回想編(参)ー

 拾って頂いてから世話を焼かれること数日。ある日鞠を転がして遊んで頂いてる時のこと、八尾姫は思い出したようにこう仰いました。


「そうだわ、アナタに名前を付けないといけないわね」

「わふん?」


 まだまだ言葉の理解できない当時の自分は、八尾姫様のお言葉に首を傾げます。


「それもそうですが姫様は、まだこの仔犬と主従契約を結んでおられませんよね?」


 そう口にしながら後ろから現れたのは、首に紅白紐と鈴を巻いた、すらりと凛々しい黒い犬。この方こそが、二匹いる神使の一匹——


「そういえば、そうだったわね黒郎(くろう)


 黒郎(くろう)殿であった。ちなみに殿という呼び方は、最初『先輩』と呼んだときに八尾姫様から『先輩よりも名前に殿って付ける方がいいと思うの~』というお言葉を賜ったために、そうしている。


「そもそもずっと思っておりましたが、ただの犬のままだとコイツはすぐに死んでしまいますよ。引き取って面倒を見るつもりなのであれば、そこはしっかりなさらないと」

「ふふふ、そうね。教えてくれてありがとう、アナタのお陰でいつも助かってるわ」


 そのように八尾姫様は朗らかに笑いながら、自分のことを撫でて下さる。


「それじゃあ、主従契約と名付けその両方をしっかりしないとね」


 が、急にこてんと首をかしげる。


「ところでこの子の犬種は何なのかしら?ふわふわな綿毛の妖精みたいで、可愛らしいけれど」

「確かこのような特徴の犬は、人間たちにポメラニアンと呼ばれておりますね」

「ポメラニアン……そうねぇ……」


 僅かな思案の後、八尾姫様はパンと手を叩いて微笑んだ。


「それではこの子の名前はポメ太郎にしましょう〜」

「理由をお聞きしても」

「ポメは可愛いから使いたくて、あとは男の子だから太郎!!」


 嬉しそうな様子の八尾姫様は、そのまま私の顔を覗き込んで言葉もロクに分からない自分にニコニコと問いかけてきた。


「ね?いい名前でしょ」


 当時の自分に名前の善し悪しなど当然分かりませんが、姫様が嬉しそうだから、ただそれだけの理由で自分も嬉しくなって「ワン!!」と鳴きました。


「ほら、ポメ太郎も喜んでるわ」

「それは大変結構なことですね」


 黒郎(くろう)殿の返事に満足したらしい八尾姫様は、続いて私の身体を優しく抱き上げた。


「それじゃあ、次は主従契約よね」

「くぅん?」

「本来のそれとは少し違うけど、この子は生まれつきの神獣や神使ではないから、格式ばったことは省略するわ」


 八尾姫様は抱き上げて私にコツンと額を当てて、契約に必要な文言を唱え出しました。


「彼の貴き天上の主より賜った権限の元、神霊八尾雀姫(やおのすずめびめ)の名のもとに新たな契約を結びます。今これこの時より、ポメ太郎を我が神使に任じるものとする」


 その瞬間、八尾姫様と私の中心にキラキラとした光と、周りを取り巻くような風が巻き起こり、当時の私は少しだけビックリする。しかしそれも束の間。


「これでよし」


 私のことを抱き直した八尾姫様は、自分の顔に頬擦りしながら満面の笑みを浮かべていた。


「今日から正式に、アナタはウチの子よポメ太郎。これからずーっと一緒にいましょうね?」


 優しい声音に、優しく笑う八尾姫様。

 ほとんど何も分からない仔犬だった自分だが、ただ一つ言えるのは、この時ほど安心できて満ち足りた気持ちになれる瞬間は、これから生きていてもうないだろうと思えるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ