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キジン師匠の裏祓い+α  作者: 朝霧 陽月
導入&第1章 蟲霊と呪術編

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第13話 キジンの行動はやはり唐突で謎 ー主人公の異変解決回(肆)ー

 くそ、それじゃあこの木の棒で一体どうすれば……。


 ——一旦それで戦ってみればいいだろう。


 ただの木の棒で無茶言わないで下さいって!?


 ——おい、誰がそれをただの木の棒だと言った?


 え?


 ——それは果たして本当に見た目通りの木の棒だと思っているのか。


 だとしても一体どうやって使えば。


 ——普通に刀なんかと同じように扱えばいい。たまに打ち込み練習はさせているだろう。



 あ、あのいつも急に掛かってこいって言い出して、最終的には木刀を持った俺がただただボコボコにされているだけのアレか……。


 ——やり返してこない相手とやったとて、意味はなかろうが。


 それはそうだけども!!


 ——と、長く敵から意識を外し過ぎだ。備えろ。


 迫ってくる気配に俺は横へ転がるようにして、側を掠めていく蟲男を避けた。奴はほぼ真上から俺に殴りかかって来ていたらしい。その一撃は地面を抉り、パラパラと土埃を上げていた。

 ヒェッ、ギリギリ!!そして相変わらず黒い靄の蟲が漏れててキショい!!


「その木の棒で何をする気だったかは知らないけれど、そろそろココにも飽きたし消えてくれない?」

「はっ、やーだね!!」


 チッ、師匠の説明が要領を得ないことはいつものことだし、こうなりゃヤケだ!!

 木の棒をしっかりと刀のように握り直すと、俺は蟲男を見ながらニヤリと笑った。


「てめぇは今馬鹿にした、この木の棒でやられるんだよ!!」


 と言いつつ、何をどうやってそうなるかは全然分からないけども……!!


「へぇ……」


 俺の挑発に流石にイラっとしたのか、そこは険呑な雰囲気が滲む。


「やれるもんならサァ、やってみろヨォー!?」


 そうしてやつは一直線に俺へ飛びかかってきた。

 うわぁぁああ!!やっぱり近づいて来るとキメェ!!だけど……十分に捉えて打ち込める速さだ。


「いっけぇぇえええ!!」


 自分が持っている物がただの枝だという不安を誤魔化す為にも、俺は大声でそう叫びながら蟲男へ迫ってくる攻撃を打ち込んだ。


 ザシュッ!!


 妙に生々しい音と、しっかりとした何かを切った手ごたえに俺は思わず手に握ったソレを確かめた。


「は」


 そこにあったのは先程までの木の枝ではなく紛れもない刀だった。しかも木の枝だった時よりも長くなっている気がする。

 ナンデェ!?!?


 ——だからさっき言っただろう、それが今のシキのための武器だと。


 これが俺の…………ん、ってことは?


「カッ、ハッ!!」


 うぉお!?この刀でザックリっぱっくりいかれた、蟲男が緑色の血を口からもデカい傷口からも流している……!!そしてその身体からは、黒っぽい蟲の残骸もボロボロと落ちて身体自体も崩れているように見えた。マジでコイツ蟲の集合体なんだな、纏まっている内に叩けてよかった……。


「く、クソ……騙したな!?」

「…………たかが見た目で油断する方が悪い」


 ——シキ自身も直前までそちら側だったくせに。


 …………。


「こ、こんなショボいガキが、まさか霊剣使いで、こんなに上手く気配まで隠しているなんて……」


 ……あ、え、俺って霊剣使いだったんだ、全然知らなかったんだけども。


 ——たった今成ったところだ。


 へぇ……。


「ぅ……傷口が全然塞がらない、霊力が練れない、身体も崩れていく……」


 あれ、もしかしてこのまま放置してても勝てる感じ?

 ドンドン弱って言ってるなら、何もする必要ないし……。


 ——バカめ、その手のやつらはそんなに甘くないぞ。


「……どうせ消えるなら道連れにしてやる」


 ポツリと聞こえたそんな言葉と共に、蟲男は凄まじい殺気を纏い眼前まで迫っていた。


「っ!!」


 それを俺は咄嗟に刀で受け流す。


 ——そら、ここでトドメだ。


 俺が動くのと、師匠の言葉、どちらが早いのか分からないくらい、無意識かつ自然に俺は蟲男の首を刎ねた。


「ガァ……」


 首は緑色の血を噴き出しながら綺麗に飛んで。蟲の残骸を落としながら崩れる身体は思ったよりも軽い音を立てて地面に倒れる。そしてそれから一瞬置いて、宙を舞った蟲男の頭はゴロリと地面に転がったのだった。


 …………お、終わった?

 ぎこちない動きでぐるりと周囲を見渡し、他に何も残ってなさそうなのを確認すると「はぁああ」と大きく息を吐きながら地面に座り込んだ。


「本当に本当に疲れたー!!」


 ——まったく雑魚一匹を相手にした程度で大袈裟なやつだ。


「いやいや、師匠にとっては雑魚かも知れないけれど、俺にとってはそうではないですからね!?」

「ふむ、そうか」

「そうですよ……って、え?」


 気が付くと座り込んだ俺の隣に、先程までは居なかった師匠の姿があった。


「え、いや、どうして師匠がココに?」

「見ればわかるだろう、今来たところだ」

「分かりませんけども!?」


 そんな気軽に瞬間移動してこないでよ……やっぱり人外って訳が分からなくて怖いな。と俺がそう考えていると、何故か師匠が俺の頭をポンポンと触りだした。


「いや、今度はなんですか……」

「大変だったらしいからな、特別に褒めてやっているのだ」


 この物みたいにポンポン頭を触っているコレが???

 撫でてるつもりなのだろうか……分からない、やっぱり怖い。


「お」

「次はなんですか……」

「シキ、貴様は勧められて先刻桃の菓子を食べたな?」

「……確かに食べましたけども」


 綾住さんに勧められて、学食で食べた桃のガレットのことか?


「あの小娘にも感謝した方とよい、アレのお陰で少しばかり能力が上乗せされていたようだ」

「ただの桃のガレットですけども!?」

「そもそもの話、桃には魔除けの力があるからな」


 あ……確かにそんな話も聞いた覚えはあるけども。それで能力の上乗せまで?


「上乗せに関しては、あの小娘の影響もあるな。桃との兼ね合いがよかったのであろう」

「あの人何者なんですか……」


 気のせいじゃなければ、綾住さんがいると蟲男の嫌な空気も弱まっていた気もするし、何かしら特別な力を持っていたのか。


「ごくたまにいる浄化の力や、ちょっとした加護なんかを持っている人間だな」


 何それいいな、俺も欲しい。

 反射的にそう思うと、相変わらず目隠しをしている師匠は、それでもよく分かるくらいいやらしくニヤリと笑った。


「シキには私が付いてるだろうが」

「……………………はい」

「なんだ、その間は」

「ナンデモナイデスヨ」


 師匠から目を逸らしつつ、俺はそこで改めて大きな溜息をついたのであった。

 何はともあれどうにかなってよかった……。


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