第12話 キジンは思わせぶりだし言動が色々と斜め上 ー主人公の異変解決回(参)ー
うぇぇ、完全に虫だ……しかも人間と同じ背丈、微妙に人間っぽい部分も混じってて気持ち悪い。あとさっきからぶわぶわ噴き出している黒い靄も、気体じゃなくて所々かなり蟲っぽいし、これもこれで気持ち悪い……全てが最悪すぎる。
——異形にビビって固まるな来るぞ?
師匠のそんな声が頭の中に響くとほぼ同時に、目の前の蟲の化け物も動き出した。
「死ね」
奴がそうやって腕を払うように動かすと、黒い靄こと蟲の大群が渦を巻きながら俺の方へと向かってきた。
「ぐわぁ!?嫌だ!!」
それを咄嗟に横へ転がるようにして避ける。蟲の渦はブゥーンという大量の羽音を響かせながら、先程まで俺が居た場所を通り過ぎていったのだった。
——コラッ!!避けずに迎え撃て、馬鹿者!!
無茶言わないで下さいよ!!というか、アレをどうやって迎え撃つんですか!?
攻撃しても打ち漏らしが発生して、残りの蟲に襲われるでしょうが……!!今の回避も遅れていたらどうなっていたことか……。
——おい、ぐだぐだ言ってるうちに次だ。
その言葉と同時に迫ってくる気配を感じて、俺は更に後ろへと飛び退いた。
しかし何が起きたのか理解したのは、避ける判断をした直後。蟲男本人が大きく腕を振りかぶって、俺のことを殴るために飛びかかってきていたのだった。
そうして奴の昆虫と人間が混じったような奇妙な腕が鼻先を掠め、今まさに俺が立っていた地面を激しく打ち砕いたのだった。
ヒェッ!?まるでゲームのキャラが出すみたいな攻撃で地面が破壊されてる!!
「おいおい、手が痛いじゃないか避けないでくれよ」
「んなの避けるに決まってるだろうが!!お前は勝手に手を痛めておけ」
「くくく」
蟲男はカチカチと下顎を鳴らしながら、俺の拳よりも大きな複眼をコチラに向けてくる。
思考が読めない、気持ち悪い、訳が分からない。人間と同じ大きさの蟲の化け物をどうしろって言うんだよ……!!
——まぁ所詮は虫だ、普通に蚊とかを殺すみたいにプチッとしろ。
どうみても蚊と同じでは済みませんが!?そもそもがデカすぎんだろ。
仕方ない。師匠から出発前に手渡されて、実はずっと小脇に抱えていた正体不明の謎の包を開くか……。
——もう少し自力で粘ってもいいんだぞ?
あんな人外の化け物相手に、自力で攻撃を二回も躱した時点で十分でしょうが……!!
——なんとも志が低い奴だ……。
こっちは身の安全が掛かっているんだ、どうとでも好きに言ってください!!
そうして俺は謎の荷物を包んでいた布をバッと捨て去り、中身を露にした。
「っ……こ、これは!!」
「ほう……」
——そう、それが今のシキのための武器だ。
いやいや、待って、どこからどう見ても、ただの木の棒にしか見えねぇ!!
おそらく長さは30センチ程度、ほんの少しだけ枝分かれもしている……なんだこりゃ!?
「まさか、そんな意味ありげに木の棒を出してくるなんて……やっぱり頭がおかしい子だったか」
ほら、敵からもこう言われてますよ!?
——現代社会で、あからさまな武器を持たせると銃刀法違反になるからな。
人外の筈なのに、変なところで法令遵守意識がたけぇぇえええ!!
——ふふ、もっと褒めてもいいぞ?
別に褒めてないっすからね……!!!!




