悪魔の告白
私は呆然とし、その場に座り込む。味方であるダヴィードの顔を見る。彼も驚いて固まったままだ。
ファシーがお腹を抱えて笑っている。ケイデスは仕事を終えたかのようにこの場を去ろうとしている。
私、負けたの……。死ぬの……。
力が抜けて行く。目の前が真っ白になる。そして、アゲリーナに言われた言葉が私の頭の中で反すうされる。
地獄で待ってるわよ……。
そっか、私も地獄に行くのね。いっぱい、色んな人達に迷惑を掛けたから天国じゃなくて、地獄なのね。当然よね。
安らかに眠るように静かな最期が良いと、私は目を閉じる。
力が入らずうつ伏せに倒れる。まだ彼等の声が聴こえる。あの世にはまだ行ってないようだ。
「やったわ、先生。あの邪魔者が居なくなったわ。これで私が王女。そして、カイル様のお嫁に私がなるの。オホホホ、最高だわ。最高に気分がいいわ」
興奮しているファシーの声が耳に届く。
「ファシーちゃん、行くよ。もうここに用が無いだろ」
今度はケイデスの声だ。まだ声が続いている。
「あ、ダヴィード。まさか、ニセモノちゃんの敵討ちとか言って襲い掛かって来るの? いいよ、おいでよ。虚しいよね。護るものを失って、自暴自棄になって戦いに挑むなんてさ。別に逃げてもいいよ。見逃してあげる。どうするの? 戦うの? 逃げるの?」
しばらく沈黙が続く。ダヴィードは何も声を発していない。やはり、私が死んだ事がショックで何も話す事が出来ないのだろう。
すると次の瞬間、耳を疑う声が聴こえて来る。
「フハハハ、面白れぇよ。最高だ」
ダヴィードの声だ。彼は笑っている。私が死んだのになぜだ?
ちょっと、それは無いでしょ。一緒に戦って来たのに。どういう事よ。ひどいわよ。
頭に来る。起きて殴りに行こうか。そう思っていると、さらに驚きの言葉を掛けられる。
「アルダ、聴こえてるんだろ? そろそろ起きろよ」
ダヴィードの声に反応し、私は身体を起こす。周りを見てみる。ここは別荘の芝生の上だ。ダヴィードとファシー、ケイデスが居る。
あれ、地獄じゃない。ということは、私生きている? なぜ?
驚いて、体中を触ってみる。感触がある。何も変わっていない。不思議に思いながら、周りを見る。
ファシーとケイデスも驚いて固まっている。何が起きているのか理解していないようだ。
一足先にファシーが我に返る。
「先生、あの女生きてますけど、どういう事ですか? 即死魔法が不発したんですか? 今日は調子が良かったんじゃないですか?」
「いや、そのはずなんだけど。こっちが何が起こったか聴きたいよ」
そう言って、ケイデスはまた手を伸ばし、私に即死魔法を放つ。死の光が私に飛んで来る。光は私の身体を貫通し、向こうへと飛んで行く。
え、どういう事? 何ともないんだけど。私はすでに死んでいるって事なの?
意味が分からずダヴィードの顔を見る。ダヴィードはお腹を抱えて大爆笑中だ。
ファシーとケイデスはポカンとしている。一人だけ真相を知ってバカ笑いしている悪魔に怒りをぶつける。
「ダヴィード、説明しなさいよ。私の身体に何かしたの? ふざけてないで教えなさいよ」
「いや、すまない。あまりにもファシー嬢とケイデスの反応が面白かったからな。つい笑い転げてしまった」
ダヴィードは笑顔から真顔に戻る。
「アルダ、あんたの身体は魔法を一切受け付けない、特殊体質なんだ」
ダヴィードが衝撃の告白をする。まるで雷が直撃したかのように私は立ち尽くす。
「つまり、アルダの身体は魔法耐久力が最強って訳だ。あらゆる魔法が効かない。魔法使いからしたら疫病神みたいなもんだ」
「え、嘘でしょ」
両手で口を抑え、絶句する。
魔法が一切効かない身体? この私が? 信じられない。
ダヴィードは続ける。
「アルダと初めて会った時、そう町でパンを貰った時だ。あんたの指に俺の指が触れた、あの時だ。俺は洗脳魔法を発動したのに、洗脳できなかった。あんたは何も変わらず平然としていた。正直、驚いたよ。産まれて初めての経験だった。だから、俺はアルダに興味を持った。もしかしたら、世界で唯一俺の洗脳魔法が効かない相手かもって思ったんだ」
また驚きの告白をされる。私は目をパチパチさせ、最大の疑問をぶつける。
「それじゃ、あなたが私の味方になった理由っていうのは?」
「そう、本当に俺の洗脳魔法が効かないのか試してみたかったんだ。だから、アルダに近付いた。側に居て、検証してみた。その結果、俺の仮説は証明された。あんたは俺の洗脳魔法が効かない唯一の人間。そして、あらゆる魔法が効かない人間なんだ」
予想しなかった真実に私は戸惑う。しかし、新たな疑問が出て来る。
「何で今の今まで言わなかったのよ。炎の悪魔との戦いでもそうだし、毒の悪魔の時も」
「仮説と言っただろ? 炎の魔法と毒の魔法が絶対に効かないという保証はなかった。もし俺の予想が外れていたら、あんたは焼け死ぬか、毒に犯され泡吹いて死ぬかだぞ。そんなリスクの高い事、出来ないだろ?」
確かにそうだ。試しに炎と毒を受けてみろと言われても絶対に断る。
「まぁ、アルダが寝ている間に色んな魔法使いを洗脳して連れて来て、魔法を掛けてみたから。検証は何度かしている。だから、自信はあったんだけどな」
実験して面白がっていたのか。
やっぱり一発殴りたい。この時の私は思うのであった。
小説を読む方は頭が良く、人の気持ちの分かる人だと聴きます。
そんな優秀な読者の皆さんの為に、面白い小説を書いていきますので、これからも読んで頂けると大変嬉しいです。
もし良かったら、今後も宜しくお願いします。




