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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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王女にならなきゃ

 アゲリーナの泊まっている宿はオガルコフ家領最果ての町ナッツにあった。ここは小さな農家の町だ。宿も旅人や冒険者が泊まるような場所で、貴族の人間が泊まるようなところではなかった。


 そんな簡素な町にアゲリーナは居るのか?


 半信半疑で町の宿の扉を私は開く。


 日は今さっき暮れたばかりだ。町に入った辺りまでは夕暮れで明るかったが、今はもう真っ暗だ。私達は宿の主人に話を聴くことにした。


「おい、親父。ここに貴族のお嬢様が泊まっていないか?」


 ダヴィードがカウンター越しにチョビ髭の主人に尋ねている。聴き方がすごく乱暴だ。宿の主人はムッとした顔で応対する。


「そんな客来てねぇよ。アンタらうちに泊まるのか?」


「いや、泊まらない」


「じゃあ、早く出て行きな」


 髭の主人の横柄な態度で、ダヴィードは眉根を寄せる。次の瞬間、彼は手を伸ばし、右手で主人の額を鷲掴みする。


「誰に言ってるんだ、このボケ。さっさと知っている事を吐け」


 ダヴィードお得意の洗脳からの無理やり自白だ。ダヴィードが手を離すと、宿の主人は泣きながら頭を下げ始める。ひたすらダヴィードに詫びを入れた後、主人は口を開き始める。


「実はうちの一番豪華な部屋にお泊りしてもらってるんですよ。短い黒髪のお嬢さんですよね。間違いないです。黒ローブの気持ちの悪い男にこの事を喋ったら殺すなんて口止めされてましたから。スイマセン、だから、言えませんでした」


 やっぱりここにアゲリーナさんが居るんだ。


 私はダヴィードと顔を見合わせ、小さくうなずく。


「親父、その部屋まで案内しろ」


 ダヴィードが髭の主人に恫喝すると、主人は慌てて案内を始める。


 私達は主人の後を付いて行く。主人は一番奥の部屋を案内する。ダヴィードはドアを激しくノックする。


 すると、ガチャと中から音が聴こえ、部屋のドアが開く。


「うるさいわよ、ポイゾネ。あの女、ちゃんと始末したんでしょうね?」


 ドアの隙間からアゲリーナの姿が見える。その瞬間、ダヴィードはアゲリーナの首に手を当てる。


「ポイゾネは死んだ。アルダは生きている。そういう事だ。お嬢さん」


 フラフラとアゲリーナは後方へと下がる。そして、驚いた表情で私の顔を見つめる。


「おのれ、このメスブタめ。殺してやる」


 アゲリーナさんが逆上し、拳を振り上げる。ダヴィードはそれを制すように怒れるお嬢様に告げる。


「退け、アゲリーナ。大人しくそこの椅子に坐れ」


 顔を真赤にしたアゲリーナは鼻息を荒くさせながら、豪華な椅子にどしりと坐る。それを見た私達はアゲリーナの部屋へと入って行く。


 アゲリーナの泊まっていた部屋は一番豪華と言われるだけあって、高級そうな家具が揃っていた。値段の張りそうなテーブルにタンス、ソファもある。私とダヴィードはアゲリーナの正面のソファに腰を掛ける。


 アゲリーナはかなり興奮をしている。ダヴィードが洗脳魔法を掛けている為、大人しく椅子に坐っている。もし彼女が洗脳されてなかったら、間違いなく私に襲い掛かって来ただろう。


 アゲリーナがフーフー息を切らせながら、会話を再開する。


「ポイゾネは失敗したのね。あの役立たずめ。使えると思って気持ち悪いのを我慢して近くに置いてやったのに。クソが」


 彼女の目が私を殺すぞと訴えている。私は恐いのでアゲリーナからの視線を外す。アゲリーナはそんな私を見て、罵声を浴びせてくる。


「この裏切り者。王子様にお断りするんじゃなかったのかよ。ホント最悪な嘘つき女だわ。ファシーの奴に殺されろ、バーカ」


 さすがに私も頭にきて、言い返してしまう。


「私はちゃんとお断りをしたわ。でも、カイル様が他の娘から嫌がらせを受けているのなら、私が護るって言って下さって。アゲリーナさんはどうなのよ? ちゃんとお断りするって言ってたのに、カイル様に聴いたらそんな話してないって」


「お断りなんかする訳ないだろが。こっちはな、産まれた時から王子と結婚する為に育てられて来たんだよ。小さい時からダンスにテーブルマナー、格闘技、色んな教養を叩き込まれて来たんだ。それを何も苦労をした事のないようなポッと出の平民風情が泥棒みたいに王子を持って行ってみろ。そりゃブチ切れるだろうが」


 鬼のような顔で私を罵倒して来る。優しく私に微笑み掛けていたアゲリーナさんは見る影も無い。私はアゲリーナさんの事がかわいそうになり、同情してしまう。


「そんなになるくらいカイル様の事を愛していたんですね? ゴメンナサイ」


「は? 勘違いしてんじゃねぇぞ。私が愛しているのは王族という肩書き。そして、王女っていう地位よ。今日昨日会っただけの軟弱な男に何で惚れるんだよ、バーカ」


「アゲリーナさんにはあの方の優しいところが分からないの?」


「私に説教する気? 調子に乗るんじゃねぇぞ、この平民が。うちら貴族はな、お前ら平民みたいに恋愛ごっこしてる場合じゃねぇの。家を背負ってるんだ。これは政治であり、戦争なんだ。負けたら終わりなんだ。王女にならなきゃ人生終わりなんだよ」


 アゲリーナの言葉は私の胸にえぐるように刺さった。




 






読んで頂きありがとうございます。

読者さんのおかげで何とか執筆出来ています。

これからも宜しくお願いします。

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