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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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形勢逆転

 ダヴィードが苦しそうに膝を付き、立ち上がろうとする。私は我に返り、彼を助ける為に手を差し伸べる。が、ダヴィードに手を振り払われる。


「俺に近付くな。アイツめ、手から針状の毒の魔法を出しやがった。危ないから下がっていろ」


 すぐさま、"毒の魔法使い"に視線を移す。ポイゾネも火傷がかなり酷いのかフラフラしている。しかし、目は死んでいない。ダヴィードを威嚇するような目で睨んでいる。


 ダヴィードの様子を窺う。彼の左足の太ももに擦り傷のような跡がある。


 まさか、掠っただけで毒がこんなに効いてるの?


 私は心配になり、ダヴィードに訊ねる。


「大丈夫なの? 動けるの?」


「あぁ、足に掠った程度だからな。でも、常人なら掠ったくらいでもアウトだ。俺は普通のヤツより魔法耐性が高いからな」


「魔法が効きにくいってヤツね。毒の霧も吸っても大丈夫って事なの?」


「少しならな。でも、俺にも限界がある。あまり多く毒を受け続けると俺も終わりだ」


 ダヴィードの言葉で毒の魔法の脅威を思い知る。私なら少しでも毒を受ければ死んでしまう。足手まといにならないように、私はダヴィードの後ろに下がる。


 ポイゾネがまた右手を前に出す。


「チッ、毒針の魔法でも死なねぇか。ならばやむを得ない。食らえ」


 ポイゾネの声と共にまた風切音が聴こえる。早過ぎて、毒針の魔法が見えない。私はダヴィードに肩を抱かれる。


 ダヴィードは私を庇いながら、大きく左に交わす。私達のすぐ脇を毒針が通り過ぎて行く。


 今度は上手く交わした。


 そう思って、急いで”毒の悪魔”を確認する。しかし、ポイゾネの姿が見当たらない。


 また新たな攻撃をするつもりなのか。


 私は警戒心を強め、周りを注意深く観察する。


 すると、ダヴィードが拳を握り締め、震え始める。


「あの野郎。逃げやがったな」


 え、今、何とおっしゃいましたか? ダヴィードさん。


 言っている意味が分からず、私はポカンとしてしまう。


「アルダ、アイツを追うぞ。今のヤツはかなり弱っている。ここで逃がすと二度とヤツを倒せなくなる。行くぞ」


 ダヴィードは私の手を引き、走り出そうとする。


「ちょっと待って。前を見てよ」


「あ……」


 私達が向かおうとしたその先は毒の霧で白くなっていた。今居る場所はキャンプファイヤーが炎を上げている為、毒の影響は無い。しかしこの先、霧の中を追いかけて行けば無事では済まない。


 ダヴィードもそれに気付き、足を止める。彼は悔しそうな表情を浮かべ、地面を蹴っている。


 あのまま戦っていたら、恐らくダヴィードがポイゾネに勝利していただろう。それくらい”毒の悪魔”は火傷を負って弱っていたのだ。その証拠に”毒の悪魔”は逃げた。”毒の悪魔”は冷静だったのだ。このまま戦えばダヴィードに命を奪われる。賢明な判断だと、悔しい感情と共に私はそう思った。


「ぎゃあああああああ」


 森の奥の方から恐ろしい叫び声が聴こえる。声の主はポイゾネだと推測される。毒の霧が掛かって視界が閉ざされているので、詳しい状況は分からない。私とダヴィードは顔を見合わせる。


「アイツ、トラップに引っ掛かったかもしれないな」


 ダヴィードがポツリと呟く。私はダヴィードの顔をチラリと見た後、毒の霧が掛かった森の先を見つめる。


 すると、毒の霧が次第に薄れて行く。見る見る内に晴れて行き、視界が完全にクリアになる。


 これはチャンスなの? それとも、敵の罠?


 私が疑心暗鬼になっていると、ダヴィードが声を上げ走り出す。


「行くぞ。ヤツをここで倒す」


 走り出している悪魔に付いて行く為、私も息を切らせて走る。


 しばらく走り続けると、ダヴィードは足を止める。彼は一点を見つめている。ダヴィードの視線の先を私も視界に入れる。うつ伏せに倒れている”毒の悪魔”の姿がそこにはあった。


 ポイゾネの足に矢が刺さっている。やはりトラップに引っ掛かって怪我をしたみたいだ。


「アルダ、離れていろ。恐らく奴は死んでいない」


 ダヴィードの言葉で息を呑む。注意深く倒れているポイゾネを観察する。


 すると、ポイゾネがゆっくりと身体を起こし始める。足には矢が刺さったままで、そこからかなり出血をしている。


「ヒヒヒ、こんなチンケな罠を仕掛けやがって、ムカつく野郎だ。だがな、また形勢逆転だ」


 ポイゾネは私達を見ながら、立ち上がる。ニヤリと笑みを浮かべる。次の瞬間、身体から白い霧状の物が発生する。


「これが何か分かるよな、ヒヒヒ。そう、お前らの大好きな毒の霧だ。炎は今無いからな。意味、分かるよな?」


 やられた。


 この瞬間、私は絶望を感じる。まさに言われた通り形勢逆転された。万事休すだ。


 ダヴィードの顔が視界に入る。彼は笑っている。私は驚き、目を見開く。


 ダヴィードは右手を上げて振り始める。視線はポイゾネの後方を見ている。


「おーい、アゲリーナ嬢さん。こっちだ。ここにポイゾネが居るぞ。早く、来い」


 再び、私は驚きダヴィードの見ている方を見る。ポイゾネも驚き、毒の魔法を放出を止める。そして、急いで後方を振り返る。


読んで頂きありがとうございます。

これからもなにとぞ宜しくお願いします。

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