第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その2
◇ ◆ ◇
うん?ニーニくん?
そのあだ名で呼ぶのは、若干一名。
瑠璃の友達であり、小学時代は学童の後輩でもあった山吹凪咲だけである。
しかし、俺の知る山吹凪咲はなんというか、もっと可愛らしい格好しつつ、小学生時代から瑠璃と比肩する優等生であり、当然髪は黒髪ロングで落ち着いたオシャレな服装だったような・・・。
ついでに家もお金持ちで、中学からは私立の名門お嬢様学校に通っていたような・・・。
だが、現在、目の前にいるのは、お嬢様と呼ぶにはちょっとだらしなさすぎる格好の少女。
テンション低めで少し眠そうな、冷めた目。
大きめパーカーとかはいいとしても、ピンク豹柄はどうなの?
それにドクロのヘッドホンとピアス・・・も、ドクロだし。
一見タバコに見えるのはまぁ飴だからいいか。
でも、フードを下ろして金髪を掻きあげたその手には、いわゆる悪そな奴らはだいたい友達的な人らがよく入れてる感じのタトゥー・・・お嬢様以前に、中学生でそのタトゥーはどうなの?
顔は確かにちゃんと見れば山吹凪咲ではあるのだが、雰囲気、前とあまりにも違いませんかねぇ?
これは・・・『 生 き 別 れ た 双 子 の 姉 』の可能性あるで?
「これ投げたの、ニーニくん?」
山吹凪咲似の少女は俺の眼前に食卓塩をプラプラ振りながら突きつけた。
「誰かに当たったらぁ、危ないと思いますよ?」
返事を待たずに、俺を犯人と決めつけて言った。
いや・・・犯人だけどさ。
「お、あ、ご、ごめん」、たじろぐ。
鼻先にある食卓塩を思わず受け取る。
「うん。」と納得した顔の少女。
「あと、そこ」
「ソコ?」
「そこ、あたしの席なんです」と、俺の座っている場所を指さした。
くいっとアゴで横にずれるように促される。
なんだなんだ?
押しが強いぞ?
こんな子だったっけ?
前は、もっと、こう・・・
「あたし、ニーニくんみたいなお兄ちゃんがほしいな~(赤面)」とか、
「ニーニくんが私のお兄ちゃんになってくれたらいいのに~、そしたらいつも一緒に居られるのになぁ・・・(照れ)」
・・・みたいな感じだったよ?
瑠璃が冷淡になっちゃって、妹分が不足気味だった俺の心のやらかい場所をキュンキュン締め付けて来たのだが・・・。
今のこの態度は、俺の心のM的部分をギュウギュウ締め付けてくるハーッ!
そもそも神社の社の古びた階段が私の席ってなんだ?
そして、この階段横長なんだから、どこにだって座ったらいいじゃん?
つーか、学校は?
サボり?
俺がちょっと混乱気味に反応に困っていると、
「あの、・・・どいて、くれます?」
と、手で払うような仕草。
タトゥーにどうしても目が行っちゃう。
黄色と黒の・・・太陽を模したようなデザインのタトゥー。
シールのやつじゃないよな。
ちゃんと彫ってる・・・。
ん。なんか・・・やだな。
俺は、お、あ、ああ、うんと、どもりながら立ち上がる。
視線にビビッてあわてて二メートルほど、階段の右端まで移動した。
やり過ぎだよ俺。
明らかにオーバーアクションだよ俺。
不審だよ俺。
いつも通りだよ俺。
少女は、今まで俺が座っていたところに、ちょこんと座ると小さい声で、あったかい・・・とつぶやき、ちょっと笑った。
小さなたんぽぽがポンと咲いたような、とても、可愛い笑顔だった。
彼女がこちらを向き直り、自分の隣をペシペシと叩いて
「そんな遠くに行かないで、ここに来てください」といった時には、もう笑っていなかったけど。
なんだか気圧された俺は、ハ、ハイなんてマヌケな返事をして、ジリジリと寄る。
隣に座るのは憚られて、50センチくらい空けて、小さくなって座った。
「このスキマ、なんなんですか?」
じとっとした視線が俺に絡みつく。
かなみもそうなんだけど、女の子はこちらをまっすぐ見つめてくるのやめて欲しい。
ドキドキするから。
ただでさえメリーさんがらみで心拍数オーバードライブ気味なのだ。
一人吊り橋効果で勝手に好きになってしまうぞ!
そして、この隙間?
うーん。なんだろうね~。
かなみに対してぶっきらぼうキャラを演じさせるストイックという名の俺の純情が、女の子の隣りに座ることを無意識に拒否した結果の50センチかな。
それともいきなり金髪タトゥーキャラになっちゃった君への若干の警戒心から来る心の距離だろうか。
「こっちぃ・・・つめて、くださいょ・・・」
ストイックと心の距離を即座に破壊しにきやがった。なんて子!
なんかアレだよ。
ちょっとゆっくり喋るの、ツボだよ。
年下なのに落ちつている感じが、余裕見せつけられてる感じでさぁ!
だから当然距離を詰めることなどできないね!
「ニーニくん・・・なんか・・・」
50センチの隙間にタトゥーの入った手をつく。
体を斜めに寄せ、顔をすっと上げ・・・唇を俺の耳に近づけて小さい声で
「・・・もしかして、少し、照れていますか?」
そう囁いた。
耳に、吐息がふわりとかかった。
「ハぶワッアッ! アアッ!」
謎の叫び声出ました、俺。
ビックンと飛び上がる。
心臓、口から出るかとオモタワ。
スーッ、ハーッ!
息を整える。
回復せよ!
俺の理性!
「はー。 ・・・や、やー。 あのさ・・・」
ようやく口を開く。
意味もなく服の皺を払って、取り繕う。
おいおい、俺ってば中ガキ生相手になにドギマギしてんだか。
相手はボバーンな人妻じゃねぇんだぞ?
冷静になれ。
大人(高二童貞)の威厳を見せる時だ!
この、横で中学生と思えないような微笑を浮かべているガキにビシッと言ってやれ!
大人をからかうなって!
「き、き、キミィ、や、やま、山吹凪咲ちゃ、んっ、だよねぇ~?」
ぜんっぜんビシッと言えてねぇええ!
噛み過ぎにも程がある!
思い切り声裏返ってるじゃん!
マスオさんか!
しかもいま、本人確認する?
そして、山吹凪咲と思われる少女は、きょとんとした顔をしている。
あれ?
違った?
やっぱり双子の姉のほうだった?
「えと・・・。ニーニくん、私を誰だと思ってたんです?」
「や、そりゃ、山吹、凪咲・・・さん、でですが」
何だこの噛み方は。
デデスガってなに!
語尾につけるデュフフと同じくらい駄目だぞ、デデスガ。
しっかりしろ俺。
少女はクックッと笑いを堪えている。
あれ?なんかウケた?
口元を抑えてプルプルしたあと、
「ぷ、な、なんで、フルネームで、さん付けなんですか?」
「あ、あー、まぁ、違ってたら、失礼かなと思って」
だって、昨日からの不可解な出来事とか、さっきまでのてんやわんや考えたら、まだ、君が山吹美咲(双子の姉)の可能性あるからな。
「ふふ。前みたいに、ナギちゃんって、呼んでください」
可能性なかった。
やはり本人だった。
ていうか誰だよ美咲って!
そんな奴いねぇよ!
「あ、もしくは・・・ルゥも居ないですし、ナギサって呼び捨てでも・・・いいんですよぉ?」
顔は近いまま、目を横にそらせて・・・ちょっと顔赤らめて・・・。
えーと 、あれ?
な に そ れ !?
混乱したままその2へつづく




