第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その1
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・・・おなかが。
・・・すいた。
・・・ノドも。
境内に茂る木々の、木漏れ日が眩しくて、顔の前に手を翳しながらそう思った。
一時間経ったか。
いや、二時間くらいかも・・・。
メリーさんに襲われるパターンをいくつも想像してしまって、境内から動けなくなった俺はもはやここに監禁されているも同義。
まさに自縄自縛。
自分の卓越した妄想力が恨めしいぜ。
これあれだな。
戦乱の世において、戦を避けるために慎重派な軍師の意見ばかりを採用して、結局ジリ貧になって、最後に援軍の見込みの無い籠城戦で餓死するパターンだな。
なぜなら、いまもう、すごくお腹が空いている。
健康な青少年ならみんなそうだと思うが、二限目の授業の後って既に持参した弁当食べてるじゃん?
で、昼飯は学食で食って、学食の後、購買でパン買って教室で食うじゃん?
放課後、部活前(俺は生徒会だけど実質部活みたいなもんだよ)に、購買部横の自販機でカップ麺買って生徒会室でお湯入れて食うじゃん?
なんなら、生徒会書記でボードゲーム仲間の板垣はその時間二個目の弁当食ってるし(カップ麺のあとで)。
しかもゲーム(主にカード系)の妨げになるから弁当二号はたいていサンドイッチだ。サンドイッチ伯爵天才。
で、帰宅してチャーハンかピラフをチンして食べて、少ししたら晩飯。
その後、夜食に冷凍うどん安定。
で、寝ると。
これがスタンダードじゃん?
そうなんだよ。
そうなんだよ?
別に俺、太ってないよ?
板垣は・・・はは。
ま、そんな俺がですね。
もうすぐ昼かなって時間なのに、何も食ってない。飲んでない。
しかも今日は朝からやたらと心臓や脳がカロリーを消費しているし、なんだか無駄に走り廻っている。
ただいま恐怖より空腹が上回りつつあります。
恐怖軍に支配されていた脳内勢力図に空腹軍が乱入してきて独裁が崩れました。
でも、城(神社)から打って出て、駅横のラーメン屋で喜多方ラーメン食う勇気はないです。
つ ま り 補 給 線 は 断 た れ て い る 。
もう一度ガサゴソカバンを漁る。
なんかないかな・・・。なんか・・・。
「なんかなーい? なんかなーい? ねぇーおかーさーん・・・」
と言ってみたところで『味好み』は、なかった。
その代わり、御祓いに使えるかと思っていた食卓塩がありました!
やったーっ!
食べ物だーっ!
笑顔でカバンの中から食卓塩を掲げる俺。
「 食 え る か ー っ ! 」
とりあえず投げ捨てた。
石畳で跳ねた食卓塩は、鳥居外の階段へカン、コン、コン・・・と音を立てて、転がり落ちていった。
あぁ、このままでは、飢え殺し(かつえごろし)待ったなしです。
黒田官兵衛もひどいことしやがる。
「あー、はらへったー。チクショー、クソバカがー。メリーめー・・・」
社の階段にもたれかかり、空を仰いで、つぶやいた。
その時。
ジャッ、ザッ、ザッ・・・
え?なに?
足音?
うん。足音。
鳥居の外、階段を誰かが登ってくる。
あれ? あれあれ? 来ちゃった?
もしかしてメリーさん来ちゃった?
はい! うそです! クソバカとか、違う。
メリーさん優秀。天才。偏差値80! IQ300!
だ か ら 来 な い で !
ザッ、ザッ、ジャリッ。
時折り砂利を噛む音。
近い。
もう、すぐそこまで来ている!
俺はそんな中、全く動けずにいた。
逃げもせず、武器(松井バット)も構えず、カビンをギュウと抱きかかえた。
お 助 け ー ッ !
そして、何もできないまま、鳥居の向こうに頭が見えた。
ん?
あ、ダイジョブそう。
もう、全身見えた。
小柄な女の子。
フードからはみ出た金髪。
顔、かわいい。
黒地にピンクの豹柄のダボッとしたパーカーを羽織ってポケットに手を突っ込んでいる。
フードには猫耳が付いている・・・。
豹柄だから豹耳か?
ドクロマークのでかいヘッドホン首にかけてる。
ごつい迷彩のウエストポーチ。
短めの、なんか段々になってる焦げ茶のミニスカ(カスケードスカートとかいうんだっけ?)。
そして黒のニーハイソックス(我、絶対領域発見せり!)。
そしてゴツイスニーカー。
なんか全体的にごついアイテムつけるの好きなのかな?
かわいいけどちょっとDQNぽい。
あ、なんか咥えてる。
ん? タバコ? 悪い子?
そんな子が、鳥居の前に現れた。
仁王立ちで、こっちを見ている。
その子は、境内の砂利をジャリジャリと鳴らしながら、歩いてくる。
周りや空を眺めながら、徐々に近づき、俺の目の前まで来て、ジャリッとスニーカーを鳴らして足を止めた。
そして社の階段に、カビンを抱えて腰掛けている俺を、見下ろす。
ちょっと待って。わりと近い。
え? 誰?
生きてる人間ぽくて、顔が可愛かったから、完全に警戒を解いてたけど、え?
まさか?
まさか・・・えーと、なんですかね?
メリーさん関係じゃ・・・ないよね?
落ち着いていた鼓動が、また早鳴りしだす。
その子は少し屈んで、顔を近づけると、俺をまじまじと見て、
「・・・おや? ニーニくん、・・・じゃないですか」と言った。
その子の、口に咥えた棒が、カロッと鳴った。タバコじゃなくて飴だった。
その2に続く




