第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その3
◇ ◆ ◇
な に そ れ !
なにその態度っ!?
それって・・・。
古今東西、東奔西走、幾百星霜、諸所様々、悲喜こもごものビッグデータを詳細微細に分析解析してみたところ、どう考えても!
ミ ー に ぞ っ こ ん ラ ビ ン ニ ュ ー ・ ・ ・ 。
ってこと以外考えられなくない?
それ以外の結果って導き出せる?
出せないよ!
え?出せた?
じゃあそのマシン、ウィルスチェックした方がいいよ?
きっと真っ赤っ赤だよ。間違いない。
海外エロサイトも大概にしなよ?
っていやいや。そんなバカな。ハハハh。
ナイナイ。
いきなりこんな展開おかしいもん。
フラグとか全然、アレじゃん。
立てた覚え無いじゃん?
過程無視じゃん。
いきなり告白シーンて!
おーい、バグってますよーっ?
デバッグ班、何してんの!
だいたいこの子、瑠璃と同い年ですよ。
まだまだ子供ですやん。愛だの恋だの早すぎですやん。
なんなら青少年保護条例的にも犯ざi・・・
バ ッ ト 、 ウ ェ イ ト ! でも、ちょっと待って!
中学生はさ、中ガキ生だから完全にガキだけど、『JC』ッて書いたら・・・どう?
え?ちがうよ。ジャ◯プコミックスじゃねぇよバカ。
女子中学生 = JC。
ソレはJC、JK、JDに、進化し、そして・・・いずれは
HZ(人妻)に メ ガ 進 化 する!
イケるっしょ!
未来を見据えれば余裕っしょ。
これはもう、ウオオォォォォオオォォ!ナギちゃn
ハイストップ!
ウェイト、ウェイト!
ブレイク、ブレイク!
先走るな。俺!
今ちょっと、「ナギちゃん、俺の人生のサブヒロインだーっ」宣言、出そうになったけども待つんだ、俺!
状況考えろ、な?
俺のリビドーに支配されている下半身的な俺自身よ。
ワタクシ、ただいま、メリーさんから逃げてる最中。
昨日から日常を逸脱して、ワケの分からないルートに迷い込んでいる最中。
だから、これ、多分、なんかの間違いだから!
ドッキリだから!
踊らされるな。
踊るな、俺よ!
「ナギちゃん!」
力強く言う。
呼び捨てにはしないぞ?という意思を込めて。
「んー・・・。なんですぅ?」
うわ、ちょっと、上目遣いとか、やめて~。
距離近いからぁ~。
息かかるからぁ・・・。
「ば、が、ガガガガガッコーは? どどうしたんだい?
あ、じゃなくて、でもないか?
いや、なんで金髪とか?
タタタタトゥーとか急に、ねぇ?
アレじゃない?
怒られない? 先生とかお母さんとか、ナギちゃんのおばさんとかに?
あれ? ん?」
も う ね 。 何 語 ?
ナギちゃんは当然きょとんとしている。
そして、一瞬、悲しそうな顔をして、ちょっと考えこむような感じで金髪の前髪をいじる。
んん・・・と小さく唸って、タトゥーの入った手の甲をじっと見つめた。
ほんとに気になる。
なんでナギちゃんみたいな子がそんな感じになっちゃったわけ?
金髪もタトゥーも似合ってなくはないけどさ、でもやっぱ良くないよ。
ナギちゃんは、「何から話そうかな・・・」と頭を掻いて、
「えー・・・、ルゥとですね・・・」
ルゥとは瑠璃のことだ。
瑠璃が、この金髪やタトゥーと関係があるのだろうか?
あの、バカ真面目一直線の、歩く風紀委員会(?)である瑠璃と、金髪、ピアス、タトゥーなどのワードが全然繋がらないんだが・・・。
「あたし、ルゥと、ユニット組んでアイドルデビューするでしょう?
それで、売れるためには、真面目キャラと不良キャラで対比があったほうが良いってみんな言うし・・・私もそうかなって・・・それで・・・」
「 ハ イ ィ ↑ ? 」
え?
なに話してんの?
何の話してんのこの子。
お兄さんはポカーンとしちゃうよ?
相棒の右京さんみたいな語尾の上がった「ハイィ↑?」が出ちゃったよ。
ナギちゃんはこっちを向き直り、首を少し傾けて、
「あれ? えと・・・ニーニくんもしかして、何も・・・聞いて、ないですか?」
聞いてないですよ!
俺は言葉も出ずに、コクコクと頷く。
「え? ほんとに、なんにも?
確かにあんまり人に話すなとは言われてたけど。
もう、IVもスチール撮影も終わって・・・・。
デビューイベント・・・来月なのに?」
「 ナ ニ ソ レ ! 」
すぐじゃん!
ウソまじ?
ちょっと待ってよ!
ホントなんにも聞いてないし、そんな素振りも全然なかったぞ!
瑠璃ィ! 父母よ!
「ネットの一部だと、もう、結構、話題になってますよ?
『ルーナギ』めっちゃカワイイって。
1000年に一度の天使だって」
「 ウ ッ ソ ! 」
俺、結構いろいろネット巡回してんのに全然知らねぇ!
ルーナギ知らねぇ!
まぁ、アイドル系のニュースは疎いけど。
新情報がバンバン入って脳の処理が追いつかずに混乱している俺を見て、ナギちゃんはちょっと半眼気味な感じにニヤッとした。
そして口の横に手をかざし、俺に耳打ち。
「うふふ・・・ルーナギのデビューイベント、水着、デスヨぉ?」
「ハァアアァァァァァアアアアアァァァアッ!?!?!?」
脳内に、恥ずかしそうにモジモジしている白ワンピースの瑠璃と、明るい笑顔で手を振る黒ビキニのナギちゃんがステージでスポットライトを浴び、観客の喝采を受けているところがポワンポワンと想像された。
ステージがなぜかCGっぽいのは、参考イメージが某アイドルプロデュースゲームだからだろう。
イヤイヤ!ちょっとまて!
お兄さんは許しませんよ!
そんな、衆人環視のもとに柔肌を晒すなんて!
ハレンチな!
俺は脳内に浮かんだ画像を手でパパパッと払いのけた。
なんつーか、俺だけが見るならいいが、他の奴には見せたくない、二人とも。
・・・いや、違うな。
そういう下世話な、感じじゃなくて・・・なんか・・・。
なんか、いや。
ただ、イヤ。
でも、でもさ。
どうなの?
俺が反対したところでどうにかなるのか?
いまさら。
もう、プロデューサーやら、マネージャーやら事務所とかテレビ局とかよく知らないけどいろいろ動いていて、一介の高校生が喚いたところでどうにもならない巨額の金が掛かっているんじゃないだろうか。
秘密にされていたこともそうなんだけど、妹達が晒し者になるのを大人に向かって意見することすらできない自分の無力さがすごく哀しい。
たった一言、「イヤだ!」とすら言えない。
真面目だった愛娘が、いきなりDQNをうちに連れてきて「チョリーッス!ウチら結婚しまーす!」って言われた時の父親の気持ちだよ。知らんけど。
「ニーニくん・・・なんだか、険しい顔してますよ?」
哀しい表情を押し隠そうとしていたら眉間にググイとシワが寄っていたらしい。
「ニーニくん、もしかして・・・私達がデビューするの、イヤです?」
「 嫌 だ ! 」
ここばかりは、躊躇せず、噛まず、即答。力強く。
「ほんっとに、嫌だ。 嫌だね!」
もう一度言った。大事なことなので。
ナギちゃんは、ニンマリとしてその口元をグーで隠した。
ウッシッシみたいなポーズ。
なんだろう。嬉しそうだな。
「ニーニくん!」
「お、おう?」
「デビュー・・・やめましょうか?」
「えっ?まじで?」
そんなこと、できんの?
芸能界ってこういう時、怖いスーツの人たちが来て違約金払え、断るんならAVだ。とかならないの? ダイジョブなん?
どこかのエライさんが億単位で損失出したりするんじゃないの?
「でも、勝手にそんなこと・・・。
いろいろ、・・・め、迷惑かかったりするんじゃないのか?
ナギちゃんの一存でそういう・・・」
「スキャンダルです!」
「んん? ス、スキャンダル?」
ナギちゃん、顔の前で小さくガッツポーズして力強く言った。
「醜聞です!」
「しゅ、秋分?」
あれ?なんか違う気が・・・。
「だから!
恋愛禁止の清純派アイドルがデビュー前に年上の悪い男にたぶらかされて、そこを激写です!」
「げ、ゲキシャ?」
「フォーカスです!」
「ふぉーかす・・・」
「フライデーです!」
「フライ?(エビフライ?)」
オウム返しの俺の手を食卓塩ごと両手でギュッと握るナギちゃん。
あ、手、柔らかい。
「ニーニくんとルゥは、血が繋がってないとはいえ世間的には兄妹なわけですから、清純なアイドル候補生を淫らな道へと誘う悪いニーニくんの相手役は消去法的に十四歳のあたししか残ってないわけですけど、それで問題ないですか?
問題ないなら今からホテルに行って三時間コースでタ~ップリとご休憩してから、出てくるところをパパラッチさんに撮られましょう。OK?」
んん?
えっ?
あの、ちょっと!
ちょっと待って?
いろいろ待って?
聞き捨てならない情報がなんだか、 複 数 あ り ま ぁ す !
あるんだけども!
「三時間コースでタ~ップリとご休憩」の部分を脳内で映像化してみたところ、その刺激が強烈過ぎて聞き捨てならないなにかが処理できずにフリーズしそう!
えと?
俺と瑠璃が? なに?
じゃなくて?
キョウダイ?
キュウケイ?
ゴキュウケイ?
おわああああ・・・。
いかん、戻ってこい俺!
それ以上は帰れなくなるぞ!
「んだっ!」
ださい叫び声。
ナギちゃんビクッとした。
しかしそのおかげで戻ってきたぜ。
危なかった。
妄想の最果てに絡め取られ、精神がシックスセンスの奥底へ封印されるところだった!
「ニーニくん・・・。鼻血出そうな顔してます」
ど ん な 顔 だ よ っ !
その4につづく




