特訓の成果と、父親の壁
【活動報告】 投稿の長さと今後のスケジュールについて
読者の皆様、こんにちは!
これまでの話を読み返したところ、全体的に少しボリュームが足りていなかったことに気づきました。いつも楽しみにしてくださっている皆様、申し訳ありませんでした。
その分、今後はもっと読みごたえのある内容をお届けしたいと思い、しっかり執筆を重ねてストックをためました!
そこで、これまでの遅れのお詫びとして、本日(金曜日)は特別に 3つの時間帯(8:00、12:00、19:00頃) に分けて合計3話公開いたします!
さらに、この特別なボリュームとペースでの更新は金・土・日の3日間続きます。そして、月曜日からは毎日12:00頃の通常スケジュールに戻ります。
これからも皆様に楽しんでいただけるよう全力で書いていきますので、引き続き温かい応援をよろしくお願いいたします。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
――あと84日……。
小屋の外では穏やかな風が木の葉を揺らし、午後の陽光が庭を照らし出していた。
「和馬、目を閉じて」
母さんが静かに言った。その落ち着いた声に導かれるように、私はしっかりと地面を踏みしめる。
「体の中に何か感じる?」
「うーん……分からない」
「もっと集中してごらん」
私は全神経を研ぎ澄ませた。
「あ……ああ……なんとなくだけど、分かる気がする……」
「そう。その魔力を、今度は体の隅々まで流してみるの」
「うまくできないよ……」
「大丈夫。焦らなくていいから」
私はさらに強く目を閉じた。
魔力は感じられる。
だが、波のように動かせない。
波……波か。
だったら、血管の中を流れる血に乗せて運べばいいんじゃないか?
そう考えた私は、血流に合わせるように魔力を巡らせてみた。
その瞬間だった。
手足の先が、微かに光を帯び始めた。
「母さん……! できたかもしれない!」
母さんの目が大きく見開かれる。
「えっ……?」
彼女は私の手足と顔を何度も見比べた。
「信じられない……」
思わず漏れたその呟きを、私は聞き逃さなかった。
「普通なら基礎だけでも何週間もかかるのに……」
母さんはまだ困惑したままだった。
――あと75日……。
数秒後には轟音が響くであろう勢いで、部屋の扉が壁に叩きつけられた。
「起きろ、この穀潰しが!」
ロベルトが怒鳴った。
その巨体だけで入口が塞がっている。
「うわあああっ!? ノックくらいしろよ!」
私は毛布を引き上げながら抗議した。
「何言ってやがる。もう昼過ぎだぞ」
ロベルトは乱暴に窓を開け放つ。
眩しい光が部屋になだれ込んできた。
「なんでそんなに眠そうなんだ」
「アンタのせいだよ……夜中ずっとうるさかったんだから……」
私は枕に顔を埋めたままぼやく。
ロベルトは顎を撫でながらニヤリと笑った。
「そうだったなあ。昨日は絶好調だったからな。ズドンとやって、ドカンと――」
バギャアアアン!
「息子の前で何を言ってるのよ!」
フライパンを握った母さんが廊下から飛び込んできた。
「痛っ!? マリア!?」
「何回言わせる気なの!?」
「冗談だって!」
「冗談に聞こえないから問題なのよ!」
母さんはフライパンを下ろすと、すぐに私へ向き直った。
途端に表情が柔らかくなる。
「おはよう、和馬。よく眠れた?」
「あぁ……うん」
「ご飯できてるから、ちゃんと降りてきなさいね」
それからロベルトを睨んだ。
「あなたも変なこと吹き込まないの」
「へいへい……」
ロベルトは肩を竦めた。
母さんが階段を降りていく。
その背中が見えなくなった瞬間、父親は怪しい笑みを浮かべながらこちらへ近づいてきた。
「それで息子よ」
「嫌な予感しかしないな」
「滝に行く日は決まったか?」
私はベッドの上で身を起こした。
「明日にしようと思ってる」
「おおっ!」
ロベルトの顔がパッと明るくなる。
「さすが俺の息子だ!」
胸をドンと叩いた。
「帰ってきたばかりだってのに、もう滝へ連れて行ってくれるとは!」
「いや、そういう意味じゃなくてさ……」
「まあ理由はどうでもいい!」
ロベルトは豪快に笑う。
「あそこは特別だからな。お前の母さんと出会った場所だし」
それから意味深な顔で続けた。
「最近じゃ、女神みたいな美女が大勢来るって噂も聞くしな」
目が爛々と輝いている。
口元にはうっすらとヨダレまで浮かんでいた。
――本当に救いようのないスケベ親父だな……。
私は呆れて目を逸らした。
「まあいい!」
ロベルトはパンと手を叩いた。
「飯を食ったら庭に来い」
「庭?」
「特訓の成果を見せてもらう」
彼はそう言い残し、鼻歌交じりに部屋を出ていった。
私は天井を見上げながら深いため息を吐く。
――どうせ今日も気絶させる気なんだろうな……。
――さあ息子よ。
庭に出るなりロベルトは笑った。
――どれだけ強くなったか見せてみろ。
私たちは木剣を構えた。
「今度こそ勝つ」
「できるものならな」
私は全力で駆け出した。
ロベルトが剣を突き出す。
それを弾いた瞬間、詠唱を放った。
「黄昏の霧よ、我が敵の目を覆え!」
白い霧が広がる。
「なにっ!? 魔法だと!?」
私は一気に踏み込んだ。
膝裏へ蹴りを叩き込む。
ロベルトの体勢が崩れた。
今だ!
木剣を振り下ろす。
だが――
「甘い」
ロベルトは左手で木剣を掴んだ。
「なっ!?」
そのまま私は木へ投げ飛ばされる。
背中に激痛が走った。
――見えてないはずだろ!?
私は慌てて顔を上げた。
ロベルトは本当に何も見えていない。
頭を振り回しながら周囲を探っている。
効いている。
あと少しだったのに。
その瞬間。
父親の腕が稲妻のように伸びた。
首を掴まれる。
体が宙に浮いた。
――どうやって!?
呼吸が詰まる。
ロベルトは楽しそうに笑った。
「覚えておけ、息子よ」
声がやけに嬉しそうだった。
「人間はな。目が使えなくなると、他の感覚が鋭くなるんだ」
そのまま首を締め上げる。
――待て待て待て!
ただの稽古だろ!?
このクソ親父、本気で落とす気だ!
私は必死に木剣で腕を叩いた。
パン。
パン。
パン。
「手を抜くな」
ああ。
理解した。
こいつ、本気だ。
本気で私を気絶させるつもりだ。
――あと74日……。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
ついにカズマが魔法を覚えたものの、オヤジの壁は相変わらず高くて厚かったですね……(ガチで気絶させに来る父親ってどうなの!?)。
残り日数も着実に減っていく中、カズマの運命は……!? 次回もお楽しみに!引き続き応援よろしくお願いします!




