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この結婚は間違いじゃない〜告白相手を間違えた令嬢は、溺愛されていることに気づかない〜  作者: 涙乃


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2/10

リディアside②

フレディの手元に置かれた新聞の見出しが、目に飛び込んでくる。


7年前、遠征に行って行方不明となっていた隊員が発見保護されたと。


ずらりと並ぶ名前の中に、私の元夫であるアーサーの名前もある。


━━生きていたのだ。


あれは7年前、隣国との諍いが絶えなかった頃。アーサーも国境付近の警備強化の為、駆り出されたのだ。緊張状態が続いて、隣国に捕虜として捕えられたり、殺された者もいる。1年後、和平条約が無事に結ばれて、徐々に兵士達も戻ってきた。


が、戻ってこない者もいた。アーサーもそのうちの一人。捕虜として連れて行かれたのかも不明。遺体を見た者もいなかったので、人目につかない場所で息絶えたのかもしれなかった。


2年、3年、4年と何の音沙汰もなく月日が流れた。この国では、配偶者が5年行方不明の場合は、離縁が認められる。



そんな5年目のある日、フレディから結婚の申し出を受けた。


「リディアが、いつまでもアーサーの帰りを待てるように結婚してほしい」と。


いつまでも、行方しれずの夫の帰りを待つかわいそうな妻。


実は浮気され夫に捨てられた妻、


妻が怖くて逃げたした夫、など、


世間では色々と噂されていた。


そんな世間の目から守るように、フレディは契約結婚の提案をしてきた。


「絶対に、あなたには触れません。白い結婚を貫きますから。

リディアとアーサーは、私の大切な友人だから」と。


リディアとフレディとアーサーは、学園の同級生だった。



アーサーは騎士科、フレディとリディアは文官科だった。そのためリディアは、図書室でフレディと一緒になることが多かった。


リディアには、お気に入りの席があった。

窓際で陽当たりもよく、入口からも遠いので他の生徒もあまりこない席だった。

落ち着いて調べ物もできるので、いつもその席に座っていた。


そんなある時、いつものようにお気に入りの席に向かうと、そこにはフレディが座っていた。



仕方なくリディアは別の席を探そうと立ち去りかけた時に、「いつもここに座っている方ですよね? 隣に移動しますのでどうぞ」と、声をかけられたのだ。



人見知りで、一人でいることが多かったリディアにとって、声をかけられたことが何よりも嬉しかった。


自分のことを気にかけてくれる人がいる。


こんなにも至近距離で男性と話したことのないリディアは、恥ずかしくてはにかむように微笑むことしかできなかった。




それから自己紹介して、少しづつ話すようになるうちに、フレディの友人のアーサーとも話すようになった。



それからは、学園では3人でいることが多くなった。


アーサーは、図書室へ来ることはなかった。

本の匂いが苦手だからと。



そうして、忘れもしない運命の卒業式の日を迎えた。




勤め先もそれぞれ決まっていて、晴れやかな気分だった。



フレディ、私ね、あの時、ずっと胸に秘めていた想いを、あなたに伝えようと決心していたのよ。


あなたなら、図書室へ立ち寄ると思っていたから。


私のお気に入りの席の隣の席が、フレディの定位置だったものね。



式を終えて、あちこちで別れの挨拶をしている生徒達の横を通り過ぎて、私は急いで図書室へ向かった。


いつもあなたが座っている場所へ、後ろからゆっくりと近づく。


緊張して、正面から向き合うのが怖かったから。




「好きです!」と、顔中真っ赤にしながら勇気を出して告白をした。


婚姻届を手に持ち、それを突き出すような姿勢で。



当時、学生の間でひそかに流行っていたのだ。



好きな人への告白する時に、自分の名前を記入した婚姻届けを渡すことが。


それだけ真剣な想いが伝わる、ということで。


受け取った側も署名をして、2人のどちらかが保管するのだ。いつかこの婚姻届を提出する日を夢見て。


今、振り返ると、考えの足りない危険な行為だったと思う。


私は、身をもって痛感することになる。



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