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刀── 其ノ拾捌 「黄金なる遺産」


みんなは、目を覚ました瞬間、至近距離に動物の頭蓋骨がある状況になったことはあるだろうか。


まぁないだろうな。

普通の人生を生きていれば、こんな素っ頓狂な展開が訪れることはないだろうし。


じゃあ質問を変えよう、目を覚まし、寝惚眼を擦っている時に、目の前に鹿が狼かも分からない動物の頭蓋骨あった時、人はどんな声を出すだろうか?


正解はこうだ。


「あぴゃッ!?」


あぴゃッ!?──である。

正解した人には私からヴェルタースオリジナルをプレゼントしよう。

おじいさんがくれた初めてのキャンディーだぞ。


「人の顔を見て、あぴゃとはなんだ、あぴゃとは」


「す、すみません剣さん......。いきなりでびっくりしちゃって」


目の前に居たのは、剣さん。

動物のといえど骸骨だぞ、骸骨。

寝起きですぐにこんなのが来るなんて、ブラクラだ。


「はぁ......傾に怪我なくて本当に良かった......」


剣上体を起こし、長座体の形となった私に剣さんはいきなり抱きついてきた。

まだ今の状況がどうなってるのか飲み込めていないのに......!


「え、ちょっと......剣さん!? いきなり、それは」


「ほんっとうに良かった。体に目立った傷がなくて」


目立った傷がない......?

いや、私は左指が三本千切れて、お腹が触手にかっ捌かれたはず。

目立った傷というより、致命傷である。


「あれ......?ない!」


傷がない。

失ったはずの指はしっかりとくっ付いており、お腹にも切り裂かれた傷はないし、服だって切れたあとがない。


「ん? ない? 何がないんだ?」


「あぁ、それは──斬血・剪定刀を黒い塊から抜き取ろうとした時に、ちょっとだけ怪我しちゃって......」


私は剣さんに私の身に起こった一部始終を伝えた。

最後の方、頂上についた辺りの記憶は、私もだいぶあやふやなので、そこら辺は適当に。

──少女説明中──


「どうッッッしてこんな危険な事をッ!! 良かった、本当にお前が無事で」


さらに強く抱き締めて、私のお腹辺りに顔を埋める剣さん。

鼻口部が刺さって、痛い、痛い。


「ちょっと剣さん......。お腹に口が刺さって、痛い......痛いです」


「はっ!! いきなり抱きついたりしてすまん。傾が無事で嬉しくてな」


素に戻ったのか剣さんはそう言って、私と距離を開ける。

無事で嬉しい──だなんて、照れること言いますねぇ剣さんも。


こんなこと人に言われたの初めて、キャー剣さんに惚れちゃいそー。

いや、全然言われたことある。

二回ぐらい言われたことある。

無事で嬉しいって人生で三回も言われるやつなんてどうしようもないやつだな、私。


「次からはこんなことしないでくれよ......。こっちの心臓が持たなくなる」


「すいません。自分勝手に行動しちゃって......」


ほんと、剣さんには迷惑かけたな......。

最初から最後まで完全に付き合わせてしまった。

今度何かお詫びとしてしてあげないとな。


「そういえば、斬血・剪定刀は何処にありますか? 確か私、抜いたはずですけど......それに甘利田さんは!? てか、私、どれぐらい寝てましたか!?」


「おお、質問が多いな。一つづつ答えていってやる。まずは傾の寝ていた時間だが、そんなに長くはない。ここには時計がないから、俺の体感にはなるが、大体二十分ぐらいだ」


そんなに長くないな。

体感的には、二、三時間ぐらいは眠っていた気分だ。


「それで次は甘利田の安否だが、安心してくれ。人間が死んだ時に体から出る死臭がこの美術館からは一切出ていない。多分まだ一階で寝ているだろう」


良かった......。

これがわかっただけで......。


「それで斬血・剪定刀だが、そこに落ちてるじゃないか」


剣さんは私の後ろを指さす。

そこには確かに、斬血・剪定刀が落ちてあった(しかも鞘に入れられている)。

後ろまでは目が回らなかったなぁ。


「斬血・剪定刀、抜き取ったはいいものの、これからどうしたらいいでしょうか。元あった場所に戻すのが正解っぽいけど」


「いや、一度持ち帰る。斬血・剪定刀は甘利田を、人間を呪った立派な呪物だ。斜忍に見てもらって、問題がないようなら甘利田の父親に返そう」


あんな奴だが斜忍もその道のプロだ、と言う剣さん。

確か剣さんの今腰に携えている刀──四凶・饕餮骸刀だって斜忍さんのコレクションらしいからな。


立ち上がり、斬血・剪定刀の元まで行き、斬血・剪定刀を掴んだ瞬間──


「あばばばばばばばば」


「!?!?!?」


え? 剣さん?

剣さんが急に壊れてしまった。

電撃を食らったゲームのキャラみたいに痺れ始めた。

ミナデインでも食らったか?


「ふぅふぅふぅ。なんだ、急に体の中に電撃が駆け巡ったような感覚は。サンダガを食らった気分だ」


そっち(FF派)かぁ〜。

どっちも好きなんだけど、私はドラクエ派なんだよな。

ちなみに私がドラクエで好きなキャラはマリベルとベロニカ。

FFで好きなキャラはリムルとエーコだ。

ただ可愛いから好きなだけで、他に理由はない。本当だからな。


「斬血・剪定刀はまだ危険だ。傾はまだ触らない方がいい。触ると痺れるぞ」


「本当ですか〜? もしかしたら私が触っても大丈夫かもしれません。一回触ってみますね」


触りたい、触ってみたい。

正直、どんな電撃が流れるか楽しみにしている私がいる。

私、Mかもしれない。

こんな馬鹿な行動をする人間から死んでいくんだろうな。


自分が地面タイプである可能性にかけ、床に落ちている斬血・剪定刀の鞘を握る。


「............ん?」


何も来ない。

バチリともビリリとも来ない。

なんだ、電撃の痛みが来なくて嬉しいはずなのに、何処か感じる物足りなさは。

私はもう立派な変態へと成り果てていたのか。


「電撃なんてちっとも来ませんよ? なんというか普通の刀って感じです」


斬血・剪定刀を持ち上げて、腰に携えたり、鞘から刀身を出してポーズを取ってみたりするが、何も来ない。

怖くもないし、痛くもない。

ちなみに取ったポーズはブレイドIIのキービジュアルの真似である。


「なんだと!? そうか、うーん......俺の推測にはなるが、傾は斬血・剪定刀を抜き取ったのだろう。その時に、斬血・剪定刀が傾の事を新たな持ち主だと思い、この持ち主以外が触ると、斬血・剪定刀が嫌がり、攻撃してるんじゃないか?」


「私が斬血・剪定刀の持ち主に?」


剣さんの推測は今まで大体当たっているので、今回もそうなのだろう──が、私が斬血・剪定刀の持ち主に!?

それに私以外が触ったら、斬血・剪定刀は嫌がって攻撃する!?


「な、なら、この刀、元の持ち主である甘利田さんのお父さんに返せなくなるじゃないですか!」


「そうなるな。明日にでも斜忍に詳しく見てもらおう。すまないが、今日はお前が家に持ち帰ってくれ」


「持ち帰るって、立派な泥棒じゃないですか!!」


「仕方の無いことだ......。それに、既にお前はこの美術館への不法侵入の罪も犯しているからな。一度罪を犯したら、もう怖くは無いだろう」


何その理論!

一回犯罪したからって、二回目三回目に罪悪感が無くなることは無いよ! 多分。


クラスメイトの父親の私物を盗むことになってしまった。

それも大企業の社長の。


私と剣さんが話していると、後ろから見知った声が。


「アレぇ〜? 確か、コノ辺りにワタシの服があったはずデスケド......」


振り返ると、寝癖だらけな自身の頭と寝惚眼を擦る甘利田さんが、欠伸をしながら立っていた。

今起きたのか、甘利田さんは総合的にはかなりの時間起きていたからな。


「うッッッッッ!!!」


バタン、と隣から大きな音。

視線を甘利田さんから剣さんに変えると、剣さんは地面に倒れていた。


「剣さん!? 何が」


まだムシャが残っていて剣さんに攻撃を仕掛けたのか?

敵はどこだ?

今、戦えるのは私だけだ。


「ム、ムネガ......」


ムネガ......?


胸が......?


そうか! 忘れていたが、今、甘利田さんは一糸もまとわぬ全裸姿。

それに前はあった呪いも無くなっているため、甘利田さんは本当に全裸姿なのである。


「くそっ、甘利田さんの裸は剣さんには刺激が強すぎたか! 剣さん、返答してください!」


「ムニャムニャ......何が起こってるんデスカ〜?」


仰向けに倒れる剣さんを上から覗き込む甘利田さん。

それはもう全て丸見えだ。


「あふっ......」


「剣さん!? 剣さん、剣さん!? 剣さぁぁぁぁん!!!」





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