刀── 其ノ拾肆 「The Gold Experience」
黄金郷に囚われた甘利田さんを助け出すそれが私たちの目標だ。
「傾は甘利田と対話をして、甘利田の感情を揺さぶらせろ。何を言ってもいい、これは甘利田を助けるためだ。そして飛び出してきた黄金女性像は全て俺が片付けよう。お前は甘利田との対話に集中してくれ」
次はお前の手は煩わせない、と付け加えて言った剣さん。
なんだよ......こんなんかっこいいじゃんかよ......。
「ねぇ、甘利田さーん? さっき私に返事したってことは、私の声が聞こえてるってことだよね? 甘利田さんって箱入り娘で上品な子ってイメージだったけど、ビチグソとかクソビッチとか下品な言葉使うんだね」
「──なんだか上品で完璧なイメージと違ったなぁ」
煽り混じりの挑発。
まずは肩慣らしだ。
なんせ私は、小学五年生の時にネットというものを知ってから、日々レスバに明け暮れていたからな。
煽りの性能だけはいっちょ前に成熟している。
「ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ、ウルサイウルサイッ!! アナタニハ、アナタニハ何モ関係ノナイ話デショウッ!! 口ヲ挟マナイデクダサイ!!」
よしっ、答えてくれた。
まずは第一関門突破。
「関係ないって? 昨日家に行ったり、昨日と今日電話したり、ちょっと関わりあるんだから、少しぐらい教えてくれてもいいんじゃない。どうして甘利田さんがそこまで『完璧』に拘るのか」
「コンナノ簡単ナ話デシテヨッ!皆ガワタシガ完璧デアルコトヲ期待シテイルカラッ! ワタシハ完璧デナイト皆に嫌ワレテシマウカラッ! タダソレダケデスワッ!!」
「嫌われる? 誰に? どうして?」
質問責め。
こうやって、相手の本心を、本音を吐露させていく。
「ソレハ......クラスメイトノ皆様ダッタリ、先生ダッタリ......。周リノ人タチハ皆、アクマデソレゾレガ思イ描ク理想ノワタシガ好キナダケデ、本当ノワタシニナンテ興味アリマセンッ!!」
それぞれが思い描く甘利田さん。
有名であれば、人気であればあるほど、人々の対象に対し、自身の理想を押し付ける。
それが相手の苦になるては思わずにしているところが、たちが悪い。
「アナタニハワカラナイデショウッ!!偽リノ仮面ヲ付ケテ演ジ続ケルワタシノ気持チガ!!」
「うん、私には全くわからないよ。だって私平凡な庶民だし」
偽りの仮面。
甘利田さんには付けたくなくとも、付けなければならない時もあるのだろう。
クラスメイトの印象。
周りの期待。
甘利田家の娘としての格式。
私がザッと考えただけなので、本当はもっと求められるものは多いだろう。
「それで? 偽りの自分を演じ続けるっていうのはどんな気分なの甘利田さんは」
「ソレハモウ、クソッカスノ気分デスッ!!ドンドン自分ガ自分ジャナクナッテイクヨウナ、偽リノワタシヲ演ジルバ演ジルダケ、本当ノワタシガ飲マレテイク。自分ガ死ンデイク!!」
黄金郷の中に囚われている甘利田さんは、拘束された自身の体を身悶えさせる。
「皆様、ワタシノ表面シカ見テイナインデス! 見ヨウトシナインデス! 見タクナインデス、下品デ泣キ虫デ弱イワタシナンテ」
「好意デワタシニ接シテクレル方ガ殆ドデスガ、ソンナ方タチヨリモ目立ツノハワタシニ対シテノ過度ナ期待、羨望、嫉妬、劣情。ソレラヲ知ラナイフリヲ、気ヅイテイナイフリヲシナケレバ──ダッテソンナワタシヲ皆様ガ求メテイルカラ。ソレガ皆様ノ理想ノワタシダカラ」
クラスでの甘利田さん。
その様子は良い意味で言えば上品に振舞っている、悪い意味で言えば猫かぶっているという様子である。
「本当ノ」
「本当ノ......」
「本当ノ──」
「本当ノワタシナンテ、誰モ求メテイナインデスッ!!!!」
その時、黄金郷の上部から、二体の黄金女性像が飛び出してきた。
第二関門、いや目的達成だ......。
黄金女性像を射出される、このミッションはクリアできたが、二体一気にか......。
それだけ甘利田さんの感情が揺らいでいると考えよう。
「一気に来ましたけど、剣さん行けますか......!?」
「任せろ。傾は俺の後ろに下がっていろ」
そう言って剣さんは腰についた鞘から、饕餮刀を取り出す。
二体の黄金女性像はそれぞれ二手に別れ、こちらに向かい走り出してきた。
「まずは......右だ」
右の黄金女性像に狙いをつけた剣さんが取った行動は簡単。
刀を投げた──のだ。
投擲──である。
刀の持ち手をしっかり持ち、愚直にこちらに走ってくる黄金女性像に向かって、フルスイングで刀を投げた。
豪速球並の速さで投げられた刀は、黄金女性像の胸に突き刺さり、黄金女性像は少し後ろに吹き飛んだ後、その体は動かなくなった。
剣さんは黄金女性像の元に駆け寄り、胸を貫いた刀を引き抜く。
大量に血が噴射され、返り血に塗れた剣さんだったが、そんな事気にせずにもう一体の元へと走り出した。
鎧が赤だから、別に血で汚れようと気にならないのだろうか。
それに、ムシャの血はすぐに蒸発するらしいしな。
「次だ」
もう一体の黄金女性像に狙いをつけた剣さん。黄金女性像に近づき、相手が剣さんを認識に、敵対し、攻撃する前に、その首を切り落とした。
斬首された黄金女性像の頭はボールのように吹き飛んで行く。
グロさもあるがそれよりも、こんなにも綺麗に頭が吹き飛ぶのかと驚いてしまう。
頭を無くした黄金女性像は、切断された首から血を噴水のように吹き出しながら、膝から崩れ落ちていった。
圧巻だった。
正に圧巻。
恐ろしく速く、恐ろしく華麗で、恐ろしく残虐だった。
私が倒すのにあれだけの時間と労力を費やした黄金女性像をあんな一瞬で?
それに二体一気に。
一体倒しただけであんなに浮かれ、剣さんに褒めてもらおうとしていた私が馬鹿に見えてきた。
ムシャハンターなら、あれぐらい瞬殺できるようにならないと行けないんだな......。
「ここからはまた傾の仕事だ。残り三体一緒に頑張ろうな」
『一緒に頑張ろう』ってどこまで眩しいんですか、あなたは。
眩しすぎて、目が眩みそうだ。
「ハァ......ハァ......ハァ......アハハ......」
「嫌ワレタクナカッタ、皆ニ好カレル存在デイタカッタ......タダソレダケダッタノニ、イツシカ自分まで蔑ロニシテシマッテ、偽リノ自分ヲ好キナ人デ固メテシマッタセイデ本心ヲ話ス相手スラワタシノ元ニハイナイ......全ク、ワタシハトンダ愚カ者......フールデス......」
黄金女性像と共に、怒りまで吹き飛ばしたのか、甘利田さんはさっきより冷静に、悲観的なっていた。
黄金女性像を射出させる為に、甘利田さんには感情を揺らいでもらわないといけないので、スタートに戻った感じだが。
私は甘利田さんの言った言葉を思い出す。
──本体のワタシなんて誰も求めていないんです──
本当ノワタシ。
本当の私。
本当の甘利田さん。
本当の甘利田・アメリア・メアリー。
人間の本当の姿。本心、本音なんてものは人の心を覗かないと分かるものではない。
私はメンタリストでもないし、読心術が使える訳でもないが、『本当の甘利田さん』についてなんだか分かるような気がする。
かなりイタいことを言うかもしれないが、甘利田さんは私に対して、普段周りに見せる、表向きの甘利田さんとは違う、本心で接していてくれたのではと、私は思う。
今まで一度もまともに会話したことが無いとはいえど、クラスメイト同士なので甘利田さんの立ち振る舞いに関しては目につく。
それに甘利田さんはクラスの中心的人物であるため、更にだ。
さっき、上品や猫かぶりと言ったが、クラス、学校内における甘利田さんのイメージと言えば、清廉潔白、品行方正、文武両道であり、下品な話や人を嘲ることは一切として言わず、下ネタの話になると顔を赤らめる、世間知らずが垣間見える可愛い箱入り娘という印象である。
四月の始業式から今日まで、一ヶ月ほどではあるが、彼女のことを見てきたので、昨日話した際には、かなり驚愕した。
最初の全裸出迎えから、下ネタのオンパレード。顔を赤らめ、恥ずかしがるどころか、己から率先して自身の胸を誇示してきた。
甘利田さんを愛でる生徒は男女問わず学内でも多く、ファンクラブが作られているという噂まであるが、そのファンクラブ会員が見ると、卒倒しそうな話だ。
その甘利田さんの一面を知っているのは、甘利田さんの口ぶりからすれば私だけである。
まぁ多分、私に対して本心を隠さず接したのは、私がクラスでぼっちだから誰にも甘利田さんの本当の姿を吹聴することがないからだと思ったからだろう。
そんな甘利田さんの姿を見て、甘利田さんと話して思ったことは、こっちの方がいいな、と。
好き放題に下品なことを言い、好き放題にボケる甘利田さんが、生き生きしているように見えた。
目が澄んでいるというかなんというか。
極論言えばこっちの方が楽しそうに見えた。
それに私はこっちの甘利田さんの方が好きだ。
天然でふわふわした甘利田さんの方がおあつらえ向きにはいいかもしれないが、私みたいな奴からするとこっちの方が見ていて気分がいいし、話していて気分がいい。
だが、それも私による甘利田さんへの一方的な押しつけだ。
私の一方的な我儘だ。
そんな我儘な私から言えることは一つ。
「甘利田さん、無理してない?」
周りのために偽りの仮面を付け、己が感情に蓋をし、自らを殺す。
それは誰がどう見ても無理している状況である。
「ハ、ハァ!? 無理......? 無理ナンテ、無理ナンテ、無理ナンテワタシガシテイルハズナイデショウッ!!」
最後に残っていた三体の黄金女性像が、一気に射出される。
それと同時に、私に降り掛かってきた巨大な手。
その速度は最初に部屋に入った際にしていた手の振り下ろしとは、一切違う、速い速度だった。
こんなの避けれない。
あ、私終わった──
掌が私に直撃する寸前、剣さんが私を抱き抱え、連れ去ってくれた。
寸前、寸前だった。
あと一秒でも遅れたもんなら、ぐちゅりと音を立て肉塊になっていただろう。
危なぁ。
「ふぅ......危なかった。傾がいつどんな攻撃をされてもいいよう待機していて本当に良かった」
私を見つめ、ほっと息をつく剣さん。
ほんと、すごい人だよな、この人。
素直に感謝をしたいのだが、状況が状況なだけに喉から出てこない。
今の状況、そうお姫様抱っこされているのである。
恥ずかしい。
男の人にお姫様抱っこなんてされたことがない。
いや、明確に言えば、兄にはされたことはあるのだが、あいつを男としてカウントすることはできない。
だから、初めてである。
「あ、あの......剣さん。助けて貰って、非常にありがたいんですけど、その......今の状況、お姫様抱っこじゃ......それが、ちょっと恥ずかしくて」
「ん──ああっ! そうか、わかった......! 今降ろそう......!」
剣さんはアタフタしながら私はゆっくり降ろしてくれた。
甘利田さんを助ける、こんな大事な時になにを恥ずかしがったりしてるんだ私は。
気持ちを入れ替え、落ちてきた黄金女性像に向き直る。
「三体一気にか......。だが、これが最後の三体だ。かかってこい、お前たち。傾には指一本触れさせないぞ」
両手両足の装甲を外し、中にある鋭利な手足を見せる剣さん。
鋭い手足を見ても、三体の黄金女性像たちは怯むことなく一直線に剣さんに向かい、走り出してくる。
三体の黄金女性像、それぞれの三本の拳が剣さんに向かってきた時、剣さんは舞った。
舞った、のだ。
全身を振るい、奴らを切り付ける。
武というより舞、舞踊のようであり、美しさすら感じた。
だが、殺傷性は美しさなど感じないほど恐ろしい。
腕を振る度、脚を振る度、黄金女性像たちの体のパーツが切り落とされる。
腕が、肩が、腰が、足が、首が、頭が。
あっという間に、三体の黄金女性像はバラバラになっていた。
バラバラで粉々。
そして粉のように消えていく。
「これで全部を倒したぞ。後は傾、お前に任せた」
「はい、任せてください」
少し離れた場所にいる剣さんとエアーでグータッチ。
実際に拳を合わせたら、私の拳が真っ赤に染まってしまうからな。
「ワタシガ無理ヲ?「ワタシガ......無理ヲ?「ワタ......シガ無理ヲ、ソンナコトハ──」
動揺。
明らかな動揺である。
これを動揺と呼ばずして、何を動揺と呼ぶのかと思うほど、甘利田さんは動揺している。
「そんなに無理する必要はないんじゃないの?」
「知ッタヨウナ口ヲッ!! アナタニハ分カラヌコテ」
良家のお嬢様。
甘利田さんが背負っているものの重みなど私には一切理解できない。
理解しようとする方が烏滸がましいだろう。
どうにかして、甘利田さんを助ける方法を探さないと。
甘利田さんに近づかなければ。
どうやったら近づける......?
甘利田さんは黄金郷に捕まり、中に囚われているので近づけない......。
その時、私に案が思いつく。
手。
黄金郷の手。
金に煌めく手。
巨大な手。
私を叩き潰そうとした手。
その手は地面にガッツリと埋まっていた。
私を叩こうとした時に、力を入れすぎたのだろう。
その腕は、手首の辺りまで床の中に突き刺さっていた。
おそらく抜けないのだろう。
さっきから必死に腕を引っ張っているが、小刻みに揺れるだけだ。
これを──使う。
この腕の上を歩いていけば、甘利田さんが捕まっている黄金郷の胴体まで行ける。
傾斜もそこまで急ではない、ちょっと傾斜大きめのスロープぐらいだ。
私は黄金郷の腕に乗り上がり、甘利田さんのいる方へと歩き出す。
「そもそも甘利田さんが、そこまでする必要ある?」
「ナ、ナニヲ言ッテイルノデスカ......アナタハ?」
「わざわざ周りの為に、甘利田さんがそこまでする必要」
「デモッ!! ソウシナイトワタシハ、皆様ニ嫌ワレテシマ──」
「そんな周り、気にする必要ある? みんな、本当の甘利田さんじゃなくて偽りの甘利田さんが好きなんだよ。そんな人たちといたら、甘利田さんがすり減るばっかりだよ」
「デモッ、デモッ、デモッ! ソノ人タチガイナクナッタラ、ワタシハ一人ニナッテシマイマス。本当ノワタシヲ好キナ人ナンテ──」
「──私は好きだよ。本当の甘利田さん」
私は一呼吸おいて、そう言った。
そして一歩、また一歩と甘利田さんの方へと、腕を進んでいく。
「ナ......!? ナ、ナ、ナナ、ナニヲ......言ッテ......」
「私は、本心で喋ってる甘利田さんの方が好きだよ。『誰も私の事が好きじゃない』って? 私一人じゃ、駄目かな?」
これが正しい解決方法ではないことはわかっている。
だけれど私には正しい回答を見つけることはできない。
だから、私ができること、言えることはそれだけだ。
「イ、イヤッ......ダメッテコトハナイデスケド......!」
狼狽。
狼狽えている。
甘利田さんの声が、体が震えているのが、目で見て、耳で聞いてわかる。
「デ、デモッ! ドウセ嘘、デスッ! 口ダケナラナントデモ──」
「嘘じゃないよ。昨日と今日、二日間。甘利田さんは本心で私に話しかけてくれてたよね。いつものクラスの様子と全然違ってたし」
「ソレハタダ、アナタニハワザワザキャラヲ演ジル必要ガナイト思ッタダケデ.....。ソレガナンダッテ言ウンデスカッ!!」
「私は甘利田さんと話してて楽しかったよ。甘利田さんは私と話して楽しくなかった?」
「イヤ......ソンナコトハ......」
ついに辿り着いた。
甘利田さんはすぐそこだ。
すぐそこで、両手を頭上で黄金郷の金の触手に縛られ、下半身は埋まっている。
すぐそこだ、すぐそこなのに。
目の前にある膜が邪魔をする。
円筒状である黄金郷の胴は、薄い膜のような物質でできており、その中に甘利田さんは捕らえられている。
その膜は、囚人を捕らえる牢のようにも、貴族の部屋に設えられた御簾のようでもあった。
邪魔だ、こんなもの。
私はこの膜に手を突っ込み、こじ開けようと引き裂く。
気分はさながら、エヴァ初号機だ。
「楽しかったならさぁ......いいじゃん!! もっと見せてよ、本当の甘利田さんを!!」
この膜、結構硬いな......。
力まないとこじ開けれない......!!
「傾サントワタシガ共ニ過ゴシタノハ経ッタ二日ダケ......傾サンニ見セタ姿モホンノ少シ。モット、何日モ接シタラ......モットワタシヲ知ッタラ、キット傾サンモワタシノコトガ、嫌ニナルハズデス......!! 変ナ人ダッテ思ウハズデス!」
「大丈夫......! 思わないからッ! そんな事!」
それに、変な人なんか私の周りにはいっぱいいる。
母に、父に、兄に、妹に、私の家族は変人ばっかりだ。
剣さんも斜忍さんも、篠ちゃんだって変な人だ。
それに──私は立派な変人だ。
胸を張って誇れる程の。
「だからッ!私に見せてよ、甘利田さんの全部ッ!!」
力いっぱいに膜を引っ張ると、耳心地いい音と共に、黄金の膜は引きちぎれていった。
上に付いていた黄金女性像を全部倒したから、黄金郷本体の防御力は下がっているはずなのにな......かなり手間取ってしまった。
力つけないとな、私も。
「ゥゥゥゥ......デモ、デモォ......」
黄金郷の中に入ると、モワッとした噎せ返るような匂いが鼻を刺す。
これはムシャの匂いなのか、それとも甘利田さんの匂いなのかは置いておいて私は真っ先に甘利田さんの方へと駆け寄る。
甘利田さんの、ピンと張られた両腕に鎖のように絡みつく金の触手。
それを必死に、引きちぎる。
「私がなんでも、受け入れてあげるからッ!! 受け止めてあげるからッ!!」
ちぎってもちぎっても、終わりは見えない。
それどころか上から、下から、右から、左から、ベトベトのスライムみたいなゲル状物体が四方八方から溢れ出し、私の体に、甘利田さんの体にまとわりつく。
「傾サンは......傾サンは......下品なワタシを......嫌なワタシを......変なワタシを、受け入れてくれますか......?」
「勿論......!!」
ああ、勿論だ。
──本心で話せる相手がいないなら、私がなってやるさ
金のゲル状液体をまさぐり、甘利田さんの手を探す。
手を掴めれば。
手さえ掴めれば。
手だけでも掴めれば。
「──見つけた!」
ぬちゃつく粘液の中、確かに掴んだこの感触。
人の手だ。甘利田さんの手だ。
それを掴んで、離さない。
離すものか。
「......!!」
グッと引っ張り、こちら側に引く。
甘利田さん......今助けてあげるから、だから──
「だから!! 私と──」
スポリと、甘利田さんが抜けた。
気持ちいい、感覚だった。
固く開かなかった瓶の蓋が取れた時のような、そんな感覚だった。
口から出そうだった言葉──それはまだ言わなくていいや。
いつか言う機会があったなら、甘利田さんに言おう。
抜けた甘利田さんの全身を、体で受け止める。
暖かい、実に暖かい。
甘利田さんは気を失っているのか、ぐったりと私に体を寄せている。
そして、黄金郷の肉体が、泥のように、スライムのように溶けて落ちていく。
私と甘利田さんもその流れに流され、落ちていく。
ユーチューバーとかがしてるスライム風呂もこんな感覚なのだろうか。
あんま心地よくないな。
そして黄金郷は姿を消した。
霧のように、その体を散り散りにしていった。
終わった。
終わったのだ。
黄金郷を倒し、甘利田さんを助けた。
これは、正しい解決方法ではない。
もっと考えればいい方法があったはずだ。
もっと強く、力を持っていればいい方法があったはずだ。
無理を通して道理を蹴っ飛ばす。
そんなやり方だった。
やっぱり、どこまで行っても、私は自分勝手だなぁ。
でも、いいんだ。
そう決めたから。
私は私の為に動くと。
自分の為に相手を救うと。
私は甘利田さんを救ったわけではない。
私は甘利田さんを破滅させただけだ。




