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刀── 其ノ拾参 「閑話、復活」


黄金女性像に勝った。


黄金女性像を狩った。


わたしのこの手で、この腕で、この体で、初めてムシャを狩ったのだ。

狩りなんてモンハンでしかしたこと無かったが、やればできるものなんだな。


そしたら私も、霊媒師を名乗っていいのだろうか。

ツイッター(今はエックスと呼ぶらしいが、私は逆張りなのでツイッターと呼び続けている)の自己紹介欄にでも書いておこう。


「ふぅ......」


敵を打ち倒したことで、安堵感と、そして消失感が襲いかかってきた。

消失感──その訳とは、剣さんのことである。


剣さんは私が黄金女性像に襲われた時に、私の安否に気がそれて、その間に黄金郷エルドラド本体の手によって潰されてしまったのだ。


嗚呼、剣さん。私、やっと剣さんと同じところにまで追い付いたのに......。

この手にある饕餮刀は最後の形見だって言うんですか......。

こんなの......こんな別れになるなんて、酷すぎるよ。

弔いの言葉ぐらいはかけてあげないとな。


「剣さん......聞こえますか? 私から貴方への鎮魂歌レクイエムです」


「勝手に人を殺すなッ!!」


指揮者のポーズを決めていた私に対し、思わぬツッコミが入った。

地面に付いたまま、動かぬ巨大な掌が切り裂かれ、桃太郎やかぐや姫の如く中から剣さんが出てきたのだ。


「うわっ、剣さん生きてたんだ!」


「うわ、とはなんだうわ、とは。それに俺は、陰獣と戦ったりも、緋色の目をした男に殺されたりもしていない。鎮魂歌レクイエムなんていらない」


そう言って霧状に蒸発してしまった手から出てきた剣さんは、手甲を外しており、メタリックに輝く機械の腕が丸見えだった。


「あんな大きな手に潰されたのに、よく生きてましたね。あんまり傷も付いてませんし」


「普通の人間なら、一撃でミンチだが、俺は機械の体だからな。それに鎧だってつけてるし」


落ちていた手甲を拾い上げ、刃物のように鋭い手に装着し直す剣さん。

すっかり忘れてしまっていたが、剣さんの肉体はドイツで拾われた機械の身体だったな。


「掌に押し潰された直後は全くとして身動きが取れなかったが、急に奴の力が弱くなってな──って、そう言えばあの女は!? 傾に襲いかかってた」


「ああ、あれは色々ありましたけどなんとかして倒して。ほら、服に返り血が──」


あれ?

あれだけ大量に浴びたはずの、黄金女性像の返り血は。

私の服を真っ赤に染まっていてもおかしくないはずなのに。


一切として付いていない。

返り血の赤が、ティーシャツにもズボンにも付いていなかった。


「倒したのか? もしかして、その手に持っている俺の刀を使って──傾一人でか?」


「は、はいっ......そうですけど」


「本当かっ!! 凄いな傾!!」


か、顔が近い......。

鹿のような仮面の顔で、グイッと近づいてくる。

こんな、澄んだ目で見ないでください、恥ずかしいです......。


「倒した──はずなんですけど。服に付いた返り血が消えてて」


「それは多分、血が既に蒸発したんだろう。ムシャは死ぬとその体は蒸発し消えるが、それは血液も体液も同じだ。ただ蒸発するまでの時間の差だな」


確かに思え返せば、路地裏で私を襲った暴漢のムシャも、剣さんに腹を搔っ捌かれたり、胴体を真っ二つにされ血が飛び散っていたが、気が付けば消えていたな。


そんなことを思い出しながら、私は手に持つ饕餮刀を剣さんに返す。

剣さんは饕餮刀を腰にある鞘に直し、


「だが、まだ戦いは終わってはいない。黄金郷本体を倒し、甘利田を助けるまではな。傾、俺が手に潰されてから黄金郷本体に何か動きはあったか?」


「いや、黄金女性像と戦ってた時も、黄金郷本体からは何も攻撃はなかったですし、甘利田さんも何も言ってこなかったです」


「そうか、ならばこちらから攻めるしかないようだな」


黄金郷は、一切として動いていない。

力を貯めているだけかもしれないが。


「聞いてくれ、傾。俺は一つ見つけたことがある。俺は黄金郷の掌に潰されている途中、パワーが弱くなったと感じた時があったが、それは多分傾が黄金女性像を倒したからではないかと俺は考える」


黄金郷の筒状の形をした胴体の上部に埋め込まれている黄金女性像。

元々は六体いたが、一体が私が倒したため、残りは五体になっている。

皆それぞれ、芸術的なポーズをとっており、何処か神秘的だ。


もしこの黄金女性像が一体減る事に黄金郷本体の力も下がっていくのなら、早く黄金女性像を全て倒さないとな。


確か、あの時黄金郷から黄金女性像が飛び出てきたのは──


「対話──だな」


「傾が甘利田と対話し、傾が放った『完璧じゃない』という言葉に激昂した際に、黄金女性像は黄金郷から放たれた。中に囚われた甘利田の感情が高ぶった際に黄金女性像が放出されるのだと俺は考える」


甘利田さんは嬉しくなるとおしっこを漏らしてしまうが、黄金郷は感情が高ぶると黄金女性像を漏らしてしまうのか。

自身の弱点を感情任せに放出してしまうなんて、寄生先にダメなところが似てしまったな。


それだとしたら黄金郷の攻略方法がわかった。

今から私は、甘利田さんと対話をし、本心を引き出せばいいのだ。


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