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泡沫戦争メモワール  作者: ハル
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第十二話 留学生

十二話。よろしくおねがいします。


 優希はあの後、竹垣と雄也の、死体第一発見者として、警察署まで同行させられた。

 彼が見たものを正直に伝えた。しかし、署の人々は信じてくれなかった。理由は簡単だ。アールネの狙撃銃は、魔力で弾を形成している。故に、弾が残っていないのだ。

 しかし、話が平行線になったこと、弾はなくても、地面に衝撃痕が有ったことから、優希は開放された。時刻は夜の八時。事情聴取された部屋は殺風景だった。けれど、署の建物自体は新しく、小綺麗ではあった。

 

 優希はパトカーの後部座席に座り、家まで送って貰っていた。運転席と、助手席には、警察官がそれぞれの場所に一人ずつ座っていた。右腰にはホルスターがあり、銃の形をしていた。

 パトカーの内装は思っていたより地味で、大きな機材があるわけでもなく、その車の内装の輪郭に慎まやかに、小さな機材が設置してあるだけだった。

 

 重い沈黙の末、優希の通う中学校の正門前まで、パトカーは辿り着いた。優希は「ここからは歩いて帰れます」と、言い、「ありがとうございました」と礼をして、パトカーを降りた。運転手は「暗いから気を付けて、寄り道しないで帰るんだよ。」と、優希に言った。

 そして、パトカーはUターンをし、市街地の方へと走り去っていった。


『もうちょっと乗せてもらっても良かったんじゃないか?』


と、フェンリルは優希に聞く。


『別に、沈黙にも耐えきれなかったし、それに何より、食材を切らしていたから、買い物にも行く予定だったし。それなら、ここで降ろして貰ったほうが、都合がいい。』


と、優希は答えた。全く、呆れたやつだ。と、フェンリルはため息を零し、


『あまり迂闊に動くなよ』と、言った。



 優希は学校から徒歩五分ほどにある、スーパーマーケットで買い物を終え、満パンに入った買い物袋を両手に提げながら、来た道を戻っていた。

 山を越えた先は、良くも悪くも特徴の挙げ所のない住宅街である。時刻は夜の九時前。街灯も、防犯の為、多く立てられているものの、明かりは強くなく、薄暗く、不気味に感じられた。

 五月末の夜は、昼との温度差が激しく、昼にはお荷物だった制服の上着が重宝した。


 優希の後ろには、浮いた買い物袋が二つ。透過魔術を使ったフェンリルが提げているものである。

 フェンリルは、周りを警戒しているからか、キョロキョロと、落ち着き無く、辺りを見回しながら歩いていた。


『別に、そんなに警戒しなくたって、こんな建物ばっかの場所じゃ、狙撃されないよ。』


と、優希は言った。フェンリルはむっとして、


『ユーキはもう少し身の安全を考えたほうが良い。別に狙撃以外でも、障害物だらけな場所じゃ、奇襲だってありえ...ごわっ!』


フェンリルの体が優希の背にぶつかる。体勢を立て直して、再び優希の方を向くと、優希の前を、一台の車が通り過ぎる。優希は目を細めてフェンリルの方を振り返る。フェンリルはなにか言いたげな顔をして、黙っていた。


 同じ様な道をただただ歩いていた。すれ違う人はそんなに多くなく、手で数えられる程だった。

 すれ違う人と目が合うことはなかった。疲労のせいか、半ば意識が飛んだ状態の優希に「すみません」と声がかかる。澄んだ女性の声だった。


 声の方向、彼から左の方を振り向くと、赤い眼鏡を掛けた金髪の女性が居た。

 ワイシャツに赤いネクタイを締め、その上にベージュのカーディガンを羽織っていた。下はスカートを履いていた。色は暗くて判別できなかった。歳は優希よりも数歳上に見え、身長も優希ほどではないものの、普通の女子よりかは長身だった。また、瞳と肌の色から、この国の人じゃないとわかった。


「すみません。西中学校を探していまして...、どこにあるか教えてくれないでしょうか?」


女性は、見かけに相反するほどの達者な日本語を話した。優希はその見かけによらない日本語、美しい容姿、それと、背中に密着している体温に戸惑う。


『何してるんだフェンリル!』


背中と腕と手を密着させているフェンリルに、優希は言った。


『こうやって優希が四つ買い物袋を持っているようにしていないと、不自然だろ。それとも、四つ持つか?』


フェンリルがきっぱりと答える。優希は少し戸惑いながらも、『わかったよ』と答える。


「あのー、聞いてます?」


女性が、じどろもどろしている優希に怪訝そうな目をして聞く。


「あ、うん!聞いてるよ、西中学校...ですよね?」


我に返り、優希は目を逸らしながら言う。


「はい。ちょっと下調べをしたいので...、良いですか?」


と女性は再び優希に聞いた。



 学校の正門の前を通る道は、道幅の広さとは裏腹に、車通りが少なく、閑散としていた。街灯の間隔も疎らになり、どんどん薄暗くなっていった。

 フェンリルには、隣の建物の裏に沿って、追尾するようにと、言った。フェンリルは「必ず、建物の影に隠れて歩け」と言い。承諾してくれた。

 

「もしかして、その制服......」


金髪の女性は優希の制服の上着を指さして聞いた。


「ええ、その通り。おれは西中学校の三年生です。」


と、優希は答えた。金髪の女性は瞳孔を開いて、


「じゃあ同級生ね!」


と言った。優希は、その容姿で同い年だったことに驚き、


「じゃあ君が留学生?」


「そうよ。わたし、カーリー・スティーヴン。よろしくね。」


無垢な笑顔が、優希を戸惑わさせた。


「ああ、うん。おれは藍原優希。話は聞いてるよ。」


「あぁ!貴方が優希ね!チューターって聞いたわ!」


優希がカーリーの言葉を聞いたとき、生徒会が自身の承諾なしに、話を進めていたことに気が付いた。


 自己紹介が終わった辺りで、二人は校門の目の前に到着した。勿論こんな夜遅くなのだから、正門も施錠されていた。


「ここが西中学校。本当に今から入るの?」


と優希は聞いた。カーリーは愛想笑いを作り、


「ええ。怪しいと思うかもしれないけど...、でも、目的は……」


カーリーは愛想笑いを引っ込め、さっきまでの表情と口調を一気に変え、冷え切った声で、


「貴方なら、わかるでしょ?」


カーリーの背後には、ポンチョのような服を着て、天然パーマのロングヘアーをした、性別は体格的に恐らく男性の人が、冷ややかな目で優希を見ていた。そして、カーリーは


「でも安心して、わたしは勝手に人を殺すような人じゃないから......。」


月明かりに反射した水色の瞳が、彼女の不気味さに拍車を掛けた。


「Lets go. If we are here any more, he's servant doesn't seem to be silent than he.(行こう。これ以上俺らがここに居ると、彼の従者が黙ってないようだ。)」


カーリーの従者らしき男性が、外国語で、カーリーに話しかける。その声は真剣さを帯びていて、低い声だった。


「Yes.I see. Let's go.(ええ。そうみたいね。行きましょ。)」


カーリーが外国語で彼女の従者へと話す。カーリーの声も、真剣さを帯びていた。


「じゃあ、わたしたちはこの辺で失礼するわ。」


元の口調に戻りカーリーは優希に言って。正門の方へと向かった。

 

 正門前の横断歩道を渡り、正門前で、優希に手を振った。その手からは、水色の光が微かに月明かりに反射していた。


『また宝石持ちが増えたな』


フェンリルが仕事が増えたかのように、優希へ呟く。


『また狙撃で死ななきゃ良いんだけど......。』


優希は呟いて、家路を急いだ。






一番苦労したのは英文を起こすところでした。多少の間違いは許してください。

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