第三棚の再確認済みは、椀も寝台灯も朝食席も読んでいません
王宮翻訳室の第三棚は、書類棚の顔をしていた。
けれど扉を開けると、紙の匂いより先に、冷めかけた薬粥の湯気がこぼれた。
棚板の上には、匙受けが一つ、寝台脇灯の替え芯が一本、朝食席札が三枚。どれも小さな白札でまとめられている。
――旧保守権限写しにより再確認済み。
「再確認済みです。第三棚に戻っていますから、生活火は本炉へ回せます」
棚番係は、悪びれずそう言った。悪意より、決まった手順を読んでいるだけの声だった。
サラは白札を破らなかった。破れば、この棚は「確認不能」と書くだけだ。代わりに、匙受けを両手で持ち上げる。
「棚で再確認しても、椀はここにありません」
ネリアが薬粥の椀を抱えて前へ出た。椀の縁には、ミナの薬瓶名札がまだ結ばれている。
「この匙受けはきれいです。でも、ミナさんはまだ瓶名を読み直していません。匙が棚に戻っても、薬は喉へ届いていません」
サラは匙受けの白札に青い札を重ねた。
――薬粥用。患者名読了前。第三棚再確認不可。
次に、寝台脇灯の替え芯を取る。細い芯は乾いていた。使われていないからではない。使われるべき場所から、先に取り上げられただけだ。
リリアが一歩前に出た。
「棚にある芯は読めます。でも、カヤさんが眠れたかは読めません」
彼女は震える指で、旧保守権限写しの余白に書いた。
――本人睡眠待ち灯。読了権限外。
棚番係が眉を寄せる。
「ですが、旧権限の写しには、第三棚での再確認が有効と」
「有効なのは、棚に戻った物の数だけです」
サラは替え芯をロウナへ渡した。ロウナは廊下の先、宿舎窓の灯へ走る。小さな灯が戻ると、カヤの返事札が揺れた。起こされた声ではない。眠ったまま守られている合図だった。
最後に、朝食席札三枚をルドが見つめていた。
「焼いた数なら、三です。でも、座った人はまだ書いていません」
彼は席札の裏へ、一枚ずつ名を書いた。
夜番明けの席。薬粥付き添いの席。火守りの席。
「供出席に戻す前に、食べる朝へ置きます」
サラは三枚を棚ではなく、小さな盆へ並べた。盆は第三棚の中ではなく、扉の外、廊下の低い台に置く。
「第三棚は、生活を再確認する場所ではありません。ここにあるのは、まだ現場へ戻っていない物です」
棚番係の筆が止まった。
白札の下から、もう一枚、薄い紙が滑り落ちる。
――第三棚再確認済み分、晩餐会火守り予備席へ一括移送。責任者、旧保守権限写し。
サラはその紙を拾い、青い保留札で閉じた。
「次は、誰の席を火守り予備席にしたのか、本人の前で読みます」




