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本炉接続は、薬粥と夜番帰宅と朝食三枚のどれを吸うかを書いてからです

 南パン窯の横で、薄焼きの端がまだ少しだけ湯気を持っていた。


 ルドが布に包んだ三枚のうち、一枚にはネリアの小さな札が添えてある。


 ――ミナ薬粥用。薬瓶名を読める温度まで保温。


 その札の上へ、王宮厨房の使者が白い接続札を重ねた。


「生活火返却確認済みです。南パン窯は、王宮厨房本炉へ一時接続できます。晩餐会客全員のためですから」


 窯裏の梃子が、かちり、と鳴った。


 薄焼きの湯気が一瞬細くなり、宿舎窓の寝台脇灯がふっと暗くなる。


 サラは梃子へ手を伸ばさず、まず薄焼きの皿を三つ並べた。


「本炉へつなぐ前に、どの朝を吸うのかを書いてください」


「朝、ですか」


「火は上へ行く前に、下で誰かの手を温めています」


 サラは一枚目の皿へ、ネリアの薬粥札を置いた。


「これはミナさんの薬粥です。薬瓶名が読める温度まで保つ火。返却済みではありません」


 ネリアが皿を両手で押さえた。


「薬棚の冷えた字は、薄焼きを浸す湯気で読めます。いま外されると、ミナさんは瓶の名を読めません」


 サラは二枚目の皿へ、宿舎から届いた小灯を置く。


 灯の脇には、カヤの寝台番表の写しが結ばれていた。


 ――本人睡眠待ち。起床確認前に朝番へ繰り上げないこと。


「これはカヤさんの帰宅後の火です。帰った人を、眠る前に朝番へ戻す火ではありません」


 リリアが接続札の端を読み、唇を結んだ。


「王宮翻訳室確認済み、って書いてあります。でも、わたしはカヤさんの寝台脇灯を読んでいません」


 彼女は細い字で、接続札の横へ書き足した。


 ――未読。本人睡眠待ち灯を本炉確認に含めない。


 三枚目の皿には、ルドが自分の指で焼き目を示した。


「こっちは夜番の戻り口。こっちは薬粥の付き添い。こっちは火守りの朝食です。厨房代表で一括、じゃありません」


 使者は眉を寄せる。


「本炉は王宮全体のために――」


「王宮全体、という言葉は、薬粥一椀を飲む人の名を消してから使うものではありません」


 サラは青い保留札を接続梃子に掛けた。


 ――生活影響明細未添付。本炉一時接続、未発令。


 梃子の音が止まると、薄焼きの湯気が戻った。宿舎窓の小灯も、弱いながらまた橙色に膨らむ。


 ネリアが一枚を薬粥皿へ沈めた。


 ルドは残り二枚の行き先を自分の名で書き、リリアはその横に「読んでからでなければ、わたしの確認済みではありません」と添える。


 小さな火が、誰か一人の手柄ではなく、三つの朝へ戻っていく。


 サラは最後に接続札の裏を見た。


 そこには細い赤字で、もう一行が残っていた。


 ――王宮翻訳室旧保守権限写し。第三棚より再確認済み。


 再確認済みの火が、まだどの朝を通ったのか、誰も書いていなかった。

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