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代理受領第七一号は、誰の朝を通らず完了へ運びましたか

旧工房の仮保守窓口は、まだ看板もない。


 壊れた修理机の上に、冷却皿、寝台灯札、パン窯の木片、リリアの青札が並んでいるだけだ。けれど夜明け前の人たちは、そこを通るときだけ少し息をついた。


 その机へ、白い手袋の使いが一枚の控えを置いた。


「祝灯式代理受領・第七一号。完了扱いです。式典配布に遅れが出ますので、現場確認は後日まとめて」


 ユリウスは、手袋の男の後ろで胸を張った。


「聞いただろう、サラ。代理受領で完了だ。旧工房の札遊びは終わりにしろ」


 サラは控えを受け取らなかった。


「この完了は、誰の朝を通りましたか」


 使いは眉を寄せる。


「朝、とは」


「薬を飲む朝です。寝台灯を自分で消す朝です。パンを喉に通す朝です。読めない写しを受け取らないと、自分の字で書ける朝です」


 最初に手を伸ばしたのはカヤだった。彼女は冷却皿ではなく、小さな予備冷却石を布に包んで持っている。布の端には、ミナ、夜明け二回目、と細い字で結ばれていた。


「完了薬として戻せ、と言われました。でも、患者名のない完了薬は棚へ戻しません。これなら半刻だけ、瓶名が読める温度を残せます」


 カヤは控えの上ではなく、青札の横に冷却石を置いた。


 サラはうなずく。


「第七一号は、ミナさんの朝を通っていません」


 次にトマが、寝台灯札を二枚に分けた。ロウ。マリナ。昨日までは同じ紐で束ねられていた札だ。


「代理受領の控えでは、北門宿舎灯は一括返却済みになっています。けれどロウとマリナは、同じ足で帰るわけではありません。ロウの灯とマリナの灯を、同じ完了にしないでください」


 マリナが、震える指で自分の札を取った。


「私の寝台灯は、私が寝台に着くまで消さないでください。誰かの代理で、暗くされたくありません」


 ユリウスが舌打ちした。


「そんな細かなことを待っていたら、祝灯式の配布が遅れる」


「細かいのではありません」


 ルドが前へ出た。腕に抱えていた皿には、耳を落とした柔らかい朝パンが二つ乗っている。焦げ目はない。歯の弱い患者でも、粥に浸せば喉を通る厚さだった。


「式典用の食券は配り終えた、と聞きました。でも、うちの窯の灯はまだ返っていません。パンを食べる人の口を通らない食券だけで、朝食完了にはしないでください」


 サラは、冷却石、二枚の寝台灯札、二皿の朝パンを一列に並べた。


「薬棚、宿舎、パン窯。第七一号は、どれも通らずに完了へ運ぼうとしています」


 使いが控えを引き寄せようとした瞬間、リリアが紙の端を押さえた。


 以前の彼女なら、リリア名義、と書かれた欄を見ただけで息を詰めていた。今は違う。彼女は余白を探し、自分の字でゆっくり書いた。


『これは、わたしの朝を通っていません。カヤさんの棚も、トマさんの門も、ルドさんの窯も通っていません。読めない完了は、受け取りません。リリア』


 その一文を見て、カヤが小さく笑った。トマは二枚の札をさらに離して置き、ルドは皿を窓口の内側へ押し込んだ。


 サラは控えの上に、青い保留札を重ねる。


「旧工房仮保守窓口の新しい手順を置きます。完了前に、薬棚確認者名、帰着確認者名、焼き上がり確認者名、本人読了または未読確認名を通すこと。どれか一つでも空欄なら、代理受領ではなく生活到着未完了です」


「勝手な手順だ」


 ユリウスの声は、さっきより少し低い。


「正式な受領番号に、そんな下町の名を書き足せると思うのか」


「正式な番号なら、なおさらです。誰の薬、誰の灯、誰のパン、誰の未読を受け取ったのかを書けます」


 サラは控えをめくった。


 裏面に、同じ形式の番号が三つ、薄く写っていた。


 祝灯式代理受領・第七二号。


 祝灯式代理受領・第七三号。


 そして、伯爵家管理印と王宮翻訳室第三棚印のあいだに挟まれた、黒い細字。


『生活影響明細、後日補完』


 サラは、まだ空いている青札を一枚取った。


「次に探すのは、署名者の名前ではありません」


 冷却石の布が、かすかに白く曇る。マリナの寝台灯札が、その横で消えずに残る。柔らかい朝パンの湯気が、旧工房の冷えた机に広がった。


「まだ朝を通っていない完了です」

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