秘密兵器投入
ーー収録当日。
「おっす、ヤッホーブルーイング!みんなトクするミナトク女子、湊来海です」
スタジオには来海一人。冒頭の5分は今週のエピソードトークをふんだんに行う。俺は部屋でラジオ越しに一聴取者として楽しむことにする。
「般若先輩が熱出しちゃって。どうも恋の病みたいなのよね」
すみません。
「それで今日はお休みです。その代わり、ゲストをお呼びしました。その人の出来次第では、般若先輩の首も危うい!? それでは登場してもらいましょう」
かけ声を合図に出囃子が鳴る。しばらくの間。
「……どうも、般若です。来海、今日は激辛ラーメンいってみようか」
「いかないし。ということで今日のゲストは、AI般若先輩です」
「……よろしくな」
「何かというと、いま流行りのチャットGPTに先輩の詳細設定を要求した後、般若先輩がこれまでラジオや動画で発言してきた内容を元に生成AIで台詞を決定しています。声も本人のものを素材に作っているので、ほぼ般若先輩です!」
「……来海、この企画、誰得女子なんだ?」
「うるさいですよ先輩。さて、じゃあ先輩の恋の病を紐解いていきましょうか。オホン。えー、先輩の好きな人は、年下ですか?」
「……年下かなあ」
「しっかりものですか?」
「……しっかりしてるけど、どこかほっとけないんだよなあ」
おいおい、なんとかネイターみたいな使い方すんなよ。俺の好きな人が白日の下に晒されるじゃないか。
「相手は年下……自立してるけどほっとけないような人。般若先輩の周りの人を思い浮かべると必然的に容疑者は浮かび上がりますね」
ちょ、ま、まじかよ。
「そう、年下でなんでも一人でやっちゃう、自立してるけどほっとけないミナトク女子といえば……、私だ!!!」
あ、さいですか。
「いやーんどうしよう、私ったら罪な女だわ。好かれるのは嬉しいけど、結ばれなければ誰も得しないのよね」
辛辣な一言。
「それでも失恋がその人をさらに魅力的にして、その後ほかの誰かと結ばれれば、地球レベルで見てきっと得するから、みんなも勇気をもってアタックしてみてね。なんて……」
その後も来海とAI般若先輩の掛け合いは続き、放送事故なく収録を終えた。




