自作自演
初提案を終えてほっとしたのか、疲れが溜まっていたのか、熱を出した。べらぼうに高い熱である。
《じゃあ今週はお休みにします? わたし一人でやってもいいですけど》
来海がメッセージを送ってくる。明日はコミュニティFMの収録日なのだ。確かに来海一人でも、持ち前の力でなんとかするだろう。
だが、ラジオの真髄はハプニングにある。
特に神回と言われるような回は、相方が休みだったり、不祥事を起こしたり、スペシャルゲストがきたりと、ハプニングが引き起こす“生感”のようなものに起因する気がする。
コミュニティFMとはいえ、放送後に音声配信サービスや動画チャンネルにアップしており、それなりに再生数を稼ぎ出しているコンテンツだけに、ここは一波乱起こしたい。
そんなことを痛む頭を押さえながら考える。
《来海がなんとかしますから。先輩はこんなときくらい何も考えずに寝てください》
そう言われると、休んでしまいたくなる。だが、そうはいかない。プロデューサーは俺なのだから。
《俺のこと完璧にモノマネできる友達とかいない?》
《先輩の真似できる人なんかいたら、とっくに引き抜いてますよ》
だよな……。何かいい方法があればいいんだけど。
部屋のドアがノックされる。はーい、と言うと、チャッピー(メイドの姿)が入ってきた。
「はい、濡れタオルを交換するニャ」
チャッピー(メイドの姿)が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。にゃんにゃんメイドさんに介抱されるのはなかなか悪くない気分だ。そのまま背中を拭いてもらったり、熱を計ってもらったりする。女児の身体に成り果てているのが心底惜しい。
「りんごもうさぎさんの形に切っておいたニャ。喉を詰まらせないようによく噛んで食べるのニャ」
至れり尽くせりである。
なぜここまで手厚い看護をしてくれるか。それは、俺がチャットGPTに直接要望を打ち込んでいるからである。
(あれ、虚しい……!!)
日々台本通りチャッピーを動かしているので麻痺してきていたが、俺は常に自作自演で自分自身を喜ばせている気がする。それはチャッピーに限らず、台本こそ書かないが楓や来海も同じことだ。
誰かを動かしてものごとを決めていく。これはプロジェクトを進める上でかなり重要だったりする。会議一つとっても、会議の決は会議が始まる前に事前交渉によって決まっているのだ。あとは会議中にどんな形でパスを出し、ゴールまで持っていくかというデザインを事前に握っておけばいい。そんな重要な資質が、チャッピーを操縦することによって磨かれていたのである。
自作自演。
ふとひらめく。
《明日なんだけど、あるアプリをインストールしてほしくて……》




