お見舞い
来海が奮闘している裏で、俺は久しぶりの休みを満喫していた。
朝から情報番組を最後まで見てこういう締め方なんだと思ったり、教育テレビを懐かしんでみたり、ワイドショーでやってる内容はどの局も同じだなあと思ったり。これぞ日本の平日である。
熱自体はだいぶ下がったが、味をしめてチャッピー(メイドの姿)の看病は続けてもらっている。不純な動機によって。
この時間はタオルで身体を拭いてくれるはずだ。
(先に上の服を脱いでおいてやろう。相手はAIだしなんとも思わんだろう)
上からボタンに指をかけ、一つ一つ外していく。パジャマのボタンが左右逆になったのもすっかり慣れたなあ。
上半身がむき出しになったところでちょうど部屋のドアをノックする音がする。
「空いてるよー」
…………!!!!
ドアが開き、そこに立っていたのは叶だった。しかと目が合う。
「…… びっくりしたー。入るならノックしてよね」
「いやノックしたし、返事があったから入ったのよ」
叶は俺が服を脱いでいるのを一瞥し、「準備がいいわね」と言ってベッドの横に腰を下ろした。手に持った洗面器を傍に置き、タオルを絞ってから、俺の身体に優しく当てていく。
俺はいろんなものが顕になっていることに耐えかねて少し前屈みになる。不自然な挙動であるが、思春期ならではの、ぐつぐつ煮えた自意識の発露だと思ってもらえたら。もちろん叶からしたら小学生女子の上裸をみたところで、なのだが。
「今日バイトは?」
平静を装って話題を振る。
「今日は休みなのよ」
見舞いに来たらそこで身体拭きをチャッピーに頼まれたのだという。くそうチャッピーめ。AIは余計な気の回し方をする。
「あとこれ」
スクールバッグから取り出したのは、コンビニアイスのフルーツアソート5種だ。熱がある時のアイスの味は格別だから嬉しい。
いつもみたいに「一緒に食べましょ」と言って一本好きなものを選ばせてくれた。いつも残りは一階の冷凍庫に入れて帰ってくれるから、ありがたいんだよなあ。
ベッドの縁に並んで座ってアイスを食べる。俺はりんご、叶はぶどう味。本当はぶどう味が食べたかったけど、叶が好きな味を知っていたから避けた。
じっと見てしまっていたからか「一口欲しいの?」と訊かれる。
どきりとする。
いいの?と言いそうになった瞬間、「あ、でも風邪うつるからダメね」と言ってこの話は無くなった。大変惜しいことをした。
がっかりしていると、「膝枕してあげる」と叶から。促されるがままに横たわり、頭を腿に乗せる。そういえば小さくなったあの日も目覚めた時、叶の膝枕だった。弱っている時、人肌の温もりは何よりの栄養になることを叶は本能的に知っているのだろうか。
「おばあちゃんがね、昔よくこうしてよく頭を撫でてくれたんだ」
少し幼い声で叶は言った。
俺は何も答えない。目の端からつーっと伝うものがあったから。頭を撫でられたからか、叶に同情したからかはわからない。




