コンセプト会議
芽依のお祝い兼プロジェクトチーム決起会はbar C-SHOCKで開催した。19時開店だから、片桐さんが仕込みをしている夕方は、テーブルが空いているのだ。俺も高校生の頃、ここで受験勉強をしたりしていたっけ。ジュースも出してくれるし。
メンバーは冴と芽依の他に、 PuPu組の叶とチャッピー、プロジェクトリーダーの楓、そして企画といえばのミナトク女子を招集した。
(なんか“我の強い女サミット”みたいになってるな……)
みんなで芽依の読書感想文入選を祝って乾杯した。なんだかんだ みんなPuPuの常連なので、互いに見知ったる仲だ。いつも大人びた振る舞いをする芽依が、照れ臭そうに恥じらっているのはかわいい。
女子小学生といえば冴のようなわんぱくガールを想像してしまいがちだが、自己アピールが苦手な芽依のようなタイプって案外多いんだろうな。逆に言えば、芽依に喜んでもらえるようなサービスを作れれば、芯を捉えたものになる気がする。
一通り皆んなで芽依の功績を讃えた後、来海が「メッセージに書いてあった相談したいことってなんですか」と切り込んできた。そこでようやく本題。
「えーっと、今日は芽依のお祝い会のついでにみんなに相談があって。スプーンの店主・楓ちゃんが旗振り役となってこの町で『駄菓子屋フェス』をやろうと思っています。そのためにスペシャリストたちに声をかけました」
プロジェクトリーダー:国立楓
若き駄菓子評論家:井草冴
女子小学生のサイレントマジョリティ:高井芽依
企画の天才:湊来海
縋野グループ総帥:縋野叶
有能にゃんにゃんメイド:縋野チャッピー
個人事業主:片桐勲
「ちょ、俺の肩書きだけ普通すぎない?」
厨房で片桐さんが噴き出した。みんなで笑う。
「取り急ぎ、助成金申請の為に、自治体に提出する企画書を作らないといけなくて、コンセプトからしっかり考えたいんだよね」
うーーん、と腕を組んで各々考えを巡らせている。
「駄菓子食べ放題とかいいんじゃない?」
冴が最初に発案した。瞬発力がある。こういう時、どんな案でもいいから切り拓いてくれる人は貴重だなあ。この後の発言をし易くしてくれる。冴は切り込み隊長に任命しよう。
冴の発言で空気が解れたのか、みんなが口を開きはじめた。
「まず誰に来てもらうかよね。やっぱり地域の子どもたちかしら」
「それじゃ駄菓子屋と変わらないニャ。それに子どもはあんまりお金を持ってないニャ」
「私たちだからこそできる何かだといいんだけど」
「……大人って、お菓子食べるのかな?」
この芽依の何の気ない一言で閃いた。全てが繋がった感触があった。
俺は今、大人から子どもになって、なんだかんだと刺激的な毎日を送っている。学校の勉強も、休み時間も、放課後も。一度は通った道なのに毎日が新鮮だ。
俺と同じ体験は無理でも、駄菓子を食べることを通して、大人が子どもに戻れる機会を提供すれば、新たな体験になるんじゃないか。現代人は“モノ”にではなく”体験”にお金を払うのである。
「大人が子どもに戻れる日っていうのはどうかな」
みんなが賛同の声をあげてくれる。
すると、
「子どもが大人になれてもいいんじゃない?」
と、来海がアイデアを重ねてくる。
「うちに卸してくれてる飲料メーカーが、今度子ども向けに、『お酒みたいなジュース』シリーズの販売を予定しているらしいよ」
さすがは片桐さん。こういうところがスポンサーについてくれれば、副収入も大きい。先方としても珍しいイベントとのコラボで話題性も十分だろう。
こうして、「子どもは大人に、大人は子どもに」がコンセプトに決まった。




