金がないなら出させりゃいい
楓を立てて企画を始動させたのはいいが、大規模イベントを行うにあたってクリアしなければならない問題が大きく二つある。
一つは地域の理解と協力。このために楓を担ぎ上げたのだが、きな粉棒売上対決の時のような簡単な話ではない。地域全体が一丸となって盛り上げようとしなければ成功はないだろう。そのためには参加してくれた全員が得するような“ミナトクスキーム”が必要だ。
そして二つ目は資金集めである。玩具開発の資金を集めるために動き出した企画なのに、その企画を動かすにも資金が要るのである。当面は手弁当でもいいが、集客のためには広告宣伝費なども不可欠となる。
「いずみー、お腹痛いのかー?」
扉の向こうから冴が声をかけてくる。
「ううん、大丈夫。いま出るね」
そうだった、ここは学校で、今は“連れション”の最中だった。女の子はなぜか休み時間になるとみんなでトイレに行く。連れションという表現が正しいかどうかはわからないけど。
「今日はPuPuでお祝いだな」
冴が突拍子もなく言う。小学生の会話には脈絡というものがないから困る。理由を訊くと、鼻を膨らませて「芽依が読書感想文のコンクールで入選したんだよ」と言う。なんで冴が自慢げなんだ。
それにしても芽依には文才があるのか。羨ましい。
「賞は図書カード5,000円分もらえるんだって。いいなー。5,000円もあったら何冊買えるかなぁ」
「冴が買うのは漫画でしょ」
「バレたか。読書感想文も漫画で書いたら、やり直しさせられたよ」
「自業自得だよ……」
図書カード5,000円分って羽振りいいよな。……あ、資金を集められないなら、行政に支援を求めればいいのか。町おこしの文脈ならきっと助成が受けられるはずだ。
早速チャッピーを通して問い合わせてみると、うってつけの「町おこし助成金(上限300万円)」が来期分あと一枠残っているらしい。これだ。
(取り急ぎ必要となるのは企画書だな。これは総員戦闘準備だ!)
「よし、今日は決起会だ」
「……何の?」
「泉はいつも突拍子ないよね」
こうして小学生たちに呆れられながら、芽依のお祝い兼プロジェクトチーム決起会の開催を勝手に決定した。




