異星人の宇宙船
「私たちの3人だけ?」
「変異因子の関係で水晶の力を引き出すには私たちの3人以外は無理らしいのです。
あ、この水晶は宇宙船に入るためのカギです」
変異の因子ね。
けど、ほぼ機械人間だったルーソ・ベルシカも使えたけどな。
やはり、何か訳があるような気がする。
「随分と詳しいな。それも≪アラクネ≫が教えてくれたのか?」
「はい。
使い方と一緒に…。
しかし、基礎的な使い方を習得するだけでもかなりの時間が掛かってしまいました。
まさか、一週間も掛かるとはー」
「え? ミルシアさんーいや ミルシアは一週間も≪アラクネ≫の所にいたの?」
「あ…、実はナノマシン治療の期間を含めると一個月くらいですね」
驚いた顔でちらっと俺を見るキリル。
どうやら≪アラクネ≫が隠し持つ能力は色々規格外のようだ。
それなら俺らにももっと長い休暇が欲しかったな。
「すまないが、出発する前にちょっと確認させてくれ。
今回の道案内はミルシアで決まりとして…」
「はい、それは任せてください」
「じゃあ、俺とキリル、いや俺達3人の今回の目標はどうなる?
≪アラクネ≫からは何も聞かされてないんでね」
事前にキリルと考えておいた質問した。
もう、訳もわからず取り合えずやってーーみたいなパシリは御免だからな。
「すみません、宇宙船の中に入ってからゆっくり説明するつもりでしたが、やっぱり
早い方がいいですね」
「秘密ですとか禁則事項という回答ではないので安心したよ」
「≪プロミネンス≫が死んだとしても一応敵の城へ攻め入るわけでしょう。
すこしでも情報が欲しいわ」
「わかりました。説明しましょう。
うん、どこから説明すれば……。
あの、
お二人は反物質反応炉について知っていますか?」
「……、詳しくは知らない」
「名前は聞いたことがあるわ」
実は結構詳しく知っているが今は黙っていよう。
「人類側はまだ完成させてない技術ですね。
実はそれが搭載されているですよ。 あの船に」
「じゃ、目的は? 反応炉の調査とか?」
そんな平和的な仕事ならいいけどな。
ミルシアは残念そうに首を横に振った。
「それならよかったのですが、今回の任務の前に≪アラクネ≫様が長時間拡張で時間の流れを無理やり留めたのは理由があるんです」
そしてポケットから一つの端末を持ち出した。
そこには何かのおエネルギー測定値が表示されていて、その波長は徐々増幅されつつあるのが見えた。
「それは何?」
このエネルギーの変化パーンは
「まさか、これが今の炉の状況なのか?」
「はい、急速に不安定になってます。 ≪アラクネ≫様の話だと最悪爆発の恐れがあると」
うわーーー反物質反応炉なんて、超空間跳躍に必要な莫大なエネルギーを賄う夢の動力源として人類が絶賛開発中の代物だ。
未だに実現には至っていない。
そのデータを少しでも観測、記録して残せば人類の科学は大幅に進歩するだろう。
しかし、どうも今回はそんな余裕などない。
もし、反応炉が爆発すればそれは最低でも太陽の核融合エネルギーの比ではない破壊力を出す。
「じゃ、わたしら3人で力を合わせ、反応炉を止めればいいんですね?」
「はい、これには我らの3人以外にも≪アラクネ≫様や中の全市民の命が掛かっているんです」
うむー話はわかった。
しかし、そんな危険な任務に3人しか人を送らないとかーー大丈夫かな。
「異星人の宇宙船の中についてはある程度はレクチャーされましたので安心してください。
3人で協力し合えば難しくないと思います」
「それなら、ドローンにプログラムして突入させても良くないか?」
「実は≪アラクネ≫様がすでに試されたようなんです」
「で、結果は? ってか聞くまでもないな。 俺らに仕事が回ってきたのだから」
「はい、不思議にも中に変異因子を持たない人が入ったり、ドローンだけを投入すると
いきなり連絡途絶してから誰も戻って来なかったとか……」
「成程ね。 それで、私たち3人のパーティは理想的だな。全員変異の力があるし」
「はい、キリルには治療の能力が、そして、シュンには周囲のシステムを利用する能力があると聞いてます」
「ミルシアはアイテムボックスだったな」
「はい、それに≪アラクネ≫様から頂いたこの水晶があれば簡易の跳躍も可能になりました」
うむ、キリルは治療が出来るから最優先保護対象、
ミルシアは跳躍とアイテムボックスの能力があるので他の人員のサポート
しかし、前衛がないな。
キリルにパワードスーツで盾役をお願いすれば済むが、あまりにも危ないから却下だ。
俺がやるしかないな。
準備して来た物もあるしな。
「宇宙船の船内に入るのは私が跳躍を使います。
しかし、正式なライセンスじゃ無いから多分中に侵入するのがやっとですね。
内部では自由に動けないと思った方がいいでしょう。 そして中ではーー」
「≪オライオン≫教団事件に現れた化け物らが出て来る可能性が高いか…」
「はい、実はそうなんです。 前回はあちらからこっちの宇宙蜘蛛に送り込まれたかと」
「向こうには多数の敵がいるってことですね」
キリルの声には少しだけ不安の色が混じっていた。
「正確な数はわかりません。
もしかすると前回の作戦で消耗したから、もう残ってないかも知れません」
「兎に角、宇宙蜘蛛の安全のためには行くしかないんだな?
キリル、準備はいい?」
「問題ないよ」
3人で頷き合って最終的に確認を取る。
「それでは行きますね」
「はい!」
「おうー!!」
「目標時点設定ーーー超空間跳躍---発動!!!!!」
ミルシアの手の平の上から禍々しい水晶の光があふれ出たかと思ったら
次の瞬間、3人はその場所から姿を消した。
◆◆◆
「キリル、怪我はないか?」
「私は大丈夫、シュンとミルシアは?」
「私も平気です。 でも思ったより疲れますねこれ」
「多分、荷物が多かったのが原因でしょう。
ごめんなさい。
パワードスーツとか色々と大所帯だったから」
「いえいえ、大丈夫です。 荷物は戦いに必要な物でしょう?
私はあまり戦えませんからむしろ心強いですよ」
「時間の猶予がどれくらいなのか分からないし、急いで機関部を目指そうか」
「そうですね、方向は多分ーーー」
その時だった。
「危ない!!!」
ミルシアの頭部をキリルのパワードスーツの腕が庇う。
「パーッカン!!!!!!」
何か金属の重量物が弾かれる音と共に床に何かが落ちた。
原始的な形だがそれは手斧だった。
それも3本も。
この投擲攻撃には見覚えがあった。
「あいつらか」
「ゴブリン!!!」
跳躍して宇宙空間を飛ばして直接船に入ったのはいいとして
索敵する間もなく接敵とか敵さんも気が短い。
さあ、戦闘開始だ。




