決断
◆◆◆
シャワールームの二人
俺とキリル。
最初はお互いに恥ずかしがって少し気まずい雰囲気だったが
キリルと並んで暖かい水を浴びた瞬間、恥ずかしさなど体に注がれるシャワー水と共に綺麗に流された。
強く実感せずにはいられなかった。
全身に広がる心地よい暖かさ。
まだ
生きている。
そして、隣には眩しい裸身がある。
興奮しない方がおかしい
が
気を取り直して
互いの体に傷とか負傷が無いか確認しながらボディーソープで泡たて洗い流す。
ただそれだけの行動だったが、実に素晴らしい時間だった。
やはり恥ずかしいのかよく腕とかで体を隠そうとするキリルだが逆にそれがエロい。
ここまでが現時点で彼女の精一杯のサービスで配慮なのだろう。
助かったとはいえ、また変な頼み事をさせらるし、状況は決して良くない。
こんな状況で私の体に触れるなとか、着替える時とか気を付けてねとか
ガミガミいう女と組まされてたらかなり困り果てる所だった。
しかし、キリルは賢明な女だ。俺にそんなストレスを与えたりしない。
例えその代わり自分が無理してストレスを抱えることになってもだ。
「…………手の傷、かなり治ってるな」
「あ、うん。 一応傷口は完全に塞がってるよ。
凄いでしょう あーーいたっ」
ルーソ・ベルシカにやられた手を上げようとして顔をしかめるキリル。
多分、治ってるのは外側だけで中の筋肉や神経はまだ修復中なのだろう。
よく見ると体のあっちこっちが時々薄っすらと光るのがわかった。
彼女の治療能力は今も働いているらしい。
回復が遅いのは俺の体の再生に力を使い過ぎたからに違いない。
「無理するな。そういえばちゃんとお礼を言ってなかったな。
俺の腕、直してくれてありがとう」
ルーソ・ベルシカに切り飛ばされたはずの腕を出して見せると
キリルは恐る恐るそれに手を伸ばして触ってきた。
「本当だ。ちゃんと治ってるう」
自分の体はまだ治ってないというのに俺の腕がなおったのがもっと嬉しいらしい。
片手が上手く使えない彼女の代わりに丁寧に髪を洗ってやった。
本当に綺麗で長い髪だ。こんな髪型、パワードスーツ着用時に大丈夫なのかな。
恥ずかしさからの抵抗も段々弱まっていき、最後に背中を洗い流す時には大人しくなっていた。
そして攻守交替。
思いっきり仕返しされた
ふん、どんと来い~!
そう思ったのも束の間、
背中に当たるあまりにも素晴らしい感触に、一瞬魂までもぬけかけた。
これは凄いってもんじゃない。
反則だ。
凄すぎる。
到底、人が抗える物ではーーー
◆
シャワールームの後。
俺をキリルはわかれてそれぞれシェルター内部を確認することにした。
俺は主にシステムと兵装関係の品を。
キリルは出来れば食料と補給物資を探してもらうことにした。
シャワールームの中の備品を見て思ったことだがここはかなりの高級シェルターらしい。
中の物品がかなりの高価の物ばかりだ。
中の作りも下手すると高級ホテルのスウィート並みにお洒落なのに
抜け目なく非常物資の品ぞろえも素晴らしい。
ライフサポートバンド、通信機、スーツ、靴、ヘルメットなどなど
で、目標の物はっと
あ、多分この下に通じる通路があってーーこれか?
「カーーシュッツ」
軽快な音と共にシェルターの床にドアが開いた。
目当てのパワードスーツとドローンの格納庫だ。
よし、戦力の補充タイムだ。
◆◆◆
「シュン!!!!!!!」
格納庫でパワードスーツを魔改造していた俺にキリルの呼び声が聞こえた。
かなり慌ててるようだ。
「キリル、どうした!??」
即座に作業を中止して上に戻る。
何かのトラブルか? それとも≪アラクネ≫からの連絡??
キリルは台所らしき場所で何かを手に取ったまま固まっていた。
「あーーあのね。
こんなものがあったけど…………」
恐る恐る手の物を見せる。
「これどう思う? 本物かな」
「これはーーー」
俺は目の前の品に絶句するしかなかった。
目の前のパック。
それには完璧な真空滅菌保存処理が施されていた。
そこに書かれているのは。
【神戸牛A5級 特選ステーキ(地球産)】
普段の我々の食事は殆どが合成肉だ。たまに宇宙の牧場で養殖される家畜の食肉を
食べる機会があるのはあるが…。
ここは宇宙だ。
合成じゃない天然の地球産のお肉など馬鹿みたいに高い。
しかも伝説の日本の神戸牛だと!!!!???? しかもA5?
昔、電子グルメマガジンで見たことがあるが、お値段は天文学的だった。
いや、地球が戦争で疲弊した今、金を積んでも買えない程に希少なものになってしまたのだ。
こんなもの、とても非常シェルターに保管されるものではない。
どっかのお金持ちの隠し宝物? ≪アラクネ≫の悪戯?
結論。
キリルの調理で美味しく頂いた。
もう最高だった。
「凄く美味しかったけど、食べちゃってよかたのかな?」
整備士の俺やパワードスーツ乗りの彼女では絶対味わえない品だった。
お金で換算すると怖いくらいの値段だ。
「ふっー、≪アラクネ≫がここは勝手に使っていいと言ってたし大丈夫だろう。
それにこんな役得でもなきゃやってられないよ。
それより、見せたいものがあるよ」
俺はキリルを格納庫へと誘った。
「最終調整には君に乗ってもらうしか無い」
「??」
「まずは装着してみてくれ」
蟹のようなな大きな腕
頭部のカメラは昆虫のような複眼
分厚い装甲は色鮮やかな赤と黄色の金属艶で光っている
露出された高出力のパワーユニット
それに強化された通信アンテナはこいつがただの量産機ではないことを示している。
「これは! パワードスーツ!
こんなタイプ見たことない。 新型?」
「見たことないのは当然だ。これはキリルのために俺が作ったものだからな」
「え? そんなことまで出来るの?」
まあ、最後は自分自身の体を材料にパワードスーツをつくったし、材料となる素体と時間が
あれば簡単だ。わけはわからないが今の俺の能力では【なんでも】作れる。
元々作ったり壊したりするのが仕事だったし余程の適正がいいのか今となっては戦艦だって作れるかも知れない。
「わあああ!! 体にぴったり合うよ。凄い凄い!! 動作も滑らかで関節の駆動制限もない」
ふん、自信作だからな。
「でも、長時間着るにはちょっとだけ調整してほしいわ。
オートバランサーの感度を少しだけさげてね。それと音声入力を一通り設定してーー
うん、固定武装はこれかな。後で試すとして。
サイズ的には胸のあたりが少しきついかな。
スーツの中の空調を考慮して頭部にも、もう少しだけスペースをーーーー」
やはりパワードスーツのことになるととても饒舌になるな。
新しいパワードスーツが余程嬉しかったのだろう。
よし、言われた通りに調整してやろう。
キリル。
お前は、俺に恩を感じてるし依存してると思ってるかも知れない。
しかし、本当に助かっていて依存しきっているのは俺の方だ。
これから先、どんな事件が俺達を待ち受けているかは分からない。
けど、これだけは言える。
例え相手がどんな奴であろうとも構わない。
俺は決断をくだすだろう。
キリルに害するなら
例え神であろうとも殺して見せると。
そしてキリルには見えなかったが俺の決意に答えるかのように
体から黒い模様が浮き立っていた。




