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逃避行

俺は何かを言おうとして黙ってしまった。


2人とも助かった嬉しさや、キリルをまた危険な目に遭わせた悔しさ、など

色んな感情が浮かんでは頭の中で混ざってゆく。

綺麗に一つだけ持ち出せないのは不安のせいだった。


何を言うのが正解なんだろう?


ありがとうとだけ言うのは軽すぎる。

だけど、それ以上いくら言葉を重ねたって命を懸けた行為の労いとしては不十分だ。

特に言葉は重ねるほど、薄っぺらく聞こえる。


キリルは力の使用の影響か立ち上がることも出来ないまま言った。


「これでやっとすこしは恩を返せたかな?」


優しく微笑むキリル。


ああ、そうだったんだな。 

今の俺と同じ思いをして来たんだな。

言葉では上手く伝え切れない気持ち。


「ーーーでも、私は何度もシュンに助けられたからまだまだだね」


「それをいうなら俺だって同じだ。

それより、立てるか?」


「ゆっくりならいける。力は入らないけどね」

「そうか…」


『お話の途中で申し訳ございませんがちょっとよろしいでしょうか』


≪アラクネ≫の声ではっとなって振り向くと


『そろそろ、時間切れの様で御座います。

ここでも戦闘の影響が大きすぎたので地上フロアの保安維持局と軍が動き始めました。

まもなく、調査隊がここに来るでしょう。

お二人はお逃げください』


「まって! ミルシアさんはどうすろの? 彼女は大丈夫…でしょうか」


そういえばミルシアのことをすっかり忘れていた。


『ご心配なく私が保護致します。 ただ彼女には≪プロミネンス≫から注入されたナノマシンの中和が完全に終わっているかの確認が取れるまでは療養が必要となります』


幸いにも戦闘の影響で負傷したりはしなかったようだ。

しかし、療養ね。


あの強敵≪プロミネンス≫が言っていたことが本当ならこいつ(≪アラクネ≫)こそが本当の化け物だ。



「逃げるのはいいが、どこに行けばいいか分からないぞ。

俺はいいがキリルは負傷している」


俺も負傷が治り何故か服まで再生されたのはいいとして装備はゼロ、服自体も薄いタイツみたいな物でかなり心細い。っていうかこの格好かなり恥ずかしいな。

キリルだって大差はない。元々、薄くてピッタリのインナースーツを着用していたのもあって今の座ってる姿はかなり妖艶である。

さらに

最後のパワードスーツ作戦の影響なのかスーツが所々破けて素肌が露出しているのでかなり際どい。


うん、グラビアアイドル以上の破壊力に正直カメラが欲しいくらいだけど…。


『実は誠に申し訳ございませんがお二人にはもう一仕事頑張って頂きたいのです~』


やはり、こいつ鬼だ。

やっと生き延びた俺達にまた何かを頼むとか人間じゃない。

本当だ。こいつ人じゃないAIだ。


『私だってお二人にすぐ働いて頂くのはかなり心が痛みます。本当に大変でしょうけど、これはこの宇宙蜘蛛の市民らを守るためにも必要なことでございます』


「俺達はあんたの部下になった覚えはないんだ。 従う義務はないと思うがな?」


『あらあら、そうおっしゃらずに。

保安維持局と軍の両方から上手く逃げるのって大変でしょうね。2人はともかく≪オライオン≫教団の避難民らは絶対無理でしょうね。

ああ!! 誰か様が考え無しに崩落事故とが起こしてしまって更に彼らの立場は悪くなってしまいました』


ふん、最初から崩落は俺とキリルの逃避を円滑にするための工作だ。

他の人などどうなってもーーーと思ったがキリルは違うらしい。

かなり顔色が悪くなった。


『よしんば逃げ切れたとして、この後どうします? いく所とかありますでしょうか』


「………………」


確かに痛い所をついて来る。


「じゃ、その仕事を手伝えばシュンと私を匿ってくれるってこと?」


『勿論で御座います。 お二人の他、ミルシア様や≪オライオン≫教団のみなさんもまとめで面倒を見ましょう。

特にシュン様とキリル様は全力をもってサポート致しましょう。

如何でしょうか』


「シュン、どう思う?」


これは飲むしかない雰囲気になって来た。

しかし、だからこそすぐYESと答えてはならない。


「いくつかお願いがある」

『聞きましょう』


「まず、すぐは無理だ。

キリルも俺も休憩が必要だ。

それと、装備が要る。 キリルにはーーー」


要求の品を伝える。


『それくらい容易くご用意できます。以上でよろしいでしょうか?』



「それに、その似合わない馬鹿げた敬語はやめてくれ」


俺たちはお前の本性を知っているし妙に小馬鹿にしてる気がして落ち着かない。



『これは営業用の習慣みたいなものでーー

まあ、わかったわ!

ちょっとだけ待っててね』


即座に砕けた言い方になる≪アラクネ≫


その間に俺はキリルの手の傷を確認することにした。


出血はもうないみたいだがかなりの血が流れたようだ。


「痛みはどうだ?」


聞いてから後悔した。

苦しんでる患者に、どう苦しい?とかおちょくるとしか思えない。


慌てて次の言葉を選ぶ。

「あの、そのーーごめんな、俺がバカやったせいで」


でもキリルはそんなこと気にする胸の狭い女じゃなかった。


「ううん、平気だよ。 今は血も止まってるし、すこしずつだけど治ってるみたい」


「それはー」


『準備出来たよ!!』


まったくこいつは、いちいちタイミングが…。


「じゃ、どこに行けばいいんだ?」


『それは行って見ればわかるさね!!』


次の瞬間、俺とキリルの視界が奪われた

真黒な空間しか見えない。


抗議する間もなく問答無用でどこかに転送させられてしまった。


くそ、こいつ時空間拡張と超時空間跳躍の両方を使えるんだったな。




◆◆◆



視界が回復すると、そこは避難用のシェルターの中だった。


以前の怪物騒動でリチャード管理局長が逃げ込んだ、あの施設に似ていたが中はもうちょっと広く

簡易な住居の施設が整っていた。

俺の能力が勝手にシステムの情報を読み取ったらしく起きてすぐ様々な情報が入ってくる。


ここは事件現場から正反対の区域にある非常脱出用の施設で安全は保障されるらしい。

中の装備と備品は何でも使っていいし、ご丁寧にもここの中は時空間拡張のフィルドを形成してあるとのこと。

つまり、ここで過ごしても外の時間は止まったままだとか。

まるで魔法みたいと思ったがこんかいの処置は即席のもので48時間くらいで通常空間に戻るらしい。

≪アラクネ≫としては奮発して2日の休暇を提供してくれたとわかった。

そして二日後には自力で指定の場所に行き、調査を頼むと。


シェルターのドアを開けるとすぐ通常空間と繋がってしまうため外には出られない。

二日はキリルと二人きり。


うわー、これ本当に何の状況?


一応、彼女はシステムからの情報が伝わってないだろうから説明しないと。


説明を聞き終わったキリルは気のせいかちょっと顔が赤かった。

密室に男と二人きりなのはちょっとあれだったかな。


「そう、二日も」

「そ、そうだ」


黙り込む二人。


こりゃ≪プロミネンス≫と戦う方か楽だった。

あの時はただ必死にぶっ殺せばよかった。

下手なまねをして好みドストライクの女の子に嫌われないか心配する必要なんかはなかった。


「あの、ちょっと言いにくいけど」

「なんだ? なんでも言ってくれ」

キリルから話しかけてくれると助かる。


「あ、あのね。 ふーふく」

「?」


「服を… 脱がしてくれる?」


なんだと?


お読みいただきありがとうございました。


ずっとバトルでしたのでちょっとは馬鹿みたいに平穏なエピソードも追加してみようと思っております。


続きが気になる、こんな展開は納得行かない、これは訂正な

のようなご意見はいつもお待ちしております。


それと

手数をおかけしますが評価していただけると助かります。

何卒宜しくお願い致します。

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