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命より大切な者


「馬鹿な奴だ。折角変異能力に覚醒したのに自分を犠牲に外骨格兵装なんぞになりやがった。

一撃で殺してくれるわ」


放たれた光線は一直線にパワードスーツのに直撃


しなかった。

人間なら目にも見えない速度の攻撃を回避したのだ。


突貫工事で作ったものだが、キリルの体にちゃんとピットしていて

文字通り、俺の全身全霊の一作だ。

【ドラゴン】もどきの体を作る時に使った人工筋肉に

各関節には電磁式摩擦軽減の細工をしてある。

キリルと一身同体になっていて反応速度のタイムラグも殆ど無い。

性能が悪いハズがない。


「まだ、ちょっと慣れてないけどすごいよ、これ」

「おう、回避は任せた」

「わかった!」


キリルが走る。

そう、俺一人では相手にならない。

回避も攻撃も防御もなんでも出来るはずがない。

仮に俺が全部出来たしても

キリルが狙われたら終わりだ。


それで考えたのがパワードスーツだ。

実は彼女にパワードスーツをつくってやろうとは以前から考えていた。

これなら彼女の身を守れるし俺も回避行動が取れる。

しかも俺の予測だと≪プロミネンス≫の攻撃を防ぐには俺のすべての能力を注ぎ込む必要がある。

つまり、俺は防御とサポートに専念。

回避と攻撃はキリルに丸投げだ。


「ちっ、早くも私の攻撃をよけるようになりやがった。

一発は上手くかわせてもこれはどうかな」


(来る! あの追尾式の攻撃だ。これは回避不能だ!)


「キリル!!」

「うおおおおおおおおお!!!!!」


最大スピードを出して突っ走るキリル。


それと同時に≪プロミネンス≫の攻撃も始まった。


無数の光線が飛び舞う。

その光の舞は容赦なくキリルのパワードスーツに何回、いや何十、何百回もヒットした。


ヒットした後にまた方向を変えて再び襲ってくるため凄まじい勢いで攻撃が続く。

船体への被害が広がるとまた≪アラクネ≫の逆鱗に触れるため周囲にな掠るくらいの被害しか出ない。

それでも回数があるため周辺は抉られた天井や床の破片で一杯になってゆく。


その中を突破して出るものがいた。


キリルとパワードスーツ()だ。


高エネルギー光線に体中を打撃された影響で全身が茹でたカニみたいに赤く光っているが

まだ動いている。


信じられない表情の≪プロミネンス≫は即座に叫んだ。


「なんの真似だ≪アラクネ≫、貴様は干渉しないとーーー」


『私はなにもしてないわよ』


「それじゃなんでわたしの攻撃がー」


やっと≪プロミネンス≫の目の前まで来た。

彼は驚いてはいるが危機感はなかった。

防御に絶対の自信があるからだろう。


「今だキリル! やっちゃえーーーーー」


「はい!」



【ぱーーっーーーーちんーー!!】


防壁が粉々に砕け


「な?、くえーーーーーっつ」


≪プロミネンス≫顔にキリルと俺の渾身のパンチが炸裂した。

糸の切れた凧のように飛ばされる姿はまるでアニメのワンシーンだ。


しかし、ただでは起きない彼らしく倒れたまますぐ光線を撃ってきた。

そうこなくちゃね。


回避出来るのは回避して、避けられない攻撃は俺が防御。

そして、走って加速をつけては

全力のキックを見舞いする。


【くちゃーーーっ】


いやな効果音と共に彼の頭は弾けた。

もう立ち上がることはないだろう。


「ああーー、勝った。勝ったよ。

 シュン、 倒したよ!

私たち、これで助かったよね?」


安堵したキリルの声。

よかった彼女を守れた。


ここまでもって



本当に良かった。



◆◆


シュンの作戦が成功した。

あの攻撃はすごく怖かったけどシュンを信じて走ったらなんとかなった。


パワードスーツが解除される。

かなり装甲が薄かったのによくあの猛攻に耐えたね。


うん? ちょっとおかしい。 解除というよりボロボロになって…。

体のあっちこっちからパーツが落ちていく。


まさか……。

全身が自由になって振り替えて見る。

そこには私を抱きかかえていたはずのシュンはいなかった。


代わりに足元にはパワードスーツを構成していたパーツがくたびれた鎧のように転がっている。


まさか、

そんなまさか。


『わたしが手本を見せた通りにシュン様は上手くやってくれました。 

エネルギーのベクトルを変えて逸らす、コツだけ教えたつもりですが、流石ですね。

手本で見せた対消滅のやり方は難し過ぎたかと思って不安だったんですよ』


いつのまにか≪アラクネ≫が近くに来て説明してくれた。


『特に≪プロミネンス≫攻撃をうけ、そのエネルギーをパワードスーツの表面に纏い循環させて蓄積。あ、これがベクトル変換の応用ですね。

パワードスーツの表面が赤くなっていたのはそのせいなんですよ。

そして

攻撃の際にそれを一気に解放して防壁を突破!!!

人間なのに凄い応用力ですね』


「そんなことより、なんで人に戻れないんですか?

シュンはどこに……」


『うん~力の使い過ぎですね。

彼は変異の力でシステム内の情報を操作編集出来るようになった。

さらには物質やエネルギーにも干渉して形を変えたり性質を変えることにも成功した。

ここまではいいんんですよ。

しかし、それを自分の体に試して乱用してしまった』


「え? 乱用……、どういうことなのわかるように説明して」


『いいですか? 物質は元々様々なものに変化する性質があります。

しかし、それにはきちんと抵抗があってエネルギーと時間を掛けないとダメ。

これが鉄則ですが、彼は裏技で無理やりこの抵抗をなくして

物質が元の性質を保つ境界線を崩し物質変換を短時間で何回も使用した。

どうなると思います?』


「まさか」


『そうすると崩れた境界線が戻らなくなり体の形を保てなくなる』


「それはシュンは人に戻らないってこと??」


『残念ながら。


ここまでポテンシャルの高い変異能力者は久しぶりだったので成長が楽しみだったのですがーー』


「噓、うそよ

そんなのーーー」


『多分、貴方とミルシアさんを安全に守るための苦渋の選択だったんでしょう。

そもそも今回の敵はーーーー』


≪アラクネ≫は何かしゃべっているが良く聞こえない。




胸が苦しくて頭がくらくらして立つこともままならない。


そんな


私を助けるために犠牲になったの?


最初見た時は普通だった。

良くも悪くもない。

しかし、妙に責任感のある人だった。

パワードスーツから出た時に私の胸ばかり見ていたのは他の男と一緒だたけど。


でも、見過ぎてバレないように努力はしてくれてったっけ。


後、何度も命を助けて貰った。

シェルターで拘束されそうになった時。

ダグラス議長と戦った時。

ルーソ・ベルシカや

【ドラゴン】

≪プロミネンス≫まで。


そういえば


さっきの作戦で私を後ろから抱きかかえた時は顔が真っ赤になっていた。

多分、私はもっと酷かったと思う。


言いたいことが沢山ある。

恩もまだ返していない。

彼は

私は彼をーーーー


「死なせない!!!!」


『今さら何をしたってーーおお、なるほど』


彼は私を救ってくれた。

なのに私の心に一生癒えない傷を残して去っていくなんて………。


そんなの


そんなの狡い。

許せない。

だから、死なせない。

例え私が死んでも、ちゃんと生き返らせてやる。


「戻って来てシュン!」


私の体の全身から光と共に模様が浮かんだ。

ああ、やっと私の変異の力が分かった気がする。


生き返って(レザレクション)!」


お読みいただきありがとうございました。

お気づきでしょうけどキリルの変異の力は治療と蘇生でした。


残りわずかではありますが最後まで読んでいただけると幸いでございます。


批判、指摘、評価はいつも歓迎しております。

よろしくお願い致します。

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