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誘い


保安維持局の副局長 グリケーランは悩んでいた。


到底人類のものとは思えない巨大宇宙船。


≪オライオン≫教団本部の制圧作戦の前に市民の安全のために通行とマスコミに制限をかけてある。

お陰で巨大宇宙船の登場は管制局と宇宙軍の巡洋艦の兵たち以外には知られていない。


市民からの自由の侵害だと常に批判されるこの制限も軍の制圧作戦の終了と共に解除する計画だった。

しかし、突然の怪物の乱入、区域の大崩壊事件で現場周辺は溢れかえる人々で大混乱状態だ。


それは暴動に近い。


今回、実際の犠牲者数は意外と少なかった。

何故が崩壊現場に作業用のドローンが一杯落ちていたため救助作業はかなり順調だったし、

高性能のパワードスーツを投入したのが功を成して生存者も結構いたのだ。

しかし、問題は現場にいなかった市民の方だった。

崩壊の衝撃は全居住区で感じられるくらいの規模。

この宇宙蜘蛛という建造物は数えきれない程の装甲版で構成されているため

それくらいではビクともしない。


しかし、市民の不安感を刺激するには十分だった。

元々、原因不明のテロ事件に対して捜査成果が余りにも無く、ガス抜きのような形で

無理やり進めたのが今回の制圧作戦。


それが、失敗。

さらに、崩壊事件。

軍での発表は今だ調査中とのこと。


(こんな状況なら俺だって暴動起こしたくなるわ。

しかし、このタイミングで謎の宇宙船とな……

これはひょっとしたら全市民に退避命令を出した方がーー)


「副局長!! 只今、都市の最高責任者のカーネルバイア市長との直通ラインが繋がりました」


「おお!、やっとか。事務室につないでくれ。そして話が終わるまで誰も通すな!!」


「は、はい」


そう、グリケーランはとっくに現場から引き揚げて保安維持局まで戻っていた。

勿論、都市の最高責任者に連絡を取り相談するためだ。

今回の連続事件、選択を誤れば更なる大惨事に繋がるしかないと判断したからである。

カーネルバイア市長はまだ、40代だが類まれ無い統率力と行動力を持つ人物で有名だった。

まず、自分の服装とかを軽くチェックしてからモニターを起動する。


モニターの中のカーネルバイア市長はティーカップを片手に優雅な姿勢でテーブルを前にしている。

すこしも慌てた様子などなく、堂々とした感じだった。


「市長、私は保安維持局の副局長 グリケーランです。

今回の事件について大至急ーー」


「あれは」


カーネルバイアは片手をあげ、グリケーランの言葉をとめた。


「地球側の新型戦艦です。テスト飛行中だったのでなんの問題もありません」


「え? 今なんと………?」


頭に微弱な痛みが走る。


「地球側の新型戦艦?」


「そうそう、そしてテロリストは自爆で全員死亡しました。

軍は本当に勇敢に戦ってくれました。 今後とも都市の守りをよろしくお願いしますよ」


「全員死亡ーーーーーー」


瞳の焦点が合わなくなり、市長の言葉を繰り返しつぶやくグリケーラン。


通信が切られる直前、その瞳が最後に見たのは市長の後ろで微笑んでいる


都市の最高統括AI≪アラクネ≫の姿だった。



◆◆◆


「これでよろしいでしょうか?」


『本当にありがとうございます。

カーネルバイア様のお手を煩わせてしまって本当に申し訳ございません』


「いえいえ、何をおっしゃいますか、≪アラクネ≫様のお役にたってよかったです。

しかし、保安維持局はともかく今回は目撃者が多すぎますが…」


『ええ、今回の件で全市民のメンタルケアを目的とした精神検査(洗脳)を実行する予定です。 

みんなを安心させるためにはそれがいいでしょう』


「なるほど、不安な記憶などない方が幸せですしね」


『はい、私はお客様を出迎えしないといけないので、そろそろ失礼致します。

マスコミの対応はよろしくお願いしますね』


「ご命令とあれば」 


システム検査という名目の拘束から解き放たれた≪アラクネ≫

彼女は既に動き出していた。



◆◆◆


「くそ!!、何故当たらない!!」


俺は≪プロミネンス≫に猛攻をかけていた。

いや攻撃せずにはいられなかったと言った方が正しい。

ルーソ・ベルシカや【ドラゴン】とは圧倒的なまでに違う力の持ち主。

先手を打って少しでもダメージを与えないと勝ち目はない。


強化された体の処理能力の全部、引き出すようにして

ありったけの


トラップ、爆発、熱線、電撃の攻撃を続ける。


雷電(ライデン)!!!!」

「ライトニング!!!!」


しかし、≪プロミネンス≫は平然としている。

攻撃されてはいるが正確には有効打は一つもなかった。

俺がまだ、作れずにいる防御の手口、【シルード】なる透明な膜に遮られて

すこしもダメージを与えられなかった。


「お前はやはり、成長しているな。 

変異の力の本質が見えてないのに応用だけは上手いと来た。

しかし」


手を上げてこちらを指さす。


しまったと思ったがすでに遅い。


「すこし、鬱陶しい」


彼の指から放たれた光線(ビーム)が俺の心臓を貫いた。


「くーーかっつ!??」


まさに光の速さ。

予備動作も技名の叫びもなかった。


しかも


「うむ、さすがにそれだけでは死なないか?」


彼が何か操作したら今度は貫通した光が角度を曲げて再び追撃して来た。


「追尾光線(ビーム)だと!」


自己回復を図っていた心臓を再び抉られる。

それでも止まらず追撃


追撃

追撃

追撃

追撃

追撃


死の光線が光の舞となって俺の体を削っていく。


「パーカンーーー」

「ザーシューーーーっ」

「ドーーーーーゴン」


もはや、回避や防御をするために動かす手足すら残っていない。


痛みよりも悔しさで体中が燃えるようだ。


(ちきしょーーーーーーーーー! 認めたくはないが、まるで刃が立たない。

格が違う。 どんなカラクリなのかも全然わからないし、見えたとしても反撃の隙など……

これで死ぬのか?

せっかく、力の手に入れたのにーーーーーーくそ!!!

さっき、殺しかけたことをキリルに謝ることすら出来ずにーーーー

また、こんな無様に死ぬのか??!!)


その時だった。

攻撃がやんだ。


(ーーーーーなんだ。何故攻撃をやめた? 気まぐれ? それとも)


≪プロミネンス≫の攻撃を中断させ、俺の前に立った人物は

キリル・タシュケントだった。

手には何の武器もない。

完全な丸腰だ。



「なんの真似だ?」

「もう、やめてください」


「何故私が君の話を聞く必要がある?」


「話を聞く気が無かったら私は既に死んでいるでしょう」


「……」


「あんたはいつでも私たちを殺せた。しかし、そうはしなかった。

違いますか?」


「……その通りだ」


「こちらから攻撃したのは謝ります。しかし、あなたの部下の【ドラゴン】からの攻撃で私たちも死にかけていました」

「正確にはその転がっている男の暴走が原因だ。 私が介入していなかったらお前は死んでいた」


「……」


「なんだ? 知らなかったのか?」

「それより、聞かせてくれませんか。 あなたの目的はーーー

いや、違いますね。 何故あなたは私たちを殺さなかったのですか?」


「ふむ、あのひょっとすると女傭兵より使えるかも知れないな。


単刀直入にいう。


お前らには≪アラクネ≫の掌握を手助けして貰いたい」



それはまさかの【誘い】だった。

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