圧倒
【ドラゴン】はすぐさま攻撃を開始した。
今回は最初から全力だ。
高出力のエネルギーが角を通じて一気に放出される。
【アークブレス】と悪名高いその攻撃は当たるものを一瞬に消し炭にしながら暴れ回る。
至る所から破壊音と共に、放電燃焼から出来た火炎が立ち上がる。
もともと広くはない空間だったし、【ドラゴン】の出現でさらに狭くなったこともあり
一気に視野がわるくなってしまった。
壁の証明とかもやられたらしく、さらに何も見えない状態となった。
ルーソ・ベルシカはこの隙にシュンやキリルに逃げられたら面倒だから
短距離空間跳躍を使われないように警戒している。
何せドアの形成には時間が掛かる。
【ドラゴン】の模倣体、しかもまだ制御しきれてないとすると勝てる。
しかし、攻勢が続くのに手ごたえが無さすぎる。
(妙ね。 動きがない? 絶対、逃げようとするはずだわ)
一旦、攻撃を止めて様子を見る。
徐々に確保されていく視界、そこに見えたのは赤い球体だった。
直径1メートルくらいの奇妙な球体は表面が微かに光る以外なんの動きもない。
しかし、先ほどの苛烈な攻撃で破壊されてないのは明らかだった。
何かのエネルギー系シルードかと思い再び攻撃を開始する。
【アークブレス】の凄まじいエネルギーが青白い光の槍となって球体を直撃した。
いや、正確には直撃する前に吸い込まれてしまった。
ルーソ・ベルシカもやっと気づいた。
球体は動いていたのだ。
ただ、超高速で回転しながら何かをやっている。
「地上で作ったエネルギー吸収するカラクリの応用で作ってみた。 意外と防御にも使えるね
しかし、これの目的は別にある。
あんたは俺が【ドラゴン】を真似て変身したと思ったろう?」
球体の後ろから姿を現したシュンは得意げに説明を続ける。
「実は微妙に違うんだ。【ドラゴン】をベースにしたのはあってる。しかし、俺がやろうとしたのはエネルギーと俺自身の融合であって【ドラゴン】じゃない 」
球体の高速回転速度が上がる。
『加速式』
「最初から【ドラゴン】のような強靭な肉体を求めたんじゃない。
俺がやろうとした改造に肉体が堪え切れなかった。
それで仕方なくギリギリ耐えられる丈夫な体にしただけなんだよ」
シュンの体中に広がる光の色が一気に変わる。
光の強さは弱まっていくが球体のように赤に変わっていく。
『収束』
「俺も今の自分の力がどれくらいなのか全然わからない。
だから、テストに付き合って貰うよ」
やがて、赤く不気味な光線が放たれた。
『加速式収束|熱エネルギー放出』
【ドラゴン】も負けじと【アークブレス】を放って来る。
しかし、【フレアバスト】はそれすら巻き込みながら進んでゆく。
「馬鹿な!、巨大な内蔵機関からの高出力を持つ【ドラゴン】ならともかく、そんな高エネルギーは
あり得ない」
「いやいや、【ドラゴン】も人から見ると嘘みたいな生き物だからね。
そして、地上での戦闘からずっと俺はこの仕掛けを準備していた。
放たれる【アークブレス】のエネルギーを吸収して倍返しする仕掛けをね。
俺一人だとこの威力にはならなかったな。
ありがとう。
取り合えず死ね」
やがて妨げになっていた【アークブレス】が途切れる。
いや正確には【フレアバースト】に吸い込まれた。
【フレアバースト】は何の障害も無くなったことで【ドラゴン】を貫通。
そして弾ける。
耳を裂くような轟音と共に閃光が走る。
「こんな馬ーーーーーーーーー!!!!!」
重火器などまるで効果がなかった【ドラゴン】
そして隣にいた熟練の傭兵ルーソ・ベルシカ
回避不可能な高エネルギーの超熱量は両方を、蒸発させた。
しかし、それだけでは済まない。
狭い空間での爆発は超熱量の暴風となって広がる。
シュンは多分生き残るだろう。
しかし、キリルやミルシアは確実に死ぬ。
「シュン!!!」
「くそ、やり過ぎた!!!」
すべてが終わってしまう。
敵を倒すのに夢中になりすぎて防御を失念していた。
明らかな力の驕り。
自分は大丈夫、だから撃つ。
キリルやミルシアなど完全に忘れていた。
「すこし、頭を冷やしたまえ」
いきなり頭の中に響く声。
そして次の瞬間
超熱量の暴風など完全に無くなっていた。
シュンの前には一人の男が立っている。
手にしていた水晶をしまうと静かな声で聞いて来る。
「力の制御が無茶苦茶だよ。
それに君は何回私の邪魔をすれば気が済むのかな?」
忽然と現れみんなの危機を救った圧倒的な強者
その者は、≪プロミネンス≫だった。
◆◆◆
「いつからだ? こいつは一体、いつからここにいたのだ?」
「そ、それがーー」
地上の軍の作戦本部では大混乱が続いていた。
いきなりの【ドラゴン】出現、
突然の大崩落事故
そしてアノルド准将の消失。
追い打ちをかけるようにまたも大事件が起きた。
「こんな船など見たことも聞いたこともない」
「こちらからの通信には全く反応がありません」
保安維持局の副局長、レスカ・グリケーラン
彼は噴き出る汗を拭きながら考え込む。
(どっかの宇宙海賊か?
それともテロリスト? しかし、あれはデカすぎる。絶対おかしい。
一番あり得ないのはこんなデカ物がここまで接近するのに全く探知出来なかったことだ。
今の軍や地球の技術では無理だ。 新兵器の可能性もあるのはあるが……)
目の前にスクリーンを見る。
「既に宇宙蜘蛛の本船に近すぎるため、宇宙軍の巡洋艦、【カリプソ】では手出し出来ないとのことです」
「よく言うぜ、腰抜け共が。 艦長も不在だし怖気づいてしまったんだろう」
スクリーンに映るのは巨大な宇宙船だった。
戦艦クラスの、いやそれ以上の大きさで推定全長は約3キロメートルにも及ぶ。
ちょっとした町だ。
巡洋艦クラスでは相手にならない。
「一体、お前は何なんだよ」
レスカ・グリケーランは立て続けに起こる事件に困惑しながらも妙にワクワクしてたまらなかった。
色々、噂はあった。
宇宙の怪談。
伝説。
軍の秘密兵器。
しかし、彼は確信した。
あれは地球人類のものではない。
見る者を圧倒するまでに洗練されたフォルムの船体。
エイリアンで間違いない。
如何だったでしょうか。
ヒロインが空気過ぎて次回はもうちょっと頑張って貰おうと思っております。
ご指摘、ご意見はいつでもお待ちしております。
いつもお読みいただきありがとうございます。




