勇者の名は
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誤字や設定の不備、ストーリの問題指摘
送ってくださるとありがたいです。
俺は黙ってキリルの話を聞いていた。
元整備士、渋川シュン
正直女の子と付き合ったこと経験などあんまないし
空気を読むのも苦手だ。女の心なんてわからない。
しかし、これはどうだろう。
自分は大丈夫だから逃げろと?
そんな無理に笑顔なんか作っておいて、足とかはちゃんと震えてる。
ヤドカリ属性の彼女がパワードスーツもなく生身状態だ。
無理もない。
すごく心細いはずだ。
よし、整理してみよう。
こいつは外見は色気溢れていて、ちょっと冷たい印象だが
実は単なる馬鹿だ。
素直に助けてくれとか、色仕掛けで助力をねだるとか、
こっちを挑発して行動を共にするように仕向けるとか。
もっと色々話し方があっただろうに。
ああ、キリルには無理か。
こいつは純粋だ。
前の事件でも危険なのにリチャード管理局長の命令で俺を護衛してくれた。
「…………」
そして、こいつを放っておけない俺も大馬鹿野郎だ。
まあ、キリルがここまでナイスバディじゃなかったら流石に逃げていたさ。
俺は俗物だ。
「このまま行けばお前は多分死ぬ。それでも行くのか?」
「……」
「まさか、俺が手伝ってくれるとでも? 言っておくが俺にはなんの得もないよ」
「正直に言うと今もこころのどこかでは期待してる。
ううん、正直あなたが力を貸してくれると助かる人は増えると思う。
しかし、それは違う気がする」
「違う?」
「私だって馬鹿じゃないよ。本部に住む人や周辺の人全部だと凄い数になる。
私一人が全部救えると思うほど自惚れてはいない。
第一、自分の体を守ることも出来ない今は絶対無理」
「そこまで考えてるなら…」
「正直、私が助けたいのはみんなじゃない。
ただ、私を信じてくれた人
私が信じた人が殺されるのは黙って見過ごせない。
多分、違いはそれだけ」
「……」
「だから、何とか隙を見てミルシアさんだけは逃がして見るつもり。
決して死ぬつもりで行くんじゃないよ」
お前はそう思ってもテロリスト狩りに夢中な軍は手加減などしてくれないだろう。
でも、こいつ馬鹿だけど勇気だけは度胸は相当なものだ。
「はあ、気持ちは何となくわかった。
しかしよ。
そこが一番難しい条件なんだよ。
事件の首謀者だけ逃がすのが他の残り全員逃がすより大変だ。
何故か知ってるか?
首謀者の場合、絶対追手が諦めないからだ」
「うーーっ」
ほら、反論できまい。
「うんーーーでもお前が俺の要求を呑んでくれたら策が無いわけでもない」
「え? 本当に手伝ってくれるの?」
「いや、ただではないよ。ちゃんと見返りは要求する」
「わかった。私に出来ることならなんでもいいよ」
「お前な、男にそんな約束したら絶対後で酷い目にあうぞ」
「うん?」
くそ、そんな澄んだ瞳で俺に顔を近づけるのは反則だ。
卑猥なこととか、奴隷契約などの条件を考えた俺の心が覗かれるみたいで辛い。
しかし、魅力的過ぎる異性を前になんでも要求出来るなら、つい色々考えてしまう。
ええい!!!見返りうんうんは後だ。
強引に話題を変える。
「地上の状況はかなりやばい状況になっている。
ここを上手く脱出するためには、君にも危ない橋を渡ってもらうしかない。
いいな?」
キリルはまっすくに俺の目を見て来た。
「作戦は?」
「このまま行けばーーーーああ、もうドンパチ始まりやがった。
まずは外の俺達の代わりに動く役者をつくる必要がある。
そいつに前に立ってもらって私たちは人々を地下に逃がす」
「え? 役者?」
「正体がバレたら逃げたとしてもまた追われえるだけだ。
ふふ、ちょうどいい素材があるさ。
顔なじみが来ているからそいつにも出演してもらう。 主人公としてね」
キリルに役を説明する。
さあ、作戦開始だ。
◆◆◆
30分後
俺とキリルは教団の人を全部地下へ避難させた。
最初こそ、疑われていたが外でドンパチが始まってからは
みんな素直に移動してくれた。
流石に軍の監視があるので、脱出は後にしてまず地下に隠れてもらった。
軍の戦場監視システムを介して状況を確認したキリルと俺は
乱戦が頂点に達したタイミングで外に出た。
しかし、正体を晒すわけにはいけないので身元の情報を偽造した。
お馴染みの旧友、そう【ルーソ・ベルシカ】さんの登場だ。
勇敢かつ無謀にも【ドラゴン】に喧嘩を売り、
『ここは任せて逃げろ』という親切かつ傲慢な発言の謎の女が乱入!!!!
まさかの物語の伝説の勇者のような登場にみんなの視線は釘付けになった。
皆の注意を集めたキリルこと【ルーソ・ベルシカ】
その隙に俺はこそこそと聖女救出に向かった。
もちろん、キリルを放っておくとあっという間に殺される。
そろそろ、対トカゲ用に作った罠が作動するはずだ。
俺は整備士。
ちょっと不思議にも船内のシステムがうまく使えるようになっただけた。
勇敢に前線で剣と魔法で戦うことなど出来ない。
あくまでも地味に。
それでいて容赦なく。
姦計を試すのみ。
はい。
ポチっとな。
◆◆◆
【ドラゴン】は機嫌が悪かった。
パワードスーツを着た人間どもの重火器ですら自分に刃がたたないのに
1人で? 女が? 自分を後ろから狙撃とか、痛くも痒くもないが
ただ、許せなかった。
しかも、あの女はへなちょこな遠距離攻撃の後はナイフを持ち出したのだ。
(単なる馬鹿か? なめやがってーーーー
貧弱な生身の人間など捕まえて八つ裂きにしてやる)
そう思い女の方に体を掴もうとしらら。
「パーーーチイイイイイイイ」
天井と床をつなぐ高出力の電撃が落とされた。
人間なら即死するレベルの攻撃だが【ドラゴン】には効かない。
もっともこの【ドラゴン】が電力を操ることの出来るタイプなのが大きい。
微動だにせずにいる女。
そんな女を捕まえようとして動く度に様々な電撃が放たれた。
(くそ、誘い込まれたか?)
天井と床をつなぐ高出力の【雷電】
電力が鞭のように襲い掛かる【チェーンライトニング】
執拗な攻撃が数分もの間、続いた。
様々な攻撃は何度か【ドラゴン】に直撃したが
ダメージは大きくない。
そして時間が経つにつれて
電撃が放たれる前に床と天井でエネルギの動きがあると感じると
すぐさま回避行動を取り電撃を避けてみせた。
巨大な体とは信じられないくらいに敏捷な動きだった。
(ふん、大体のパータンは読めた。
こんな弱い攻撃よけるまでもないが電撃はあの女が操ってるだろうな。
よし、そろそろブレスでケリをつけてやる!!)
ブレスを放つために力をためる【ドラゴン】
(うん?、おかしい。
エネルギが集まらない!??)
体の異変を感じた【ドラゴン】
これは敵に何かされたのか?
女は何処だ?
いつのまにか女は消えていた。
しかも、多分人為的なものと思われる煙があっちこっちで発生している。
それらが邪魔で視界が確保できない。
索敵のために周辺を警戒してみるが見当たらない。
これはまずい。
絶対罠だ。
すぐさま、移動して体制を整え無ければ。
しかし、体が思うように動かない。
地面だ。
地面に何かがある。
そこに存在する力場が体内のエネルギー制御を邪魔しているんだ。
くそ、小癪な!!
この場所さえ抜け出せたら…。
突然、遠い上から音がした。
それは気持ち悪い響きの連続的な金属破裂音。
「パーーーパーーーン、カキン、パーーーーーーーーーン、カキン、カキン、カキンーーーーー」
最後に【ドラゴン】が見たのは
落ちて来る
【空】
だった。




