お城攻め
軍の強制制圧作戦が始まって間もなくして
パワードスーツ≪ミノタウロス≫の兵隊たちは教団の
正門を簡単に突破した。
抵抗らしい抵抗もなく、あっちこっちに白旗が上がっていた。
それを見たピエトロスは舌打ちした。
「ちっーー、腰抜け共が」
「ピエトロス大佐、教団側で交渉したいと連絡が入っております」
「無視して攻撃を開始したい所だが、だめだろうな」
いくら報道制限をかけても撮影ドローンとかを完全に排除は出来ない。
やっかいだな。
一人でも冷静さを失い打って出てくれれば簡単に皆殺し出来たのに…。
プライドとか捨てた白旗作戦
実は一番、厄介な対応だった。
しかたない、こちらも一芝居するか。
「例の交渉決裂作戦でいく」
「あれですか? いったん交渉を引き受けて、途中でぶち壊す」
「兵を一人教団側に回らせ、わたしを狙撃するのがいいだろう。
間違っても当てるなよ!
あくまでも私が攻撃されたことを見せればいいんだがらな」
教団に攻撃されたと見せる芝居の準備にかかる軍
そして、そんな事情をしらない≪オライオン≫からは
白旗を上げた数名の使者が近づいて来た。
当然ながら非武装。
「指揮官の方と話をしに来ました。私たちはテロリストではありません」
声を上げたのは、なんと教団のトップ聖女ミルシアだった。
「宇宙軍ではなんの証拠があって、こんな武力を行使しているのか。
教えてください。われわれは公正な調査を望んで……」
そこまで言った瞬間だった。
ミルシア一行の周囲にも
ピエトロス大佐の兵隊の周辺にも
明るい光とともに何かが浮かび上がっていた。
それは船内でよく使われるドアの形をしていて、あっといるまに
目標のものを運んでくれた。
「まさか、あれは?」
「今回のテロ事件に使われたものと同じ生体兵器だ」
「馬鹿な、ほーほんとうにテロリスト集団だったのか?」
「これは一体なんなんですか? 降伏!! 降伏しますから!!!
まずは話し合いと調査をーー」
「よし、まとめて始末する。
喜べ、芝居などする必要はなくなった」
それぞれの思惑が交錯するなか
こちらに跳躍してきた【ゴブリン】の怪物たち。
その数はざっと100体以上。
生身の人間には脅威となる相手だがピエトロス大佐とその部下たちはみんな≪ミノタウロス≫を
着用していた。
「交渉など罠だったんだ。制圧開始!!!!」
「まーまってください! こんな怪物、わたしたちは知らない」
「「射撃開始!!!」」
それ以上の会話は未意味と言わんばかりの攻撃開始。
≪オライオン≫本部の正門は戦場と化した。
もの凄い音量の騒音と共に、放たれる電磁加速マシンガンの銃弾
まだ、部隊の展開が完ぺきじゃなかったため後方の兵力は上手く銃火器が使えずにいたが
部隊単位で同時に放たれた火力は凄まじいものだった。
「「「ズドドドドドドドドドドーーーーー」」」
【ゴブリン】はあっという間に挽肉になって死んでいった。
そして
「うわああーー」
「助けーー」
すぐに銃口は容赦なく≪オライオン≫の使者にも向けられた。
「あああ!!!、やめて、やめてください。 わたしたちはテロリストじゃない」
隣の信徒からの返り血を浴びパニックになりながらも
ミルシアは懸命に叫んでいた。
もう生きているのは彼女一人、しかし生き残ったのではない。
ただ、兵士たちが後で拷問するために生かされただけだった。
「ははは、圧倒的ではないか
よし、このまま建物の中のやつらも掃除する。わたしに続け!
そうだ、聖女とかいう女はちゃんと捕まえておけ」
【ゴブリン】を瞬く間に一掃した兵たちは嬉々として聖女の捕獲に回った。
「なあ、こいつ結構いい女だな」
「気持ちはわかるがやめろよな。ちゃんと大佐が使った後飽きたら俺達にくれるからさ
そん時まではがまんだ」
「でもよ、大佐の後は、小隊長の奴らが遊んで壊すに決まってるじゃねえか?
こんな上玉滅多にお目に掛かれないのによ」
「仕方ないさ。はやく聖女を護送車両に入れて俺たちは他の信徒の女でも探そうぜ」
兵たちが話をしてる途中
それは兵たちに静かに近づいていた。
液体のようにも見える半透明の物質
水たまりにも見えなくはないが、それは意思を持って動いていた。
動く不気味な水たまり。
ゆっくり動くそいつらは一匹や二匹じゃない。
100体以上。
どこからこんな数が?
最初から【ゴブリン】の体内に潜んでいたのだ。
血液とともに流れ出ては機会を狙っていた。
そして
一気に襲い掛かる。
「うわーーーーー」
「なんだ??? こいつらは」
「≪オライオン≫教団の噂の不思議な力か?」
「狼狽えるな!
迎え撃て!!!!」
襲い掛かる液体の怪物に最初こそ面食らったもののこっちは戦闘のプロ。
すぐ、冷静さを取り戻し対応していった。
ただ、相手は液体の怪物
対人用のマシンガンの弾丸はあまり効かなかった。
慌ててエネルギー系の武器に変えようとしたが
懐に入り込まれたらもう手遅れになっていた。
「こいつら、パワードスーツの隙間に入り込んでくるぞ!!
実弾は意味がない。 スタンガンや、エネルギーライフルは効くはずだ!
くそ、なんでここでこんな奴らが」
咄嗟の対応に失敗した兵たちがバタバタと倒れていく。
油断して顔面のペイスハッチを開けていた兵は真っ先に犠牲になった。
液体の体を利用して兵の口や鼻に入り窒息死させる。
掴んで剥がすことも出来ないし、取りつかれたら厄介な相手だった。
「こいつら、【スライム】だ。昔の大戦時に使用された兵器だが非人道的過ぎて禁止になったやつが
なぜこんな大量に!!??」
ピエトロス大佐は【スライム】を知っていた。
要人暗殺用としれ使われる場合が多いこいつは、一旦活性化すると敵味方関係なく攻撃したりする獰猛な性質を持っている。
製造方法はナノマシンの運用や製法と同じくらいに高度なもので弱小のテロ組織なんぞで手が出せるものではない。
生物にも液体の物質にも見える特別な特性。
こいつには更に凶悪な機能があった。
「……………………………」
いきなり味方にマシンガンを乱射する兵の一人。
「かはっー」
短い悲鳴と共に装甲を蜂の巣にされて殺される兵たち。
それが合図とばかりに数名の兵たちが見方を攻撃し始めた。
照準はあまり正確じゃないがこんな密集陣形では狙う必要すらない。
「きゃああーー痛い、やめろ!!」
「くそったれ!! 何しやがる!!」
「………………………」
「撃て、撃て!!!」
「………………」
【スライム】は生物だが、体にナノマシンの特性を持っており
周辺の情報を読んで擬態や変色が可能だ。
しかも、セキュリティが甘い簡単な機械類はハッキングして乗っ取ってしまう。
パワードスーツに取りつき乗っ取りに成功すれば暴走する武装甲冑の完成だ。
パワードスーツは、特に軍の奴はそこまでセキュリティが甘い代物ではない。
しかし、最悪にもほとんどの兵はセキュリティのレベルを下げていた。
毎回乗る度に面倒くさい認証を好んでやりたがる人間はいない。
「くそ、くそ、全員パワードスーツの電子セキュリティレベルを最大にしろ
【スライム】に乗っ取られた奴は容赦なく殺せ」
簡単に楽しめると思った城攻めは大混乱状態となり、死亡者数は急激に増えていった。




