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包囲網


◆◆◆◆◆◆◆


私は外の状況を見て狼狽えていた。


≪オライオン≫教団本部の周囲にはすでにバリケートが設置され

出ようとする者は問答無用で逮捕されていた。

そのやり方は、とても乱暴なもので少しでも抵抗すれば即座に銃撃の制裁が加えられた。

報道制限をかけているのかマスコミも見当たらない。

やりたい放題だ。

これは酷過ぎる。


私は五日前、≪アラクネ≫の提案でここに来た。

社会のあぶれ物たちが集まる≪オライオン≫教団。

ここの代表は聖女と呼ばれるミルシア・エリアドネさんでとても優しい女性だった。

彼女に匿ってもらい、最初の四日間は何事もなかった。

私、キリル・タシュケントは多分行方不明者として

処理されるだろう。

後は熱りが冷めるのを待つだけ。


しかし五日目、急に≪アラクネ≫と連絡が取れなくなった。



そして

あっという間にここは完全に包囲されてしまった。

軍は強制制圧に乗り込むらしい。

制圧目標はここ≪オライオン≫教団本部。

疑惑はテロ。

もしかすると私が原因なのかな?


「もし、私が自首したら……」


ミルシアさんは、そんなわたしの言葉を遮った。


「いいえ、それは意味のないことです。

ここまで迅速は声明発表と制圧計画の実行など普段の腐りきった軍の動きとは思えません。

何者かに(そそのか)されたか、あるいは……。

どのみち、もう事態は動き出しました。

我々は生き残るために最善を尽くすまでです」


私の手を握る聖女ミルシア

しかし、いつもの明るく堂々としていた彼女の手が、今は微かに震えていた。


「一番の上策は逃げることですね。 幸いこの教団の地下には

この宇宙蜘蛛が作られた時期から存在する古い地下通路があります。

そこを上手く利用すれば逃げ切れるはずです」


「やはり、話し合いは無理なのでしょうか?」

「あなたと≪アラクネ≫の話が本当なら多分無理ですね」


「?」


「この事件、思ったより大きな規模で色んな人が裏で動いているみたいなんです。

しかも、彼らは真相が知られるのを恐れています」


彼女はすこし躊躇ってから話をつづけた。


「実はあなたに聞いた事件の顛末(てんまつ)を報道関連の仕事をしている信徒伝手にマスコミに流してみたんです」


「どうしてそんなことを?」


「みんなにテロの真相について知ってもらい警戒心を持って欲しかったです。

しかし、

匿名で動いたのにもかかわらず、信徒は軍に捕まり、殺されてしまいました」


「え!??」


「私も最初は信じられませんでした。

匿名で投稿にしましたから、安全だと説得して動いてもらったのに

私のせいで罪の無き信徒が無くなりなした。

今回の制圧作戦もマスコミの件で探りを入れられた結果かも知れなません。

私の方こそ、ごめんなさい。私が迂闊に動いたせいでーーーーー」


殺された人のことでも思い出したのが顔から血の気が引いてゆくのミルシア・エリアーデ

窓際を背にして俯いてしまったその姿は、いまにも倒れそうだった。


「ミルシアさん! 

自分を責めるのはやめましょう。

貴方もこうなるとは知らなかったんでしょう? 気を落とさないでください 」


「そうーーですね。

今は、落ち込んでいられる時期じゃないですね」


「……いえ」


少しは落ち着いたらしく

「さあ、キリルさんは逃げる準備をしてください。

私は交渉を持ちかけて時間を稼ぎます」

「さっき、話し合いは無理と?」

「ダメもとでやってみます。これでも聖職者ですし、ここの代表役です。

人への信頼を完全に捨て逃げることなど、出来ません」


私にはわかっていた。

ここはもう報道が制限されている。

話し合いをする気があったなら、鼻から強制制圧などしないと。


ミルシアさんは死ぬ気だ。


私はどうしたらいいんだろう。


こんな時にシュンがいてくれたら……。


シュンどこにいるの?




◆◆◆◆◆◆◆



バリケート前の軍の本営


そこには出撃の準備を終えた兵隊たちが

総指揮官の前で報告を行っていた。


「ピエトロス大佐殿、各部隊の突入準備おわりました」

「よし、いいな

絶対、一匹たりとも逃がすなよ」


「は、はい

しかし投降する者がいたら、どう処理しましょうか?

教団の中には民間人もかなりいるらしいですが」


「お前は馬鹿か?

なんのために色々と手をまわして報道制限をかけたのかわからんのか!!」


「たしか、今回の無理やりな作戦の全貌を隠し、我々が証拠を捏造する場面を見られないためだと」


「それもある!

あるが、一番だいじなのは自由のためだ」


「え、自由でしょうか?」


下士官もまさか、ここで自由という言葉がでるとは思わなったらしい。


ピエトロスは笑いながら答える。


「我々はこの宇宙開発の新世紀を切り開く最前線で戦うべき軍人なのだ。

それが、いつもいつも

法律だとか、秩序維持とか、費用削減とかくだらない制限ばかりだ。

鬱陶しくてもう我慢の限界だ。


ああ、この前の反政府勢力討伐はよかった。


思う存分戦えた。


くっくっく、さあ今回も準備は整った。


自由に殺し、暴れられる!!!

野郎ども!!、いいな!!!

自由のいや、殺戮の宴だ!!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!……………」


待機していた兵たちから歓声が上がる。


先ほど質問した下士官もにっこり笑っていた。


ピエトロス大佐以下、この陸戦隊の兵たちはただの一人もこの自由(殺戮の宴)を無駄にしようとする

者はいなかった。



ピエトロス大佐も総大将自ら出撃するという、一見自分の身の危険を顧みない立派な指揮官と

映るかも知れないが、実はただ殺戮が好きすぎて直接参加するだけだった。

本来、総大将は乱戦中に討たれたり、捕らえられたすると味方にただいな迷惑をかけることに

なるため極力自ら矢面に立つことは控えるべき行為だった。


しかし、ピエトロスは元々大佐になどなれる能力などない人間だった。

士官学校時代から戦闘狂として有名で親族の財力や権力が無ければ

絶対卒業すら出来なかっただろう。


そんな、人間にまともなテロ事件の調査を期待するのがむりだった。

案の定

これがチャンスだと思った彼はさっそく真犯人探しよりも犯人作りに取り掛かった。


そう


彼がいまから作るテロ事件の真犯人は聖女だった。


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