ゲート
「そうだ。
よく覚えていないが、キリルが俺を直してくれたんだろ。
ありがとう、お陰で命拾いした」
「私の方こそ助けてもらったし、シュンの傷が治ったのはびっくりしたけど
私がやったかどうか……」
自信なさげにいうキリル。
『多分、詳しくはキリル様もご自身も覚えていらしゃらないのでしょう。
シュン様程ではないにしろ、キリル様も結構長い時間意識がなかったのでございます』
「え?」
初耳だ。
原因不明の前例もない変異現象、体に負担がない方がおかしい。
俺は馬鹿か、助かったことが嬉しいあまり彼女の体の変異についてはあまり深く考えてなかった。
なのにキリルは慌てて謝ってきた。
「ごめなさい。せっかく、シュンが頑張ってダグラス議長を倒してくれたのに
わたしまで気を失ってしまって、何をしたか、シュンがなぜ治ったのかも全然覚えてない」
キリルは酷く落ち込んでいた。
責めるために言い出したんじゃなかったのに、どんだミスをやらかしてしまった。
≪アラクネ≫たちも
「いやいや、気にしないで ほら問題なく回復したし、絶対キリルがやってくれたに違いないよ」
うわ、どうしようこの雰囲気
こらAI何とかしろ!!心の中でサインを送る。
『お二人に提案致しますが、大型シェルターへと一旦お戻りになりませんか?』
「………………それだけど
≪アラクネ≫は≪アナンシ≫の妨害が消えてかなり能力が戻ったんじゃないか?
いまここで向こうと通信できないか?」
『先ほどの情報の照り合わせ結果、現在船内には無数の時空間的、亀裂が入った状態でございます
残念にもここからだと連絡は取れません』
キリルを罪人扱いする連中の所にはあまり戻りたくない。
ことの顛末を伝えったって信じてくれるかどうか。
そして何よりも
「このまま入口を探すのはどうかな」
『理由を伺っても?』
「賢者の話が本当なら『もちろん本当ですよ』早めにゲートを探した方がいい」
「敵の目的がリチャード管理局長なら戻って合流した方がよくない?」
「いや、ダグラスのやつが言ってたんだよ。
もうすぐゲートが閉じると」
『確かに、ではこのままゲート探索に移行でしょうか』
「いや、向こうへ情報は送る。通信はダメでも手はいくらでもある
≪アラクネ≫お前の能力がかなり使えるようになったなら、あれ動かせるだろう?」
『あれでございますね』
『そう、ドローン』
俺の案はこうだ。
ドローンをプログラムして大型シェルターへの伝令とする。
証人として「賢者をドローンにつけておく。
これで何かあった時には「|賢者《≪アナンシ≫がドローンを
操作して対応してくれるし、リチャード管理局長グループ側から伝令として
送り返すことも可能だ。
1メトル級の小型4足歩行ドローンに即席で合体させられた
|賢者《≪アナンシ≫
『最新にして最高!! 賢者の称号持ちのAIの私にこんなボディはないですよ。
せめて飛べる奴にお願いします』
『それ称号ではなく商品名だから、リチャード管理局長に事情説明よろしく。
あ、移動の途中からでも連絡取れるようになったら、すぐに折り返ってくるんですよ』
めっちゃ怖い表情の≪アラクネ≫の立体映像を睨まれると、
≪アナンシ≫は渋々出発してくれた。
こいつら意外と似た者同士じゃないかな。
その間、私たちはこの搬入倉庫と周辺を探索して使える物資を確保した。
賢者いわく俺とキリルは半日くらい気を失っていたらしい。
けっこ移動したり戦ったりしたのに、まったく睡眠欲に駆られないのはそれが原因だろう。
よく、敵に襲撃されなかったもんだ。
とにかく、戻るにせよ、進むにせよ食事と補給は必要だ。
回復した体のリハビリがてら丁度いい。
黙々と探索をはじめた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
≪アラクネ≫から情報を聞き出すまでもなく、俺は整備士だ。
3年も働いていたし、搬入倉庫には何かと立ち寄る機会があった。
「あった。多分このなかだ」
一番広いダグラスと戦った場所以外にも隣接する無数の倉庫がある。
その中でもここは緊急時に使う物を集めた場所なので期待が持てる。
何せ、広すぎるため物資が集まるのはいいが効率が悪すぎる。
例えば一つの部屋を開けると中には数万本の歯磨き粉が入ってるとかそんな感じなのだ。
流石に緊急時物資倉庫なだけあって食料や医療品がすぐ手に入った。
後は武器・弾薬関係だが、ろくなものが無かった。
船内のテロ、暴動に悪用されるのを警戒して武器の運用はかなり制限されているのも事実
しかたなく、これ以上使えないロケットランチャーやマシンガンは諦めることにした。
幸い、ライフルだけはエネルギー充電出来た。カートリッジまで充電しておくと結構長時間使える。
「ちょっと寒いね」
キリルが呟いた。
彼女は今、倉庫で見つかった女性用のパイロットスーツに着替えている。
動きやすさを重視したのか、体にピッタリの艶のある素材のスーツは
彼女の魅力的なボディーラインを惜しみなく表していた。
ただかなり無理してスーツに詰め込んだらしく、胸や尻当たりの圧迫感が凄すぎる。
だが、刺激が強すぎるから薄着はちょっとやめてくれなんて死んでも言えない。
しかし、至福のタイムはすぐ、終了した。
「これはいいわ!!!! パワーも段違い!!!」
現在彼女の姿は巨大な6足歩行の昆虫型ロボット(パワードスーツ)だ。
頭の高さは人と同じくらいだが長さは4メトルくらいで前後に細長い。
操縦者はその背に寝そべて操縦する。これが案外疲れないらしい。
一旦のったらカバーが下りてきて中は見えない。
色気のかけらもない。はい、わかってまいたとも彼女が薄着なのはもっぱらパワードスーツに乗る目的のためでしたよね。俺に見せるためなんかじゃなく。
でも寝そべた姿勢で操縦する姿はかなりさまになっていた。
今は無邪気に色んな動作を試している。
うん、彼女の特性がわかったぞ。
すなわち、ヤドカリ
祖父関係で身元バレや目立つのが嫌で
隙あらばパワードスーツに入り込む。
そのため、いつもパッツンパッツンの薄着
パワードスーツの中でゆったりした服は裾が挟まれたりしたら危ないもんな。
「ライフルを装着させよう」
6足パワードスーツの前足に武器を追加する。
試射でもして見ようかなと思ったら瞬間
「誰かこちらに近づいてきます」
≪アラクネ≫よりの警告。
「誰なのか識別できないか?」
『距離としては後15~20分って所でしょうか、この区画に入りさえすれば身元
も確認できます。
相手は一人です』
「他の生存者かな?」
『それが方角からして大型シェルターからなんです』
向こうからの救援か?
しかし、一人か。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
長身でほっそりとした体。
来客の名は
ルーソ・ベルシカ
名前がちょっと男っぽいので本人はベルシカとなのる場合が多い。
周囲を警戒する様子もなく堂々と歩くその姿は、まるで散歩にも出たかのようである。
整った顔に愛嬌もあって、さらにモデル体型、実際かなりもてるが最近は誰かと付き合ったりは
しなかった。
仕事が忙しかったせいだ。
今、彼女の背中のバックにはある物が入っている。
そして、第10搬入倉庫に来たのもその仕事のためだった。




