激戦の行方
重力反転
それは宇宙船内で絶対実行してはならない処置の一つだ。
単なる重力の遮断なら、まだ助かる見込みがある。
最初体が宙に浮くだけだからだ。
沈着に体を移動させて、どこかに貼りつきさえすれば助かる。
しかし、人工重力反転は違う。
一気に天と地がひっくり返る。
その急激な重力場の変動は身体に多大な負担をかける。
当然、加速され大質量の物体と衝突すればその被害はよくて即死
運が悪ければ全身の骨に複合骨折を起こし、内臓を破裂させる。
勿論、事前に体をしっかり固定させて構えれば被害を
最小限留められる。
しかし、体内の急激な血流逆行など、体にいい筈も無く脳や臓器の損傷に繋がる。
一回目でゴブリンやトロルの殆どが天井へと激突して行った。
何十、何百にも重なって鳴り響く凄まじい衝突音。
天と地がひっくり返った搬入倉庫内部
には地獄絵図の光景がひろがっていた。
散乱した資材の残骸
肉塊となった怪物共の死体
資材に埋もれ叫ぶ怪物
怪物
怪物
搬入倉庫のような巨大な金属の箱の中で重力反転の威力は高すぎた。
実はこのカラクリはここでしか使えない。
そう人工重力設定が比較的にゆるい外郭部だけだ。
中心部や居住ブロックは安全のために重力反転は出来ない。出来て無重力まで。しかも船内は天井が低いから攻撃手段としてはあまり使えない。
1回目終了
咄嗟の判断で何かを掴み災難を逃れた個体もまだまだ残っている。
キリルと俺は、そいつらのための歓迎準備にはいる。
ライフルのエネルギカートリッジを急いで交換する。
ロケットランチャーの弾も補給。
「ちょっと傷見せて」
キリルがわざわざパワードスーツから上半身を出しては肩傷に簡単な手当をしてくれた。
「ありがとう、忘れていた」
見るとキリルも汗でびっしょりだった。
手もぎこちなく震えている。
当然だ。ずっと張り詰めたまま怪物とやりあっているわけだし。
一歩間違えれば死
彼女をつれてきたのは私のエゴだったのでは?
そこまで思うと複雑な気分になった。
「キリルは綺麗だな。
死んでもこんな美人と一緒なら文句なしだ でも…」
「死ぬなんて不吉な事言わないで」
危険な任務に引きずり込んでごめんとn言いたかったのだが
途中でスパッと切られた上に怒られた。
しかし、キリルの顔を覗き込むと
吊り目はあり変わらずだが
唇の端もすこし、吊り上がっていた。
その笑顔を見たら死んでもいいかなって気持ちなど吹き飛んでしまった。
生きなきゃ
キリルを守らなきゃ
せっかくのいい雰囲気だったが怪物共はそんなのお構いなしだ。
今は地面となっている天井側から怪物どもが迫ってくる。
反転してる現在、俺たちはさっきまで地面にいたが、今は高い天井に吊られた状態。
さあ、残りの片付け始めよう
生き残りたちへと射撃を再開した。
天井にしがみついた奴らは撃ち落とし、這いのぼって来るやつらは、わざと接近させライトニングを食らわす。
重力反転で大分勢いを削ぎ落とし、有利なポジションを獲得してからは順調だった。
運良くトロルの一匹は資材の下敷きに出来た。再生し這い出て来るかと思ったが出てこない。どうやら体に核みたいな物がありそれを上手く破壊されたら別に不死身でもないらしい。
問題はその核は何処なのかだ。
残弾に余裕などない。
そこで思いついたのが
頃合いを見て
2回目
重力反転
地は天に
天は地へと
すべてが元に
戻ったが
怪物共は第二次災難発生だ。
せっかく獲得した緊急重力反転権限も
使い切ってしまった。
結果、ゴブリンは全滅
残りはトロル2体
しかし2体とも無傷とまではいかなかったらしい
体の再生速度がかなり遅くなっていた。
キリルと頷きあった後
火力を一体に集中して各個撃破をこころみるが
やはりライフルはダメか。
そうだ。
現在のトロルの位置に簡易の動力網トラップを形成させる。
今は出力は落として反応速度と発射スピードだけに重点をおく。
よし、個体ではなく範囲攻撃出来るようにして起動
すると発生した光の鞭、ライトニングがトロルの体の上をうねりながら
広がってゆく。
いわば、連続的な 「チェーン・ライトニング」
一点ではなく連続的に様々な部位にヒットさせるのがミソだ。
体中に電撃を隈なくチェーン・ライトニングで攻撃する。
すると反応があった。
デカい体の後ろ側
広い背面の中でも4本腕の付け根より、すこし下の部分にあったた瞬間
普段とは違って大きな反応を見せた。
そう
痛がっていた。
俺はキリルと一度頷き合った後
トロルの弱点に火力を集中させた。
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光などない完全な暗黒の中
音も熱もない空間の奥で
それは動いた。
目が覚めた。
これはどういうことだ。
外が静かすぎる
いつもなら、あいつらは騒がしいはず。
まさか、みんなやられた?
あり得ない
あの数の生体兵器に勝てるはずがない。
そんな兵器も兵力も今の船内にはない。
中途半端な数で来たって他の生存者らのように肉塊になるだけだ。
それなのに胸騒ぎがする。
いや、変異し始めた体の影響なのか?
外の様子を一度確認する必要があるかもな。
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弱点を探し当てた後は
トロルはデカい的に過ぎなかった。
しかし、周囲にゴブリンが残っている状態でトロルが普段の体力や再生力があった場合
こう簡単に倒されることはなかっただろう。
楽勝より、辛勝と言った方が正解だ。
現にキリルと俺はとっくにライフルとか使い果たし
今はライフサポートバンドのスタンガンくらいしか個人武装は無い。
これ以上の敵は御免こうむりたい。
そう思ったのら
トロルが守っていたコンテナーのハッチがゆっくり開いた。
「おいおい、冗談だろう」
「……」
俺とキリルはそれ以上何も言えなかった。
そこから外に出て来たのはライフサポートバンドのスキャンだと
間違いなくダグラス議長だった。
ただし、身長が軽く3メトルを超えていて
人間としてはあるまじき立派な角が頭から生えていたのだ。




