乾坤一擲
乾坤一擲という言葉がある。
運を天にまかせて、のるかそるかの大勝負をすることらしいが
正に今がそんな状況だ。
逃げることも出来るが何故か今回の事件、どうもタイムリミットあるような気がしてならない。
体の異変もそうだが、何か別のタイムリミットがさし迫ってるような、嫌な予感がするのだ。
とにかく、仕込みは終わった。
今回の戦場は天井も高く搬入倉庫なだけあって開けた空間だ。
前回のように狭い通路へ誘導し、ドアで嵌め殺す芸は使えない。
長期戦は返って不利と見た。
最初から大技でいく。
一旦始めたら、こっちの身も危なくなる。
体をロープで壁に固定する。
キリルの方もパワードスーツをワイヤで固定済みだ。
そして、絶対途中から突発的に現れるやつらがいるから、武器類を状況に合わせて使えるように並べておく。
勿論武器もそれぞれ固定させる。
この区画の環境操作命令権の習得に後、すこし。
後、ちょっとで
コマンドが出せるようになる。
苛烈な防衛戦のまっただ中
突然≪アラクネ≫から警告アナウンスが来た。
『緊急事態でございます、私の動きがばれたようです。この区画内の敵全体に一斉の
データ転送が観測されました。
恐らく、お二人の位置情報かと。
敵、来ます』
区画内で自由に動き回っていたゴブリン。
中央で陣取っていたトロルたち。
床の残骸から、がむしゃらにエナージ補給をしていた怪物共が
一瞬にして
視線を一点に集中させた。
そう、俺とキリルが隠れている場所にだ。
「完全にばれたな。≪アラクネ≫、コマンド権限習得まで後どれくらい掛かる?」
『推定10っ分程度でございます』
「それだと俺たちは確実に死ぬ
5分、いやお願いだから、3分でケリをつけてくれ」
『最善を尽くす所存でございます』
≪アラクネ≫のかしこまった返答を聞き流しながらロケットランチャーを手にする。
「射撃開始!!!!!!!!!」
ピシューーウっと発射音は少し間抜けだと思ったロケットは
着弾したらド派手な火炎と共に爆発してくれた。
「ドッカアアアアアアアアアアアアン!!!!」
流石に小型のゴブリンなどは、一発で何体も巻き込ままれ、粉粉になるか燃やされた。
出し惜しみなくロケットランチャーを乱射。
キリルはパワードスーツのアームに大口径の電子磁気誘導マシンガンを載せて撃ち始めた。
高火力のマシンガンは電子磁気誘導のお陰で恐ろしいほどの貫通力を持つ優れモノで
シェルターでも貴重な虎の子だったらしいのだが別れ際にロウファン軍曹がこっそりと一式持たせてくれた。
「ズドドドドドドドドドドドドドドドドーーーー」
接近して来たゴブリン共が小間切れになっていく。
ヘルメットの中のキリルの表情は真剣その物。
吊り目が更に鋭くなっている。
こりゃ絵になってるな。
「集中して!!!!」
怒られました。
とにかく
最初から持ってるありったけの火力を注ぎ込む。
俺もライフルで狙いを定め撃ち始める。
さて、
敵さんを引き付けてからの順次撃破がセオリなのに
最初から乱射とは素人丸出しの作戦だと笑うかも知れない。
しかし、キリルも俺もドンパチは本業じゃないんだ。
射撃精度はいまいちだし、少しでも油断していて変に回避行動取られる前に数を減らす。
そして敵さんを出来るだけ刺激し、腰を上げるように仕向ける必要がある。
敵の数は軍団クラス。
それも三桁以上。
数は力。
早くも射撃網を潜り抜け接近する個体が現れ始めた。
今だ。
前回の経験を活かして作ったトラップを起動する。
船の電力ネットを引っ張って作った電気トラップだ。
今回は以前の雷電のような高威力はない。
しかし、小回りが効く。
要するに俺とキリルが壁を背にして陣取ってる防衛線。
その前方20メトルのフィルドには動力網を蜘蛛の巣糸と如くバラまいておいた。
勿論、床下だから、外からは見えない。
出力が低い分
起動も早い。
いわば小型雷電
「ライトニング!!!!」
俺の整備端末操作でロックオンされたゴブリンに、電力で作られた光の鞭が襲いかかる。
ど派手は閃光の後
わら人形のように倒れるゴブリン共。
一回で同時に10っ体までロックオン出来る。
クールタイムはほぼ無し。
「ライトニング!!!!」
「ライトニング!!!!」
「ライトニング!!!!」
「ライトニング!!!!」
着実に敵の数を減らしていく。
しかし、こいつらは決して馬鹿ではない。
近づくスピードが緩やかになり始めた。
早くもライトニングを警戒して様子を見ている。
防衛線の前はゴブリンの死体で埋め尽くされたがライトニングは、まだ使える。
しかし、床の上に障害物が多いと確実に効率が落ちてしまう。
段々とライトニングを出す速度は落ちて行く。
銃火器も、もうエネルギがやばい。
マシンガンとロケットランチャーは残弾ゼロ。
今は二人ともライフルで応戦中だ。
予備のカートリッジがあるのはあるが、リロードには時間が必要だ。
撤退すべきか?
いや、まだ手は残っている。
「≪アラクネ≫権限獲得は?」
『何とか2回までなら……』
「まず、それを寄こせ。
そしてせめてもうちょっと稼いでくれ」
限定的システム整備、権限を獲得コマンド準備。
全ての安全装置解除。
隣接ブロックとの隔壁を閉鎖
俺は作戦に必要なコマンド入力のため電子整備端末で必要な項目を
素早く処理してゆく。
その時だった。
「…………ッツ」
肩に走る激痛。
見ると細長い金属棒切れが片側に壁に刺さっていた。
掠っただけだがかなり痛い。
直撃してたら死んだな。
前回もあった投擲攻撃。
更に進化してる。
単に投げるのではなく、ちゃんと突き刺さるような物を選びやがった。
「シュン!!」
「大丈夫!
掠っただげだ」
キリルが鋭い声を上げるが介護に回る余裕はない。
今、銃撃を辞めたら終わる。
怪物共に生体チップを奪われ
後は細切れになるだけだ。
後、ちょっとだ。
銃撃の勢いが弱まったと判断したか、残り大多数が一気に襲いかかって来た。
よし、上出来だ。
「キリル始めるぞ」
「はい!」
『緊急コマンド発令、超危険コマンド実行のため総員安全圏に退避せよ、総員…………』
アラクネが時間節約のため、高速でアナウンスしていく。
何かの呪いの呪文のようだが
あまりにも危険なコマンドのため、最低でも
3回はアナウンスを行わないと実行されない。
それほどの危険なコマンド。
乾坤一擲
但し、投げられるのはサイコロじゃなくお前らだ!!!!
「発動!!!! 人工重力反転」
効果は劇的だった。




