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加速

いきなり目の前に晒された眩しい上半身に俺は戸惑うしかなかった。


これは驚きだ。


確かに美しい。


しかし。


それだけではない。


彼女の胸の中央の一点が眩しく光っていた。

まるで彼女の感情に反応するかのように光が変化する。

生体チップ?

生体チップは単なる情報処理や認識のための物だ。

こんなに光ったりしない。

しかも後ろを向いた彼女の背中にも光る部分があった。

何かの刺青のようでもあって、よく見るとそれは()()()()()()()()()


「あなたにもある」


ぽっつり出たキリルの言葉に戦慄(せんりつ)が走った。

俺も急いで上着を脱ぎ捨て自分の体を確認する。


そんなバカな。


俺の体には仄暗い青い光を放つ螺旋にも似たような模様が浮かんでいた。

まるで()のような。


キリルは続ける。


「私もこれが何なのかは分からない。

しかし、これは単なるワープ事故の後遺症ではない


と思う」


俺がキリルに何かを言うよりも先に突然の呼び出しで会話は中断された。


若い女性の声だ。


「ミス・タシュケント、いますか。

ロウファン軍曹の指示で着替えの服を持って来ました。

すみませんが、すぐ試着をお願いします。

裾とかサイズが合わなかったら別の物を探す必要がありますから」


急いで服を着たキリルは無言で一人、シャワー室を出て行った。


「…………………」


なんか可笑(おか)しなことが起こってるとは思ったけど

割と身近な

いやいや、俺自身の体に変化が起こっているとは考えもしなかった。

違和感はあった。

確かにあったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「キリル、お前は私の体の異変を知っていた。

だからわざわざ人目につかない所で直接俺に証拠を見せて知らせてくれた

何時だ?」


「………」


考えて見ればわざわざキリルが教えてくれなかったら

知らずうちにロウファン軍曹か他の人の前で上着くらい脱いでいたかも知れない。

皆不安がっているこの状況でこんな怪しい体がバレたらただでは済まない。

キリルが恥ずかしさを堪えてこっそり教えてくれたお陰で助かった。


「何時からわかっていた? 君は本当に……」


「この前、トロルを倒す時、あなたの体が光っていた。

最初は見間違いかと思ったが違ってた」


そうか、違和感はそれか


いくら俺が整備士出身でシステム運用に天才といっても一万に及ぶ動力ラインの

調整やその出力制御を事前準備無しでぶっ放すのは危険すぎる。

考慮しないといけない要因は無数にあるし連続での使用は、いうまでもない。

しかし、うまくいった。

いや、行き過ぎた。


「君はいつから?」


「よくわからない

けど、管理局長グループと合流する前からだから二日くらい前だと思う。

気がついたら体に広がっていた」


それから私だちは体の異常に関して情報を交換した。


意外と外見以外の異常は見られなかった。

ただ、俺は本業の電子システム操作がうまく行き過ぎる傾向があるが


彼女的には外見以外メリットはないようだ。

これからどうなるかはわからないけど……。


このことを誰かに相談したり出来るハズもない。


先ほど追い出されたばかりだし、俺自身この体の変化や敵の目的が

分からない。


でも、これだけは言える。


敵ははっきりと俺達の命を狙っている。


何故かは知らないが、この船を手に入れようとしている。


こんな危険時に自ら行動したダグラス議長は絶対何かを知っているはずだ。

むしろ、真打の黒幕だったとしても驚かない。


リチャード管理局長グループも何かを企んでいる。


≪アラクネ≫は一体どこまで信用していいだろうか。

多分、意図的に情報を隠匿してるのは疑いようがない。


色んな情報が加速的に収束する中

やるべきことは、はっきりとわかった。


まずは10番搬入倉庫の状況を確認してからだ。


隣のキリルは、すこし不安そうに俺を見つめていた。


近くで美人に見つめられるのはちょっと照れるな。


また、はっきり分かったことがもう一つ


彼女は信頼出来る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




何回かの休憩を挟んで移動をつづけ後少しって所に到着したら≪アラクネ≫から通信が入った。


『今までは敵がいませんでしたが、この先』


「ああ、分かるぜ」


「ライフサポートバンドのレーダでも補足出来た」


敵さんのそれは、まさに大軍だった。


個体差は結構あるがゴブリンは本当に無数に。

そして、あれ程、倒すのに苦労したトロルが3体もいた。

大軍団。

丁寧にも中央の何かデカいコンテナーを取り囲むようにして陣取っていた。

ダグラス議長の探していた物はあれで間違いない。


望遠観測装置で確認したところ

床には無数の犠牲者らしき人々の残骸(ざんがい)が転がっていた。


かなりグロテスクな光景のはずなのだが、実際何も感じない。

それより、こんなに離れているのにも感じられる勢いというか

殺気がもうすごかった。


ふう、

こっちの武装を確認。

キリルはパワードスーツに固定武装はなく

対人用のライフル一丁と

トロルのような大型を想定したロケットランチャー

一応キリルのライフルは俺が持つのよりは確実に威力が高いやつだ。

しかしトロルには効かないだろう。


俺の武装はさらにしょぼい。

トロル退治に使った雷電攻撃は準備に時間がかかりすぎる。

また、敵さんがそんな時間待ってくれるだろうか。

同じ手が通じるかも疑問だ。


それでも容赦なく隣の美人さんは聞いて来る


「シュン、作戦は?」


ううううう、そんな期待に満ちた目で見つめないでくれ。


試してみたい作戦があるのはある。


えい、やっちゃおう。

「キリル、君の協力が必要だ」


「任せて」


おお、ちょっと笑ったぞ。

か、可愛い。

やばい、作戦の成敗に関係なくちょっと嬉しくなってきた。


どうしよう

この子が実は、テロリストで子持ちでビッチでも付いて…………


「バシッ」


痛い!!


「私、違うから、ビッチじゃないし……」


覚えておこう。


また、口に出してたようだ。

覚えておこう。

至近距離での妄想は自殺行為だと。



さあ、早速作戦開始だ。


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