ダイモンVSマリン
! なるほど。そういうことか。
つまりダイモンの攻撃で気を付けないといけないのは、あの光によって生まれる影の方だったんだ。
あの光はあくまで影を大きくしてこちらを捕らえやすくするためのフェイクだったんだな。
突然の乱入にもひるむことなく、とりあえずこっちを片付けようとしているのか、ダイモンがもう一度例の光を放り投げた。
その瞬間、ダイモンの足元の影が高速でこちらに迫る。
どうやらこちらの影と重なることでその部分を縛ることができるらしい。
で、
どうやって影なんて気を付ければいいの?
もうあの光に照らされている時点でダイモンの陰に入っちゃってるよね。
光の速さでよけろってことかなハハハ……。
ガシ!!
「あ」
ドッカーン
流れるような動きでまた捕まって一撃を入れられてしまった。
今回も風絹ガードが入ってダメージを散らせたが、そのまま廃材が積まれたゴミ山に突っ込んでしまった。
「し、シラユキちゃーん!!」
「やったか!!」
ダイモンがお約束を叫ぶ。
まさか自分が言われる方になるとは。
とはいえ、結構なダメージをもらっちゃったので、体が思うように動かない。
……うぅ、淡々と言ってみたけど、これ普通に痛いよぉ。
ロングコートにフードにお面のおかげで、廃材の破片が刺さるようなことは防げたみたいだけど。
それでも強く打ち付けた体は痛みで悲鳴を上げている。
廃材が崩れ落ちたことで舞い上がった土煙が少しずつ晴れていった。
私はそのまま動くことが出来ずにぐったりと廃材の山に寄りかかっている。
「あれ?ほんとに倒せてるじゃん。」
ダイモンが拍子抜けしたようにこちらへ歩いてくる。
……もしかしてとどめを刺そうとしてる?
くそぅ、どうにも体が動かない。
あれ?なんだか視界が赤いような。
もしかして頭からちがでてる?
さっきから動けないのは頭を打ったからなのかな?
「じゃあ、お約束の覆面剥ぎでもやりますかね。どんな顔してるんだろうな?」
「うう……」
ダイモンの手が伸びてくる。
なに?お面を取ろうとしてるの?
まずい、こんな人目のあるところで髪の色を見られたら、折角隠しているのが無駄になっちゃう。
「顔を隠している悪役の素顔ってどんなパターンあったかなぁ。
ひどい傷があったり、有名な奴が裏で悪いことしてたりってのが王道だけど、有名人の方なら俺わかんねぇしなぁ。」
相変わらずよくわからないことをぶつぶつ言いながらダイモンが私のお面をつかむ。
その瞬間、またもダイモンと私の間を氷の杭が走り抜ける。
「……!!っとぉ?いけねぇ、そういえば忘れてたぜ。」
それを放ったであろうマリンさんにダイモンが顔を向ける。
「シラユキちゃんから離れて……!!」
「うん?こいつの名前シラユキって言うのか? 似合わねーな(笑)」
悪かったな。
「あれ?よく見たら君もかわいいじゃん。三人目のハーレム候補かな?」
「?……何をいってるの?」
マリンさんと会話しながら、私のことを適当に放り投げるダイモン。
もうこっちには興味が無くなったのかもしれない。
私は崩れて廃材の山になってしまった家に落ちる。
「ああ!!何てことを……」
「どうも君はあいつに騙されてるようだ。眼を覚まさせてあげるから、俺について来いよ。」
「訳の分からないことを言わないでよ。ファイアーリボン!!」
どうやらマリンさんがダイモンと戦闘を始めたらしい。
距離を取ってまほうで攻撃すれば、後衛職のマリンさん一人でもそこそこやれるのかもしれないけれど、
あのダイモン相手だとそれも厳しいかもしれない。
未だに衛兵も駆けつける気配がない以上、私がどうにかして手助けしないとマリンさんが危ない。
マリンは焦っていた。
先ほどから何度も魔法を放っているが、相手の男はヒラリヒラリとかわし続ける。
もともと魔法なんていうのは、前衛が足止めしているところに打ち込むのが一番当てやすいから、
今のような状況はあまり得意ではない。
実はマリンの魔法は、本が魔法の発動に必要なプロセスを代行してくれるので、一瞬で発動できるというほかにはない強みがある。
とはいえ、打ち出される魔法自体が、速度が速いか、直線的な動きしかしない物しか今の状況で使えそうなものはなかった。
せめて相手がこちらに近寄ってくれればどちらも当てられる可能性があるのだけど、どうやら相手はこちらをしとめるつもりがないのか、魔法をよける以上のことはせずに、意味の分からないことをこちらに言い続けるだけだった。
「君みたいな子があんな奴と一緒にいちゃいけない。僕と一緒にくるといい。」
「っ……もう!わけがわからない。何がしたいのよ!!」
いい加減今の状況が続くのがマズいと思ったマリンは、イチかバチかと大きな魔法を使うことを決意。
余っている魔力をつぎ込み、本に記録されている魔法を発動させようとする。
しかし。
「捕まえたよ。」
「……ひぃ!!」
その一瞬のスキをついて、ダイモンがマリンへ急接近する。
そしてマリンをとらえようと手を伸ばした。
その瞬間。
ドスッ
「がああああああ!!」
いきなり飛んできた金属のスパイクがダイモンの肩に突き刺さった。
「な、なんだっていうんだ、くそ……」
ダイモンが飛んできた方向を睨み付けると。
「忘れてました。」
廃材の山の中からゆっくりと立ち上がる小さな人影、
その周りにはいくつものスパイクが突き刺さっていた、さらにその両手にもスパイクが握られていた。
「僕なら材料があれば簡単な武器くらいいくらでも作れるんでしたよ。」
素材の変質と成型を使って作り上げたスパイクをダイモンへ投げつけつつ、マリンさんを助けるために
シラユキは立ち上がる。




