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見せかけの刃

フェリウスに戻って冒険者ギルドへ帰ってこれた。


「とりあえずお前ら三人はカードの受け取りをしておけ。

報酬に関しては俺から交渉しておかないといけない分もあるからちょっと待ってろ。」


バスターさんが私たちにそういって今回のクエストの報告をやっておいてくれることになった。

ある程度報告する内容は前もって決めていたので私たちがいなくても大丈夫だろう。


ジャステア君とマリンさんと一緒に受付へ向かうと、あちらの方から声をかけてきた。


「あら、あなたたち。もうカードの更新は終わってたのになかなか来ないからしんぱいしてたんだよ。」


受付のお姉さんがそういって後ろの同僚にカードを持ってくるように頼む。


(ボクら、まだ新米なのにもう顔おぼえてもらえたんだ。さすがギルドの受付嬢ってことかな。)


こそっと横にいる二人に話しかけると、二人して妙な顔をされた。


(いや、俺たちはともかく、シラユキは一度見たらそうそう忘れられないとおもうぞ。)

(いや、ジャステア君も冒険者の割には服装とか……まあシラユキくんほどじゃないけど。)


ああ、そういえば今の私は仮面とフードで顔を隠している不審者スタイルだった。

なんだか最近すっかり慣れてきて違和感がなかったよ。

でもいまだに町を歩いているとほほえましい視線やギョッとした視線を感じるんだよね。

ほほえましい視線の方は、最近このお面が子供に流行ってることが原因だろうけど、顔どころか人相すべて隠してる私はさすがに怪しすぎるのかもしれない。


まあ、この国を出るまではこのスタイルをやめるつもりはない。

例の指名手配じみた依頼書のことがあるから、まだ髪の毛の色を知られるのは危険かもしれないからね。


そんなことを考えているうちに、受付のお姉さんが、他の職員から何かが入った箱を受け取っていた。


「はーい、お待たせ。これが三人の新しいカードとタンマツだよ」


端末?


お姉さんから渡されたのは、新たにランクが更新されているカードと手のひらサイズの長方形の石板のようなものだった。

光沢のある石板は、表面が磨かれているかのような光沢のある黒いものだった。


「これって何ですか?」


マリンさんが私たちを代表してお姉さんに聞いている。

とはいってもジャステア君はこれが何か知っているようで、一人で嬉しそうにしている。


「これはいつかの異世界の戦士が考案したとされている、情報タンマツ。ある程度の功績を認められた冒険者に配られるもので、冒険者ギルドでしか取り扱えない特殊な魔道具だよ。」


表面に自分のカードをかざすと、端末の表面に液晶画面のように画面が表示された。

……スマホ?っぽいなぁ

そうさ方法もそのままスマホで、この端末があれば、ほかの冒険者と通話が出来たり、掲示板に書き込みが出来たり、今の素材などの買い取り価格などを調べることができるらしい。

昨日としてはそれで全部らしいが、この機能は、例の異世界人が神に頼み込んで結界をアンテナ基地として使わせてもらいながら使用しているため、通信範囲は神の結界の近くに限られているうえ、国家間の通信は、冒険者ギルドないでしかできないという制限があるらしい。

これのおかげで、冒険者ギルドはどの国でも活動が認められているのだとか。


なるほど、この世界の通信は冒険者ギルドが握っているのか。


試しに掲示板に入ってみると、元の世界のように妙な雑談を中心とした掲示板は存在せず、情報のやり取りや、売買の仲介、依頼の紹介や探し人を中心に掲示板はつかわれているようだった。

今はギルド内にいるので他の国の掲示板にもアクセスできるそうだったが、そっちは有料だそうなので、とりあえずやめておいた。

(この時は気が付かなかったが、自分の情報をお金を払ってでも張っておけば姉たちが探しやすかったはずだ。)


受付での用事も終わり、三人で連絡先を交換していると、バスターさんが私たちの方に寄ってきた。


「おお、お前らもそれがもらえるくらいに認められたんだな。まあ、今回の仕事の結果は反映されてたはずだから不思議ではないがな。

もう一つランクが上がるのも目前だろう。

それと、これが今回の取り分だそうだ。」


バスターさんが私たちにそれぞれ報酬を配ってくれる。

ソコソコの額だったけれど、倒した数を考えると少し稼ぎは少なめのようだった。


「あれ?こんなものなんですか?」


マリンさんが少し不満げだった。

彼女は未だにマジックバック系のアイテムを手に入れられていないので、お金は少しでもほしいのだろう。

ちなみに、お金持ちのジャステア君と、依頼を受ける以外に稼ぐ手段が豊富な私は、あまり報酬の額にはこだわってはいない。これは冒険者としては異質な方なんだろう。


「まあ、相手は多かったけれどパーティーで行動してたからな。頭割りで減っているうえに、大人数での行軍は経費がかさむんだよ。」


バスターさんが説明する。

経費といえば、私の取り分にはしっかりと爆弾の費用は入っているようだった。

しかし今後も同じようにもらえるとは限らないので、気をつけておかないと……

まあ、使うべきところでけちるようなことをするつもりはないけれどね。


「ていうか、お前らのランクで一度の依頼でそれだけもらえるのはなかなかないんだぞ。

普通ならその日の宿代を稼ぐことに必死になってるような奴がほとんどだ。」


実際、私たちと一緒に行っていた駆け出しの人たちは、今回の報酬を臨時収入だと喜んでいるようだった。

しかし、私たちは同ランクと比べて明らかに戦闘力が違う。

今の私たちのランクは、最低限の戦闘ができることを認められればなれるランクではあるけれど、正直一番弱い魔獣を倒すのがやっとという冒険者も少なくない。

戦闘力だけで言えば、私たちはもっと高ランクの依頼でも受けられるはずなんだけど……





報酬の受け取りも終わって、今日は解散することになった。

私は今回の遠征で消耗したものを買いそろえるために、商店の立ち並ぶ通りに寄ってから宿に戻ることにする。


(ええと、減った保存食と、石鹸と、砥石も欲しいな。)


頭の中で買うものを確認していると、不意につけてきている気配に気が付いた。


(?、まさか今更あの依頼書の件かな?でも顔はずっと隠していたし……)


宿まで引っ張っていくと面倒なことになるので、さっさと撒くか撃退するために、近道をするふりをして路地裏に入り込む。

案の定追いかけてきたので、待ち構えて対峙する。


「ボクに何か用?」


路地裏に入ってきた男たちは、私が待ち構えているのを見てうろたえる。

後ろから来る増援もないので、計画的なものではないみたい。


「っとぉ。ガキィ、てめえがこそこそため込んでるのはわかってるんだよ!

でかい仕事の分け前をもらったそうじゃないか。

俺たちにも分け前をくれてもいいんじゃないかぁ?」


追いかけてきたのは三人の男だった。服装的に冒険者ではなく、町のチンピラらしい。その中のリーダー格らしい男がショートソードを取り出して脅しをかけてくる。


「ボクは冒険者だよ?ケンカを売るには分が悪いんじゃないですか?」


正直この人たちの狙いが分からない。

どうも例の手配書のことは知らないただの物取りのようだし。

分け前っていうのは、さっきの報酬のことだろうけど、部外者の入ってこないギルド内でのやり取りは冒険者以外が見ているはずはない。


「てめえみたいなガキが、討伐で稼げるわけがねぇだろうが!!金魚のふんみたいにくっ付いていくだけで金をもらいやがってよぉ!!」


……ふむ。どうやらギルド内にこいつらに情報を流したやつがいるみたいだね。

私が戦えないと思っているってことは今回の遠征パーティーの中の誰かではないみたいだね。


「……どうやら戦闘員ではない冒険者から報酬を巻き上げようとしている子悪党みたいですね。

これまでどれくらいこんなことをやってきたのかは知らないですけど。」


相手が油断しているうちに素早くナイフを抜く。


「今回は狙う相手が悪かったみたいですね。」

「はぁ?てめえみたいなのが三人に勝てるはずが……」






「っていうことが昨日会ったんですよ。」


次の日、依頼を探しにギルドへやってきたらジャステア君に出会ったので愚痴を聞いてもらっている。

ギルドに併設されている酒場で二人で向かい合って座っている。

勿論二人ともノンアルだ。


「そいつらはそのあとどうしたんだ?」

「もちろん適当にのして衛兵に突き出しましたよ。あんなの準備運動にもなりませんよ。」


ケラケラ笑いながらパタパタと手を振りつつ言う。

ジャステア君も心なしあきれたような顔をしている。


(相手も気の毒に。よりによってこいつを狙ったか。)

「何か言いましたか?」

「いや。 ところで、やはりシラユキが狙われたのは、戦闘ができるとは思われなかったのが原因だろう。」

「うーん。背が低いのは自覚していますが……」

「それだけじゃない。シラユキは、パッと見て武器の類を持っていないように見えるんだよ。」

「え?」

「冒険者が武器を持ち歩いてるのは、なめられないためって言うのもあるんだ。

その点、君はナイフだってコートの下に隠しているし、昨日襲ってきたって言う相手も丸腰だと思ったんじゃないか?」

「で、でも実際ナイフを持っていましたよ?隠し武器を全く警戒しないなんて。」

「シラユキ……あのな。」


ジャステア君が真剣な顔でこちらを見てきます。なんでしょう。


「正直ナイフ使いに強いやつがいるなんて、普通は思わないんだよ。」


ガーーーン!!


「なんでですか!差別です偏見です!!」

「いや、普通の冒険者だったら、ナイフってのはまともな武器が買えるようになるまでのツナギでつかうものなんだよ。

魔獣相手にぎりぎりまで近づかないといけないナイフを使い続ける奴は、普通はいない。」


なんということでしょう。ナイフ便利なのに!万能なのに!!

……まあ、私がナイフつかってるのは普通の剣とかを使えないってことが原因だけど。


テーブルに突っ伏して落ち込んでいる私にジャステア君がひとつ提案をしてくれた。


「なあシラユキ、この際だから君も何かわかりやすい武器を腰にさしておくべきだ。

じゃないとまた同じような絡まれ方をすることになるぞ。」





ということで、ジャステア君と一緒に武器屋巡りをすることになった。

ジャステア君は依頼を受けるつもりだったのに……と言っていたけど。

そのうち新しい錬金道具を作ってあげることで手を打った。


「うーん。どれもボクには大きいですね。」

「君もたいがい不便だな。」


いくつかの武器屋を巡ったが、なかなか私が扱えそうな武器が見つからなかった。

正直、見せかけの武器なので何でもいいと言えば何でもいいのだけど、さすがに全く扱えないものを腰にさしておくなんて無駄はしたくなかった。


「しかし、大体の武器の種類は見て回ったぞ。これ以上は普通の武器屋にはおいてないんじゃないのか?」

「そうですねぇ。……うん?普通じゃない武器屋なんてのもあるんでしょうか?」

「ああ、一部の国でだけ使われているようなものや、珍しい武器なんかを集めているところがある。

だが、飾りにするだけの物っていうなら、少し高いぞ?」


とりあえず行ってみることにした。

武器屋の多い通りから少し外れたところにあるその店は、ほかの店と比べても明らかに雰囲気が違った。

なんだか雑多な雰囲気だった。


「いぃらっしゃーい」


出てきた店主は、妙な民族衣装のような服装に身を包んでいた。

細身の男性だったが、言葉に妙ななまりがあり、顔には隈取のような化粧をしていた。


(ジャステア君。この店主さんは国外の人なの?)

(どうだろうか。なんか異国情緒がどうとか言ってたが……)


ジャステア君はいつだったか武器屋巡りをしていたときに、ここにも立ち寄っていたらしい。


店主のことは放っておいて、何かいいものがないか探してみる。


「シラユキ!シラユキ!こんなのがあったぞ!!」


何故か私以上に興奮したジャステア君が妙な武器を持ってくる。

手首に固定して使う刃物のようだった。スイッチを押すと刀身からさらに刃が広がってT字の武器になる。

……どう使えと。

男の子病が発症したらしいジャステア君はやたらとギミックの凝った武器を私のところに持ってくる。

なんで私以上に興奮してるんでしょうこの人は。


「そういう仕掛け武器ってあんまり使いたくないんですよ。」

「なんでだ?君なら使いこなせそうだと思うが……」

「凝った仕掛け武器って、実際使うとすぐに壊れるんですよ。可動部のメンテナンスも大変ですし。」


やっぱり武器はシンプルなつくりほど丈夫だよね。


2人してあーでもないこーでもないと商品を見て回っていると、ある商品が眼に入った。


「刀?」


そこにあったのは日本刀。美しいさやに納まった片刃の反りのある太刀だった。


「おやおやぁ?お客さん刀ぅをご存知ですかぁ?」


何故か刀を見つけた瞬間に店主が寄ってきた。


「ええと、ハイ。話に聞いたことがあるだけですが……」

「なるほどぅ実はこの刀は私ぃの故郷の武器でしてねぇ」

「お、刀か。確か異世界人が持ち込んだ武器の一つだとか聞いたことがあるな。

北の方の国で生産されているとか」


店主が何か語りだしそうだったところに、タイミングよくジャステア君が割り込んできた。


「ちょっと抜いてみてもいいか?」

「よろしいでぇすよ。」


ジャステア君がするりとさやから刀身を抜き出す。

美しい波紋は、それだけでしっかりと鍛えられた鋼であることがわかるほどだった。


「ううむ、美しい。話には聞いていたが、刀。素晴らしい武器だな。」

「美しいだけではぁないのですよ。実用性も素晴らしいのでぇす。」


なるほど、異世界人が持ち込んだものだったのか。覚えのあるものを見つけたから思わず反応してしまった。

とりあえずジャステア君から受け取った刀を眺めてみる。

うーん。やっぱり私には少し長いし重いかな。

さやにしまって戻そうとしたけど、まさかのしまえないという事態。

腕の長さが足りないの!?ショック!!

さすがに扱えないのであきらめて、ジャステア君に戻してもらう。

ふと、刀が並んでいる一角に、一回り短くて細い刀がおいてあることに気が付いた。


「うん?こいつには反りがないな。ほかのと比べても短いし細い。」


私の視線に気が付いたジャステア君がそれを手に取り、さやから抜いた。


「なんだこれは。刃もさっきの鍛えられたものとは全然違うじゃないか。」


さやから出てきた刃は、まるで鉄板を打ち出して研いだだけのようなシンプルなものだった。


「そぉれは刀の一種のはずなのでぇすが、そのようにつくりが違うものなのでぇすよ。

どうも持ち込んだ人が違うようで、中途半端な知識で作られたものじゃないかと言われていまぁす」

「なんだ、失敗作ってことなのか?」


少し気になったのでジャステア君から受け取る。


「ジャステア君、ちょっと貸してください。」


ジャステア君から受け取ったその刀は、私でも抜くことができる長さだった。

さやの先端は、刀とは違い、尖らせた金具が固定されていて、さやの上部には長い紐がぐるぐると巻かれていた。

さらに鍔が四角になっていた。

やっぱりこれは……


「ボクこれにするよ。」

「ええ!?さっきの話を聞いていただろう?刀ならもっといいものが他にあるぞ?」

「お買い上げでぇすか?まあ、正直私としてもそれが売れるのならうれしぃのでぇすが?」

「普通の刀は僕だと抜けないしさ。どうせ腰に下げるだけだし、これくらいでいいよ。」


そこから店主相手に値下げを仕掛け、ほとんど捨て値で買うことができた。




「よかったのか?いくら安いと言ってもそんななまくら買わなくてもよかったんじゃ。」

「ふっふーん。実はボクはこの刀がほしかったから買ったんですよ。」

「?」


店から出た私の腰には、買ったばかりの忍者刀(・・・ )が収まっていた。


「面白いものが買えました!」

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