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後始末

私がオーガを倒した後、ほぼ同時に低ランク組がオーガの討伐に成功していた。

その後手の空いた私たちで後衛組を追っていたオーガを攻撃した。

挟み撃ちになった形のオーガはなすすべなく、二匹とも打ち取ることができた。

後は前衛組が抑えているオークとトロールだけだったけれど、そちらも私たちが合流したためにあっけなく打ち取られることになった。


今は倒した魔獣を集めて、素材になる部位を採っているところだった。


「おおい!シラユキ。」


私がトリモチで固めたオーガにとどめを刺してトリモチをはがす薬品をかけているところにバスターさんがやってきた。


「あ、バスターさんおつかれっさぁあぶなああい!!」


唐突なげんこつを体をそらしてよける。


「ちっ最近ますます当たらねぇ。」

「当たり前ですよ!当たったら痛いんですよ!?」

「それよりシラユキ、てめぇオーガ相手に無茶なことやったらしいじゃねえか。」


げ、そのことか。


「……ごめんなさい。素材になる角ふっとばしちゃいました。」

「ちげぇ!!」

「ひゃぁ!」


盛大な突っ込みとともに拳が振るわれる。まさか二回目が来るとは思っていなかったので危うく当たるところだった。


「オーガってのはベテランでもタイマンではやりあわねえくらい危険なやつだ。それをお前は一人で……」

「そっちですか!?でもあの時はそうしないとみんな崩れちゃうと思って……」

「……確かにそうだろうが、それでもお前だけがそんな無茶する必要はなかったはずだ。」


ううん、確かにそうなんだろうけど、実はこの場所には割と自然の力が多かったから、いざとなったら私の精霊魔法がつかえたんだよね。

でもそんなことバスターさんたちはわからないわけだし……


「……ごめんなさいです。」

「……おう」

「あの、ところで」

「……おう?」

「このオーガの素材、一体分だけでもボクにもらえないでしょうか。」

「はあ?いや確かにお前が一人で倒したんだからみんながいいといえば大丈夫だと思うが、原則パーティーで組んでる時の報酬は頭割りだぞ。」


確かにそうなんだけど……私には報酬額を増やしてもらわないといけない事情がある。


「実はボクの使った爆弾とトリモチなんですけど、一個づつ作るのにこれくらいかかってます。」


値段を紙に書いてバスターさんに渡す。

それを見たバスターさんはかなり苦い顔をした。


「そこそこの宿に飯付きで一泊できる値段だな。……しょうがねぇ。全体の報酬から経費で出してやるように掛け合ってみてやるよ。」

「いいんですか!?」

「まあ、お前のこれがなかったらもっと手こずっていたはずだからな。」


助かった。正直トリモチをポイポイ投げれていれば、今回だってオーガだけなら完封できたはずなんだ。

それをしなかった理由は、単純にその材料費が高いことが原因だ。

最初に爆弾を作ろうと、適当な素材に爆発の特性をつけようとしたら、つけた瞬間にはじけ飛んだ。

あの時は危うく指が吹き飛ぶところだった。

そこで、いろいろな素材の特性を見て回っているときに、カイロダケというキノコから≪空気に反応する≫

という特性を見つけ出した。

この妙なキノコは、普段は普通のキノコなんだけど、割った時にだけ名前の通りカイロのようにあったかくなるキノコだ。

名前を付けたのは多分異世界人だろう。

冬場に重宝しそうとか思ったけれど、このキノコはあったかい時期にしか生えていないらしい。

そんなものだから採取するうまみも特になく、食べられないから放置されていた。

だったら安く手に入るんじゃないかと思っていたんだけど、むしろ誰も集めていないものだったからどこにも在庫なんてなく、ほしいなら自分で探すか、ギルドに採取依頼を出すしかなかったのでお金がかかる。

しかもこれから寒くなるのでどんどん手に入りにくくなるから今のうちに大量に手に入れて、適当な素材に特性を移しておかないといけない。


そんなわけで最近の私は金欠なのだ。

……早くジャステア君に売れそうな道具を考えないと。

あと、細工物も作っておかないとなぁ。





その日の夜。討伐パーティーは町まで戻らずに、拠点にしていた場所にもう一度キャンプを張って一日休んでから帰還することになった。

すでにほとんどが寝入っていたが、数人は寝ずの番に出る必要があるので、今はたき火を囲んでバスター、ジャステア、マリンの三人と、もう一人ベテランの弓使いが出ていた。

ちなみにシラユキは昼間の一人での偵察があったために免除されていて、今はテントの一つで休んでいる。


「あいつ寝る時も仮面とフード取ってなかったよ」


ジャステアが少し不満げな顔でたき火のそばに腰かける。

さすがにちょっと仮面の下の素顔が見れるかと期待していたが、シラユキのガードは予想以上に気合が入っていた。


「寝にくいと思うんだけどね。……あのテントって男性用?」


マリンの一言にバスターとジャステアがぎくりとなる。そういえばシラユキはいまだに性別不詳だった。


「一応、あのテントで寝るのは俺の本来のパーティーメンバーどもだし、変なことは起こらんと思うが。」

「そういえば戻ってきてたんですね。バスターさんのパーティー」

「どこにいたと言っていたんだったかな。」

「闘技都市と呼ばれている国だ。あそこは武闘大会がさかんでな。賭け事も大いににぎわっているらしい。

くう、俺もタイミング悪くけがをしてなかったら行っておきたかったんだがなぁ。」


バスターには本来、いつも組んでいるパーティーメンバーがいたのだが、たまたま他の町へ出る依頼の直前にバスターが怪我を負っていけなくなり、しょうがなくほかのメンバーだけで依頼をこなしに行っていたらしい。

怪我はさっさと治ってしまったが、メンバーの方の依頼が長引いてなかなか戻ってこられず、一人でどうしようかと悩んでいたときにジャステアたちと出会ったのだった。


「それよりよぅ、ジャステア。何か思い詰めてるように見えるぜ。」

「ん?……ああ、そうかもしれないな。いや、ちょっと今日のあいつの活躍を見てね。」

「シラユキちゃんのこと?」


マリンはシラユキは女の子だと信じてやまない。

ほかの二人は何とも言えずに悶々としている。


「……まあね。俺たちが大勢で盾で抑え込んでチクチク長柄武器で倒したあのオーガを一人で二体も倒したんだ。しかもベテランの多い今回のメンバーの中で、斥候の役割を問題なくこなしてしまって。」

「なんだ、自分たちとの差にショックでも受けたか?」

「そうだな。正直シラユキは技術でも実力でも僕とは大きく離れている。」


割と素直に認めて見せるジャステアに、バスターとマリンは目を合わせて驚いた。


「なんだ、僕がシラユキに対抗心でも燃やしていると思ってるかい?」

「うーん、正直ジャステア君はそういうプライド高そうだと思ってたし。」


ここにきて歯にきぬ着せない言い方で踏み込むマリン。

あんまりな言い草に何故かバスターがおろおろと慌てる。


「お、おいマリン」

「大丈夫だバスター。……あんたから見て俺の実力ってどうだ?」

「う、ううんさすがにシラユキと比べると……なぁ

しかしあいつには狩人としての下済みと、錬金術っていう異能まである、ある意味特殊な奴だから、比べるのはどうかと思うぞ。」

「だよなぁ。」


ため息とともにうつむいてしまうジャステア。


「おいおい。お前はどうしちまったんだよ。お前はどっちかっていえば実力よりも結果を気にするタイプだっただろうに」

「……もしかして、次のランクアップのこと考えてる?」


マリンの質問にジャステアはゆっくりとうなずいた。


「今回の討伐が成功したってことは、俺たちがDランクに昇格する日は近いってことだ。」

「まあ、まだいくつかクリアしないといけない条件はあるがな。だが、確かにもう間近だろう」

「……そうなると多分、シラユキはこの国を出る。」

「! 確かにそんなことを言ってたね。」

「正直、僕は研修期間中、折角の縁で集まったこの三人でパーティーを組めるようになればいいなと漠然と考えていた。」

「ジャステア君……」

「マリンには聞いていなかったが、俺は最悪あいつに付き合って国外に出ることになっても問題ないと思っている。」

「私も……別にこの国にこだわるつもりはないよ。魔導書のためにいろいろなところでいろんな魔法を書き込むのが私の目的なんだし。」

「……まあ、それに関していえば俺からどうこう言うつもりはねえが。」

(折角育てたんだし、この国の冒険者として活動してほしいってのはあるがな。)


バスターは複雑な思いを飲み込んだ。


「だが、正直シラユキは俺たちのことを必要とはしていないだろう。

それどころかあいつなら一人の方が身軽に動けるはずだ。」

「……確かにそうだね。」

「それを考えると、俺の考えているパーティーのことは、あいつにとっては迷惑なことだろう。

おそらく面と向かって言ってくることはないだろうけどな。」

「「……」」

「だから、俺はしばらくこっちで実力をつけたいと思ってる。そのために……バスター、俺を一時的にパーティーに参加させてくれないか?」

「なぁ!?そう来るのかよ。」

「期間限定なんて都合がいいとは思ってるんだが、俺はこっちで実力をつけてからシラユキを追うつもりだ。」

「……マリン、お前はどう考えてるんだ?」

「私は……私も、三人でやってみたいって思ってる。それには自分の経験が足りないってことも。」

「……そうか」

「だから私もパーティーに入れてほしい。せめてあの子の足を引っ張らないように。」

「うーむ。俺の独断ですぐにってわけにはいかねぇが、まあいいだろう。面倒見てやろう」

「ああ、ありがとうバスター。確かシラユキは迷宮都市に行きたいと言っていた。

実力をつけて迷宮都市まで行ってやる!!」

「私もがんばるよ!!」


夜の闇が深まる中、たき火を囲むように三人は盛り上がっていた。

(もう一人いたはずの弓使いは、ちょっと居心地悪そうだった。)






そのたき火から少し離れたテントの中で横になって休んでいたシラユキは、


(ええええええええぇぇ!?)


性能のいいエルフ耳でしっかりと会話を聞いてしまっていた。


(いつの間にそんな有効度上がってたんだろう。いや、別にあの二人が友達じゃないっていうつもりはないけれど。)


彼女的には、最初から腰掛パーティーのつもりでいたので、あまり深く彼らとともにいるってことを考えていなかった。しかしあの2人から自分の予想以上に思われていたことに対して、


(ちょっと不意打ちだよー。どうしよう、喜んでいいのかなこれ。)


かなり混乱しているのだった。



「そう言えば、ほかの駆け出しどもからのあいつへの評価ってどんなもんなんだ?」

「そうだな、結構とっつきにくいと思われてる感じがするな。」

「あんなお面かぶっているうえに無口だしね。」

「しかもベテランに目をかけられている」

「あー」


(ええー)


ついでにちょっとショックも受けていた。

別にジャステアとフラグとかは立たないです。

あと、ちょっと見返してみると主人公思っていた以上に喋ってなかった。

ていうか会話が全体的に少なかった。

こりゃあ無口と思われるな

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