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それぞれの理由

少し忙しい日が続いたので間が空いてしまいました。

装備を強化してあげる約束をしてから、食事の準備を始める。

私は近場で狩り等で食料調達の係だ。

割と視野が開けているので森よりも獲物が見つかりやすい。

量はいらないので小動物を狙って狩ることにした。



特に問題もなくウサギのような小動物を三匹ほど仕留めて野営地に戻ってきた。

ジャステア君とマリンさんは料理の準備をしていた。

バスターさんが私が返ってきたのを見つけてこちらに寄ってきた。

そういえばこの小動物の名前知らないな。


「ウサギ?が取れました。私が捌きましょうか?」

「ホーンラビットだな。まああの二人は町育ちだし捌けないだろう。

今回はそこまでさせるつもりはないから半分づつ捌こうか。」


私の言葉遣いもなかなか崩れなくなってきた。

拳骨がすぐに飛んでくるからかなり気を付けていたのがよかったのかもしれない。

でも痛かったから感謝なんてしてあげない。


二人がかりでホーンラビットとやらを捌いていく。

今日はこいつを使ったスープを作ることになった。


「保存食があるとはいえ、狩りをして節約できるならした方がいい。

何があって食料が足りなくなるかわからないからな。」


バスターさんが二人に旅の心得を説いている。すでに私には説明する必要ががないと思っているようだ。

まあ、森の生活なんてほとんどサバイバルみたいなものだったからなあ。

特に狩りで数日出ているときなんか。


さて、スープの具材が揃って煮込み始めたところで、驚きの事実が判明した。

誰も料理ができない。

バスターさんはまさに男の料理といった感じで、塩のみのスープで行こうとしていたらしいし、

ジャステア君はお坊ちゃんなので料理なんて経験がない。

マリンさんも、魔法にかまけていたらしく料理はあまりやったことがないらしい。

本人曰く、昔料理した時に


「なんかすっごい泡立ったことがあるんだよね。何だったんだろあれ。すごく眼が痛くなったんだ~」


とか言ってた。何それ怖っ!


この中で一番ましなのが私だった。

一応村では狩りの後とかに、村のみんなで獲物を調理して食べたりしていて、その時に料理の手伝いとかをしたことがあった。

とはいっても大人数向けの大雑把な料理だから、あんまり期待されても困る。

幸い、このあたりには料理に使えそうなハーブとかの植物が多いし、保存食には塩味とか香辛料がソコソコ使われているので、それらを使えば味付けはどうにかなりそうだった。


この世界の食糧事情は、元の世界ほど豊かではないけれど、転移者が多い影響かなかなか発達していた。

香辛料も値段はそこそこで手に入るし、塩も貴重ではない。

いろんな料理が転移者によって持ち込まれていたから味もかなりまともなものが多い。

さすがに地域によっては手に入らないものも多いけれど。

逆に異世界ならではといった、見たことのない食材も多く、どう料理すればいいのかわからないものが多い。

多分料理人が転移してきてもかなり苦労することになりそうだね。


私は味付けだけなら自信がある。

向こうの世界で、私の母はかなり料理べただった。

味覚がずれているのか、食材がまともでも妙な味の料理になることが多く、しょうがなく味付けだけを誰かにやってもらうことが多かった。

私は小学生だった時に、一番家にいる時間が多かったからよく母の料理の味付け係をやっていた時期がある。

私の家庭の味はおふくろの味じゃなくて自分の味だ。


そんなこんなで何とかスープをおいしく味付けすることに成功した。

ほとんど私一人で仕上げた気がする。

これを保存のために固く焼いたパンと一緒に食べるんだ。




「じゃあ、食べようか。」

シラユキが何とか料理が出来たために、塩スープなんてことにはならなそうだなとバスターは安心した。

しかし、シラユキがそのあたりから集めてきた雑草などを細かくちぎって鍋に放り込み始めたのはおどろいた。

シラユキが言うには、はーぶ?とか言うものらしいけれど、料理をしないものからしたら雑草と見分けがつかない。

匂いはいいので味は期待出来そうだった。

全員がスープを受け取り、パンを取り出して食事を始めようかとしたときにふと気が付く。


仮面をしたままでは食事はできない。


ふと顔を上げると、ちょうどジャステアとマリンの二人と同時に目があった。

なんとなく三人でアイコンタクト。

不自然にならないように食事を始めるふりをしながらさりげなく三人でシラユキの方を盗み見る。


「いっただっきまーす♪」


シラユキは、異世界人が持ち込んだと言われている文化の一つの食前の挨拶とともに料理を手に取る。

そしてその手を仮面に伸ばして……

そのまま仮面を……外し……うん?


ぱこんっ


そんな軽い感じの音とともに仮面の下半分だけが割れて外れた。

そしてそのまま食事を始める。

どことなくシラユキの口元はどや顔をしているようにも見えた。

もしかしなくてもこちらが盗み見ようとしたことはばれていたようだ。

バスターたち三人は顔を寄せ合い、声を潜めて話をする。


(なんだよあれ。仮面別れるようになっているじゃないか。)

(えー……でもあれ、目元はわからないけど、亜人の特徴は見当たらないね。)

(なら、あの腕輪はイミテーションっていうことなのか?)

(本人は隠せているつもりのようだが、鼻筋とか口元とかで割と顔つきってわかるものだな。)

(目元以外ほとんど見えてるようなものだよね。)

(もしかしなくてもかなり美少年じゃ?)

(ううん。それよりも肌ものすごく白くてきめ細かいよ。女の子みたい。)

(子供だからじゃないのか?)

(子供でも多少違いはありますよ。)

(じゃあ女の子?無理して声を低く出してるとか?)

(さっき見せてもらった錬金術の感じだと、結構何でもありみたいだし。声とかは割とあてにならないかもしれないぞ。)




私の目の前で三人がひそひそ話し出した。

ふふふ。私の素顔が見られると思ったんだろうけれど、ちゃんと対策はしてあったのだよ。

耳を済ませれば声くらいは聴きとれるだろうけれど、口元がニヤついて盗み聞きがばれるのも嫌だから放置する。

まあ、あからさまに隠されている顔を見てみたいっていう気持ちはわかるから三人を責めるつもりはないけどね。


まさか自分が思っているほど顔を隠せていないなどと思いもしないシラユキはどや顔を崩すことなく食事を続けるのであった。




食事を初めて少し経った頃、バスターさんが話題を振ってきた。


「お前らはなんで冒険者になろうと思ったんだ?」


(ありゃ、ジャステア君ともめたからそのあたりは聞いてこないものだと思ってたんだけど。)


確かこの講習の始まりはジャステア君とバスターさんのもめごとが原因だった。

割と今までいさかいが蒸し返されることもなかったので放置していたが、そういえば結局そのあたりの話はされていなかった。


「俺は普通に生活のために冒険者を始めたんだが、お前ら三人とも冒険者じゃなきゃダメって感じじゃない気がしてな。どうにも気になっちまってよ。」


別に隠すことじゃないと思ったので自分の目的を話すことにする。


「ボクは……家族とはぐれちゃったんだ。

事故に巻き込まれて、どこの国にみんながいるかすらわからないんだ。

だから情報が集まりやすいっていう迷宮都市を目指したいんだけど、そのために国家間の通行許可がほしくて……」


通行許可がほしくて冒険者というのは割とある話らしい。

三人は同情的な視線を送ってきたけれど、それ以上は聞かれたくないと態度で示したらそれ以上質問してくることはなかった。


次はマリンさんが話し始める。


「実は私の家系は代々魔法で生計を立ててきたんですけれど、私たちには本来魔法の才能はなかったんです。」


どういうことなのかわからないと私たちが顔を見合わせていると、マリンさんがいつも持ち歩いている本を私たちの前までもってきた。


「この本は、実は特殊魔道具の一種なんです。

ある魔法使いの魔獣を倒した時に生まれたもので、効果は≪魔法を記録する≫ことです」


特殊魔道具。

普通の魔道具とは違い、高位の魔獣を倒した時に、稀に魔道具へと変化することがある。

これらは意思を持っており、認められたものにしか扱えない。


「私たちの一族は魔力だけは多くあったのですが、魔法の才能がなかったためにその魔力を無駄にしていました。

しかし、この魔道具は記録した魔法のページに魔力を注ぎ込むだけで、才能がなくても記録した魔法が使えるという特徴があったのです。

この魔道具のおかげで私たちの一族は千の魔法を使える魔法使いとして有名になりました。

その代わりにこの魔道具はたくさんの魔法を記録させることを要求してきたのです。」


そのためには冒険者になっていろんな魔法に触れる機会が多いほうが都合がいいということらしい。

それよりも……


「ねえ、その本を持ったらボクでも魔法が使えたりするの?」


やっぱり普通の魔法も使ってみたい。


「一応、この本の求める条件に合いさえすれば使えるはずだけれど、すでにこの本は私を持ち主だと認めているから使えないと思うよ。」


そう言いながらマリンさんは私に本を渡してくる。

そっかー残念だな。と、思いながら本をペラペラめくってみる。なるほどページごとに魔法陣とか魔法の理論らしいこととかが書いてあった。あれ?開けないページが多いな。


「え!?」


うわ!!

急にマリンさんが驚いた声を出したのでこっちまで驚いてしまった。

何かまずいことでもやってしまっただろうか。


「それ、持ち主以外は開けないはずなのに……もしかして持ち主移っちゃった!?」


慌ててマリンさんが本を私から取り上げ、本をペラペラめくっていく。


「う~ん……いつもと同じだ。なんでシラユキちゃ……くんが開けられたんだろ。」


今何か言いかけましたか!?

マリンさんがもう一度本を私に預ける。

やっぱり開けれるみたいだね。


「ちょっと試しに魔力を注いでみれる?もしかしたらシラユキ君、”繋ぐ者”なのかも」


急に魔力とか言われても困る。あと繋ぐ者ってなんだろ?

本に集中してみると、なんだか本が私の中の何かを引きずり出そうとしているような感覚があった。

あれ?もしかして発動しようとしてる?

私は何もするつもりがなかったはずなのに、もしかして持ち主のマリンさんが望んだから発動しようとしてるのかな?


「ま、まままマリンさん。これどうすれば」


私がアワアワしていると、横に座っていたジャステア君が私の体ごと持ち上げて、クリンと誰もいない方向へ回した。

その瞬間本から氷の槍が飛び出し、目の前にあった大きめの岩を抉ってはじけ飛んだ。


「危ないな。思わずシラユキをあっちに向けたけど、そのままだったら目の前の鍋が吹っ飛んでたぞ。」

(あとシラユキえらく軽いな)


「いや、俺が目の前にいたんだが。鍋よりも俺の心配するべきじゃないのか?」


危うく串刺しになりかけたバスターさんが渋い顔で文句を言う。

まあ、彼ならとっさに目の前の鍋で防ぐくらいできただろうけど。

あれ?結局鍋が吹っ飛ぶのか。


「やっぱり。シラユキ君は繋ぐ者みたいだね。」

「ああ、そういえば僕も聞いたことがあるな。」


ジャステア君が何か思い当たることがあるらしい。

でもそろそろ私を下してくれてもいいと思うんだ。

私はまだ腕の下あたりから持ち上げられているままだ。


要するに繋ぐ者というのは、持ち主に選ばれなくてもある程度特殊魔道具を使える人のことらしい。

特殊魔道具が持ち主を選ぶといっても、待っているだけではいつ適合者が現れるかわからない。

だから繋ぐ者に一時的に所有してもらって、適合者の元まで運んでもらうための仮宿とするそうだ。


つまり私はどんな魔道具でもある程度使いこなせる特殊体質!!

ちょっとラッキーな存在らしい。

まあ、本来の持ち主に出会ったら強制的にそちらに渡って行ってしまうので、あくまで運ぶだけらしいけれど。

あと、私を持ち主と認めてくれる特殊魔道具もちゃんとあるかもしれないらしい。

折角ならそういうものを探すのもいいかもしれないね。

始めて魔法も使うことが出来たし、さっき無理やり魔力を吸い出されたおかげで、なんとなく自分の魔力を感じることができるようになった気がする。



「だいぶ話がそれたけれど、最後は僕の理由だね。」


すっかり忘れかけていたジャステア君の話が始まった。

なんだかもう、魔法を使えたことに興奮してしまって、おなかいっぱいな感じだ。

もう寝てもいいかな。


「僕はこのフェリウスの国のとある貴族の五男として生まれた。」


語りだしました。それよりいい加減私を降ろしてくれてもいいんですよ?


「後継ぎとしても、予備としても兄たちがいるために期待されていないであろう僕は、それだったら自分の夢をかなえようと冒険者を目指すことにしたのさ。」


ジャステア君がやっと私を抱えたままだということを思い出したようで、脇に降ろした後、自分の荷物から何かを取り出した。


「まずはこれを見てほしい。」


ジャステア君が広げたのは、向こうの世界でも見たことがあるトレーディングカードに似た、人物の絵などが描かれているカードだった。

書かれているのは……この世界の冒険者?


「お、それはヒーローズカードだな。」


バスターさんが知っているみたいでカードを覗き込みながら注釈を入れた。

私とマリンさんはついていけてなかった。


「たしか、最初はギルドで用意されている魔獣図鑑とか、周辺の生息域一覧とかを誰もちゃんと見なかったからって、有名な絵描きにかっこいい挿絵を描かせたことが始まりだったらしい。」

「その挿絵の出来が良かったことから、その絵を欲しがる奴が増えたんだったよな。」

「そう。それでギルドが絵だけを描いたカードを個別で売り出すことにした。それに説明書きをつけることである程度その魔獣の知識を知る冒険者が増えることを願ってね。」

「冒険者以外も欲しがってなぁ。ある日、カードを持った子供がごっこ遊びにカードを使って戦わせてたのを職員が見て、異世界人から聞いたトレカとやらを思い出したんだ。そして思い至った。これは売れると」

「そうして作られたのが対戦型トレーディングカードゲーム”魔獣の巣( モンスターズネスト)

モンスターが描かれたカードを集めて自分だけのネストデッキを作って対戦するっていうカードが出来上がった。」

「しかし、最初の目的である魔獣に対する知識を広めるっていうコンセプトを考えると、異世界人の言ってたようなレアカードみたいに手に入りにくいカードを作ることはできなかったらしい。」

「モンスターカードは生息地域ごとにパックとして売り出されたため、ほしいカードも手に入りやすく自分だけのデッキを組んでも真似されやすかった」

「ギルドとしてももっと売れるようにしたかったが、モンスターカードでは制限が多かった。そこでギルドが思いついたのが」

「「ヒーローズカード」」


二人がなぜか交互に語っていく。生きぴったりだね二人とも。

私たちは目を白黒させながら利く羽目になっている。

男の子はこういうのにはまるっていうのは兄を見ていたので知っている。

とはいえカードを見せてもらうと、確かにかっこいい感じで集めたくなるのはわかる。


「ギルドに登録している冒険者の中でも、特に有名な者や実力者をカードにして売り出すことにしたんだ。

「これが大ヒットでな。今や有名冒険者は子供たちのヒーローになっているんだ。」


ここまで聞かされたら、さすがにジャステア君の夢とやらは見当がついた。


「そう!!僕の夢はいつか高ランク冒険者になってヒーローズカードが作られるようになることだ。」


ジャステア君が初めて見せるテンションで高らかに宣言する。


「よく言ったジャステア!!そのでっけえ夢をかなえるために、俺も協力してやろう!!」


バスターさんもテンションが上がってきた。

それと引き換えにそろそろ眠くなってきた私たち。

別に聞かなくてよかったかもしれない。

ちょうどいいから夜の見張りは男性陣が先でいいよね。

語り合う二人をしり目に、私とマリンさんは食べ終わった夕食を片付けて寝る準備を始める。

一応交代の時間になったら起こすように伝えて簡易寝袋にくるまってさっさと寝ることにした。




そのまま私たちは起こされることもなく朝を迎えた。

少し驚いて起きると、昨日と同じ場所でジャステア君とバスターさんが二人でカードで遊んでいた。

もしかして徹夜でやってたの?

私たちは眠そうな二人とともに野営訓練も終えて片付けに入ったのだった。

使うかもわからないカードゲームの設定なんか考えてしまった。

こういう架空のゲーム考えるのって楽しいんですよね。

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