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野営準備

ジャステア君が自信満々に摸擬戦を仕掛けてきた。

どうやら私に勝てるような魔道具の使い方を見つけたらしい。

ジャステア君との摸擬戦のルールは、強力な魔剣を持っていることを考え、摸擬剣での一撃を受けた時点でこちらの負けというようになっている。

かなりジャステア君が有利だけど、そのルールでもいまだに私に勝ててはいない。


「今回はこいつを使わせてもらおう。」


ジャステア君が用意していたのはヘッドギアのような魔道具だった。

どうやら反応速度に補正がかかるものらしい。

私の攻撃をある程度見切れるようになっていた。


「はっ!!せい!!よっと。」

「くぅ!!ふんっ!!はぁ!!」


私が繰り出す攻撃を紙一重でかわしていくジャステア君。

構わずに攻撃を続ける。


「うわっと。あれっ、なんだか、あんまり、よくはない?」


切れ目のない私の攻撃に、ジャステア君は少しづつ対応が出来なくなってきた。

紙一重でよけるのはいいんだけれど、そういうのはカウンターに合わせてこその技術だと思うよ。

私だってここぞってとき以外は普通によけてるんだしね。


動き続けて、スタミナが落ちたころから少しづつこちらの攻撃が当たるようになってきた。

何度か切りつけていたらバスターさんからストップがかかる。


「そこまでだ。ジャステア、紙一重でよけるのを基準にしてると、けがをしたり体力が残っていないときに普通道理に動けなくて避けられなくなるぞ。普通に大きくよけるようにしとけ。」


今日の摸擬戦はここまでだね。

ジャステア君にアドバイスをしながら、今度は野営の訓練に移る。

あと、マリンさんの訓練は、残念ながら私もバスターさんも魔法使いの立ち回りが分からないのでできなかった。




安全な場所を見つけ、野営の準備に移る。

それぞれにバスターさんが指示を出して、準備を進める。


「屋根のないところで寝るのか。」


さすがにお坊ちゃんのジャステア君は、野営初体験らしく少し戸惑っていた。


「お風呂にどうにかして入れないでしょうかね?」


マリンさんまで微妙にずれたことを言っている。

この人も初体験みたいだね。

森の中ならお風呂とまでは言わないけれど、水浴びくらいさせてあげれるんだけれどね。

さすがにここでは強力な精霊魔法は使えないので体を拭くくらいで我慢してね。


「ところでシラユキ、マキの用意がいらないと言っていたが……?」

「ああ、はい。これを使おうかと。」


荷物から出したのは篝火石。

一人で旅をしていた時にも結構役に立っていたものだ。

それを石をへこませてすり鉢状にした真ん中に置いて起動。

そこそこのたき火並みの炎が上がる。


「なんだこれは!!ただの石に見えたが魔道具なのか?」

「ふふふ。いいえ、これは錬金術で作られているものなのです。」


そう、この篝火石はロンドが残したもので、錬金術で作り出されたものだったのだ!!

魔道具屋を見て回った時に、同じものが見当たらなくて不思議に思っていたのだけれど、

どうやらロンドさんからもらったものは大体錬金術で作られていたもののようだった。

もしかしたら魔獣に食い破られたあのかばんもそうだったのかもしれないと思うと残念だな。


魔道具とは、素材を加工し魔法が乗りやすい形に加工したものに、魔法陣などの発動体を込めることで完成する。

一方、錬金道具は素材そのものに特性を付与することが可能なため、見た目は素材そのままに作ることができる。

要するに見た目だけじゃ錬金道具だということはわからないものなのだ。

私も気が付いたのは最近だったけれど。

篝火石も見た目はただの石ころでしかない。


「はあ?錬金術?」


バスターさんが素っ頓狂な声を上げる。


「シラユキ君、錬金術っていうのはね」

「詐欺師ばっかりだっていうんですよね。でも私はちゃんとした錬金術が使えるのです。」


マリンさんが私に錬金術師について忠告しようとしています。

巷での噂のこともあるので、心配してくれているのかな。


「その技術っていうのは、誰から教わったんだ?」

「ええと、技術そのものを錬金術で封じたものを継承したんです。」


そのあたりは自分でもよく分かって無いけど。

案の定三人は疑わしそうな目でこちらを見てくる。


「シラユキ、詐欺師に騙されてるんじゃないのか?」

「教えてくれる代わりにお金とか取られたんじゃ……」

「でもよぅ。この石はほんとに見たことがねぇものだぞ。」

「ほんとですよぅ。」


やっぱり簡単には信じてもらえないみたい。

ここはひとつ、実際に何か作って見せましょう!!




少し考えて、魔法薬屋で買ったものを付与することにした。

用意するのは暗視薬。暗闇でも見通すことのできるようになる薬だ。

これを……そうだなぁ

お面の上側に付与してみよう。

アイテムポーチにしまい込んでいるお面のうちのひとつ、フクロウをかたどったお面を取り出す。

暗視薬から≪暗視≫特性を取り出して、お面に付与する。

目の前で行われる作業に三人は興味深々で覗き込んできていた。


「これで、このお面には暗いところでもよく見える力が宿りました。」

「見た目は何も変わってないけれど……」

「ちょうどあたりも暗くなってきたころですし、だれか付けてみてもらえません?」


代表してマリンさんがつけてくれる。


「あ、すごい。よく見える」


どうやらちゃんと成功しているようだね。

三人が代わる代わるつけてみて、効果を確かめている。


「なるほど、明るいな。」

「確かにすげえな。」

「だけど、これ 朝になっても暗視薬の効果のままなの?」


あ、そうだね。効果が永続だとつけっぱなしができないかな。

木の板の端切れを三枚ほど取り出し、適当な細工をつけて重ね合わせる。

私の手元を除いていたマリンさんも興味津々のようです。


「何作ってるの?」

「ふふーん、これはスイッチです。」

「すいっち?」


完成したスイッチは、中央の板から伸びる取っ手をスライドさせると、一枚目の板に開けた穴から見える模様が切り替わるといった簡単な細工をつけただけのものだ。

これの特性を取り出してみると、


「あった。≪切り替える≫特性。」


私みたいに小器用に道具を作れる人からすると、錬金術に必要な特性をでっちあげることが可能だ。

ロンドの部屋にあった実験道具みたいなものも、そのために置いてあったのだろう。


取り出した特性を、さっきのお面にもう一度付与する。

錬金術は、特性を抜き取るとその物は失われてしまうけれど、付与することに関しては上限はないみたい。

さすがにその特性を入れることに無茶がありそうな物ははじかれるときもたまにあるけれど。

(ゴミに≪価値のある≫特性をつけようとしたり)


「これでこのお面には≪暗視≫に≪切り替える≫特性が付きました。」

「なるほど……いやこれはすごいな。」

「錬金術なんて眉唾だと思ってたよ。」

「がはは!!すげえじゃねえかシラユキ。」


どうやら信じてもらえたようだね。

ただ、問題として、私には暗視のための技を持っているから使うかどうかわからないということ。

まあ 私の暗視は精霊魔法なので、力を節約できるからこっちを使う価値はあるだろう。


「あ、じゃあこれを付与することもできるのか?」


ジャステア君が筒のような魔道具を渡してきます。


「これ何?」

「望遠鏡だ。道具屋で買っておいたんだが、次の店でさらに性能のいいものをみつけてしまってね。」


いらないからくれるらしい。

折角なので付与……の前に構造を見てみる。

なるほど、これなら自作できそうだね。

改めてお面に付与する。

付けてみると暗視、望遠、同時発動のモードにそれぞれ切り替えができるようになっていた。


「この魔道具なら売ればかなりの値段になるんじゃないのか?」

「まあ、デザインがかわいすぎて俺は付ける気にならねぇがな。」


男勢が早速意地汚い話を始めました。

ジャステア君、一番のお金持ちのくせに一番最初にお金稼ぎに結び付けてきたね。


「まだこれで稼ぐつもりはないですよ。私しか作れないから面倒なことになりそうですしね。」


でも仲間に錬金術で強化してあげるくらいならやってあげてもいいかも。

何か考えておこう。

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