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摸擬戦

場所を移動して、国の結界範囲の近くまで戻ってきました。

結界の近くは強い魔獣は近寄ってこないので多少安全に訓練ができます。


今バスターさんと私が摸擬戦をしています。

バスターさんの武器はこん棒と盾、場合によって腰のナイフも使うみたいです。

今は、こん棒の代わりに布を巻いた棒を使っています。

私も、棒に色つきのインクをつけたものを武器として構えます。


「さあ、お前ら まずは今回のメンツの中で一番やれるシラユキと俺の摸擬戦だ。

どう動いているのかよく見ておけよ。」


バスターさんの合図で摸擬戦が始まりました。

魔獣相手が多いとはいえ、私も対人の基礎ぐらいは教わっています。


まずは小手調べ。

ナイフ代わりの小石を二つ、バスターさんに向けて投げます。

バスターさんは盾では受けずにステップで横にかわします。

同時に走りこんでいた私はバスターさんの盾の方向から回り込んでナイフ(棒)での一撃を狙いましたが、


「っ!!」


私の位置をきちんと把握していたバスターさんのシールドバッシュで一度下がらされてしまいます。

すかさずバスターさんがこん棒を振りかぶり、一撃を狙ってきました。

もう一度大きく下がって距離を取ります。

盾を構えた時にできる死角を利用して仕掛けようとしましたが、最初の投石にもひるまずこちらの動きを見ていたバスターさんに防がれてしまいました。


距離を取った直後にもう一度反転してバスターさんに肉薄していきます。


「むお!?」


こちらの立て直しが思ったより早かったためか、バスターさんが少し焦ったように盾を構えなおしてナイフ(棒)を受けます。

私はそのまま盾に張り付いてからグルンと体を回転させました。

盾の表面を転がるように、さらに地を這うように体制を低くしながら、盾の内側にもぐりこんで跳ね上げるような一撃をバスターさんめがけて放ちます。


「ぐっ!!あめぇ!!」


とっさに私の動きに合わせて膝で迎撃してきます。

体が伸びきっていたのでかわすことはできませんが、軽さを利用してふんわりと膝をうけてはじかれました。

そのまま少し離れたところに着地。


「っふう」


膝を受ける時に詰めていた息を吐き出します。

うまく受けられたようでダメージはありません。


ナイフ使いにとって盾は有利でもあり、不利でもあると思います。

盾を完璧にこちらの攻撃に合わせられると攻撃は通りませんが、

武器の小ささをりようして、相手の盾にこちらから隠れることができます。

相手がこちらの動きを見えないというのはかなり有利なんですが、バスターさんは私の動きを見失わないように動き、盾で相手の攻撃を封じてからこん棒で強力な一撃を入れるといった戦法を使ってきます。

さらに体術もうまいのでなかなか張り付いて攻撃するのは難しいですね。


小石を投げてけん制しつつ隙を伺います。

バスターさんは安易に盾で受けて視界を遮ることはせず、うまくステップでよけながらこちらを見失わないように動いています。


バスターさんはタンク役が得意なスタイルなようです。

あちらから攻めてくることはないのですが、こちらの攻撃もなかなか通せなさそうですね。




一方バスターもシラユキとの攻防で焦っていた。


(まずいな。)


先ほどからの小石のけん制のせいで、こちらから仕掛けることができない。

だがシラユキの方は少しでも気を抜くと恐ろしい速さで迫ってきて、盾の内側に潜り込まれると台風のように暴れられてしまう。

先ほどはとっさの迎撃がうまく決まったが、シラユキの持っているのが本物のナイフだった場合、間違いなく先に足の健などの弱点を狙われていただろう。

そうなっていたらすでにこの勝負は自分がまけている。


シラユキの機動力はとんでもなく、さっきから小石を投げながらも自分の周りを素早く動いてこちらの視線を外そうとしている。

おそらく一瞬でもシラユキを見失えば負けてしまうだろう。

それだけシラユキの動きは超人的だった。


(冒険者としては駆け出しだが、ナイフ使いとしては超のつく一流だな。)


と、そこでシラユキが動いた。

こちらの隙を伺うことをやめ、先ほどのように盾に張り付こうとこちらに迫ってきたのだ。


(さっきみたいにうまくはいかねえぞ!!)


バスターも勝負に出ることにした。

体に盾を密着させ、迫るシラユキに対して盾ごと体当たりを仕掛けたのだ。

まさにぶつかるといったその瞬間、シラユキはポーンと上空に飛んでよけた。


「予想通りだっっぞ!!」


空中で身動きが取れないシラユキに対して、体当たりの体制から体をひねるようにしてこん棒を振るう。


(とらえた!!)


勝利を確信した瞬間、シラユキは空中で体をねじるようにこん棒をかわして見せた。


「なんじゃそりゃ!!猫かお前は!!」


そういえば今は猫のお面をつけていた。(多分関係ないが)

そのままシラユキは片方のナイフ(棒)を空中からバスターに向けて投げつけた。

もともと少し無理な体制でこん棒を振り切ってしまっていたバスターは、それをよけることが出来ずに

盾を持っている左の肩にナイフ(棒)がぶつかる。

バスターの肩にナイフの赤いインクが付いた。実際なら左肩にナイフが突き刺さっていたことだろう。

摸擬戦だが、左手はもう使えないと判断し盾を手放す。

シラユキ相手にこん棒のみで戦うのは絶対に不利だ。しかしシラユキの方もナイフを片方失っている。

そのシラユキは空中で体をひねった上にナイフまで投げていたにもかかわらず、きれいに着地してみせる。

そして着地したその瞬間にはこちらに向かって跳ねるように飛びついてきた。とんでもなく強い足首だ。


(ここで決めねえと負ける!!)


そう判断したバスターはこん棒をコンパクトに構え、できるだけシラユキから見える体の面積を小さくするように待ち構える。

そしてシラユキに向かってこん棒で突きを繰り出した。

こん棒はシラユキから見て一直線になるようにきれいに突き出されていて、正面から見ると距離が分かりづらい。

そんな攻撃に対し、シラユキは

首をかしげるような動作だけでよけて見せた。


(そんな紙一重の回避をこの状況でできるのかよ!!)


しかもいつの間に投げられたのかシラユキの投げた小石がバスターの眉間に当たった。

思わずひるんだ直後、シラユキのナイフ(棒)がバスターの首に当たる。


「っ!!勝負ありか……」


こうして摸擬戦の結果はシラユキの勝利だった。





そしてそれを見守っていたジャステアとマリンは、


(な!?なんだ今のは。冒険者っていうのはあれくらいのことができるものなのか?)

「うわーバスターさんもすごかったけれど、シラユキ君がめちゃくちゃ速いねぇ。」


せいぜい剣の指南役との摸擬戦と同じ程度に考えていたジャステアは、めまぐるしく動く状況についていけなかったことに気が付き、後方からの魔法でどうにかできる自信のあったマリンは、シラユキの動きを見てもしも前衛の壁役がシラユキほどの実力者を止められなかった場合、自分では対応する間もなくやられるだろうことに焦りを覚えていた。


(これが実践を前提にした者たちの戦い方なのか。いや、この間買ったこの魔道具があれば……)





「ふう。魔獣相手とは少し勝手が違ったけど、対人戦もなかなかいい訓練、です。」


結果に満足そうなシラユキに対して、負けてしまった方のバスターは苦い顔をしていた。


「最後のあれで勝負が決まったと思ってたんだがな。」


バスターさんが自分の膝を指さした。

そこには膝から腿に駆けてインクが二本のラインを描いています。


「終わってから気が付いたが、シラユキの野郎俺の膝蹴りを受けた時にしっかりひっかけて行ってやがったな。実践だったらその時点で足が使えなくなってて負けてたはずだ。」

「ふふふ。ナイフ使いに格闘を仕掛ける時はナイフがどこを向いているのか気を付けないといけないです。」


実は蹴り飛ばされるときにすでに致命的な攻撃を充てることには成功していたんですよね。

訓練なのでそのまま続行したけれど、実践ならそこで勝ちが決まっていたでしょう。


「今回の講習は冒険者としての基礎的なことを教えるためのものだが、シラユキに関しては戦闘の指導は必要ないな。……というかシラユキにも教える方にまわってもらおうか。」

「構わないですよ。ボクもいろんな人とやれるのはいい経験です。」


というわけで次はジャステア君との摸擬戦です。

ジャステア君のスタイルは、騎士としての訓練から来る剣士スタイルです。

今は盾も一緒に装備しています。

正直実践向きの剣術ではなさそうですが、基礎の動きを教えればそれなりに戦えるでしょう。

そもそもが魔道具や魔剣での攻撃力に頼った戦闘を想定していたので、当てられさえすれば問題ないでしょう。

魔道具の使用も許可していますが、さすがに殺傷能力のありそうな魔道具は自重してもらいます。

いろんな魔道具を使いながら、自分のスタイルを作り上げてほしいです。


「じゃあ、始め!!」


バスターさんの合図と同時にジャステア君へ向かって飛び出します。

ジャステア君は私の速さには反応できていませんが、盾を構えてこちらの攻撃を防ぐつもりのようです。

しかしバスターさんと違って、完全にこちらを見失ってしまっています。

おそらく先ほど見ただけではバスターさんが行っていた駆け引きまでは理解できなかったのでしょう。

そのまま私は盾の死角の中から背後へ回り、ジャステア君の背中に一本線をつけてやりました。


「え!?なんだ!いつの間に。」


ようやくこちらに気が付いたジャステア君ですが、すでに一度勝負がついてます。

バスターさんが止めないので続行ですが。


「く!!この!」


摸擬剣でこちらを切りつけてきますが、振りぬいたあとに隙が生まれました。

足で横から剣の腹を押さえつけてから、今度は胸のあたりにナイフを突きつけます。

スタンプのようにジャステア君の胸の上にインクが付きました。


「いまのジャステア君の実力じゃ普通にやっててもボクには当てられないよ。

折角なんだから魔道具とか使ってみなよ。」

「ぐ……しかし自分より年下の子供に勝てないなんて……」


そんなこと言ってもしょうがないでしょう。

冒険者になった以上今更訓練やり直している暇はないのですから、今持っているものを使って戦えるようになるしかないのです。


その後も私やバスターさんと交代しながら摸擬戦をくりかえし、ジャステア君が持っている魔道具を使いこなせるように訓練を繰り返していきました。

ちょっと次回から主人公の文章内での口調を変えてみようと思います。

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