お面屋さん
活動報告に、今のところ考えているざっくりとした設定を載せました。
本編で説明しきれるかわからないのでまとめて書いています。
とはいえ本編にまだ出てきていない要素も書いているので見る方はネタバレ注意です。
「ほう、こいつはからくり師ドドロの作品だな。」
今私は商業通りの店の一つに来ている。
鑑定師さんが持っているのは荒くれたちから奪った小型のクロスボウのような機械だった。
自分で使ってみようかと思って拾ってきたのだけれど、あまり威力がなかったのでもっといいものを探しに来た。
でもどこを探しても似たようなギミック付きの道具は売っていなかった。
もしかしてこういう機構の者は珍しいのかと思って鑑定してもらっているところだ。
「からくり師ドドロ?いいものなの?」
今私の声は、変声薬という飴のような薬をなめることで少年のようになっていた。
この薬は王都の魔法薬専門店で見つけた。好きな声を選べるらしく、一度だみ声のおじさん声で人に話しかけたら目を白黒させて驚いていた。くふふっ
「何とも言えねえな。ドドロはとにかくからくりが好きらしくてな、面白い仕掛け道具をいろいろ作っていたんだが、
使えるものもあれば微妙なものも多かった。詳しくはねぇが、よいものだとかなりの高値で取引されるらしい」
「じゃあこれは?」
「矢を打ち出すクロスボウを、これだけ小さく携帯できるような仕掛けはいいと思うが、威力が弱すぎるな
とりあえず仕掛けを作ってみて実用性は考えてなかったってパターンみたいだな。」
それでも毒でも塗って当てることが出来ればかなり有効だろうけど、私は投げナイフの方が当てられるからなぁ。
売ってしまうことも考えたけれど、折角なので後で分解して自分で何か似たようなものを作るのもいいかもしれない。
エルフ仕込みの細工の腕があれば何か作れるかもしれないからね。
仕込みクロスボウを売る代わりに、店でいくつか作っておいた細工物をお金に換えて宿に戻ることにした。
宿はさすがに変えていて、今は”小人の腰掛亭”に泊まっている。
この宿には特殊なルールがあり、『腕輪をつけているお客様は割引』となっている。
つまり亜人隠しの腕輪をつけていると安く泊まれるのだ。
とはいえ、亜人だけが対象ではなく、人族でも腕輪のレプリカをつけていれば割引対象だ。
似たような施設はあちこちにあって、腕輪をつけているとお得になるという店などはいくつかある。
腕輪をつけていると、亜人だということが腕輪の有無でわかってしまって差別が無くならないかもと思った例の勇者が作った制度で、この制度のおかげで『腕輪をつけている人族』が一定数存在することになるため、安易に腕輪=亜人と判断できなくなった。
そして、面白いことに最近では、逆に亜人の特徴をつけられる亜人変化の腕輪というものが流行っていたりする。
腕輪自体は、変身したい種族の髪の毛などの体の一部があれば専用施設で簡単に作れるらしい。
襲撃から数日が立った。その間に、服を新しく作ったり買ったりしてそろえた。
普通の服を買っておこうかと思ったけれど、試しに試着してみたら服が重く感じて驚いた。
風布の服は軽いし丈夫だし汚れないし寒暖まで調節してくれる万能織物なので、今更ほかの服を着るつもりにはなれなかった。
風絹とは違って、一緒に織り込む糸の色によって色も自由に変えられるしね。
さすが王都だけあって、少し探せばいろんな種類の糸がみつかった。
あとは人目につかないところで風布に加工。
風絹はあの洞窟で精霊さんと織らないと作れないけど、風布は風が捕まえられるならどこでだって織れる
これで見た目は普通の服になっている風布制の服を織りあげた。
とはいっても冒険者らしく丈夫で動きやすい形に作り上げた。
下着は村を出る時に精霊さんが山ほど持たせてくれた。悪意を感じる。
折角だから使っているけど相変わらずスケスケのあれだった。まあズボンだし見えないだろうからいいけどね。付け心地は最高だし。
ブーツとコートは既製品を買った。いくらそれっぽく作っていても、特別な素材なのがばれる可能性があるから一番外に見えるものは作らない方がいいと思ったからね。
宿に帰る途中、道を歩いていると路地の方から声をかけられた
「ね、ね、そこのあなた」
明らかに私に声をかけてきているらしいので、そちらを見ると
ウサギをモチーフにしたらしい仮面をつけている全身ローブの人が露店から手招きしていた。
……明らかに不審者だ。
無視して歩き出す。
「ああ!待って無視しないで。怪しいだろうけどせめて話だけはきいて。」
前をふさぐようにウサギさんが回り込んできた。
振り切って逃げてもいいけれど……
ちょっとかわいい仮面が気になってなんかないんだからね!
「なんですかウサギさん。ボク急いでるんです」
まだ薬の効果は残っていたようで、私の声は相変わらず少年のような声だった。
急いでいるのはうそだけれど
「いや、あのね、君は亜人だよね。」
「……それが何?」
「待って待って、ほら私もなんだ。」
ウサギさんが腕輪を見せてくる。
「でも私は結構変異箇所の多い亜人でね、安い腕輪だけじゃ変異箇所が隠しきれないんだ」
ウサギさんが説明してくる。
確かに腕輪にはランクがあって、変異箇所が多いものほど値段が跳ね上がるため、亜人の度合いによっては
手が出ないこともあるらしい。
「腕輪をしているうえで、フードで顔を隠している君を見つけてね、君もそうなんじゃない?」
私の場合はただ顔を隠したいだけなんだけれど、とりあえずうなずいておく。
「実は私はそんな子たち向けに、こういったお面を作って売っているんだよ。」
ウサギさんがバッとローブを広げると、いろんな動物をモチーフにしたお面がいろいろ出てきた。
とは言っても、デザインはリアルでもなく、キャラクターっぽくもない。
張り子の狐面みたいなデザインだ。
「へぇ~これはなかなか好みのデザインかも」
「気に入ってもらえましたか?これさえあればうっかり牙で相手を驚かせることもなくなりますよ」
逆にお面で驚かせそうな気がするけど。
「画期的なアイディアだと思ってたんですけど、なかなか買ってもらえなくて。
そもそも半端な人化で困ってるっていう需要がニッチ過ぎたんですけどね。」
ふむ。実は一目見てからかなり気に入ってしまった。
犬っぽいのから猫っぽいの。熊サルネズミに、これは鳥かな。フクロウ、ツバメ、そのものの動物じゃないんだろうけれど地球のと似たような動物のお面は見ていて面白い。
「手間を考えると高く買ってほしいんですけど、売れなさ過ぎて生活費が無くなりそうなんです!!
安くしますから一個でいいので買ってもらえませんか?」
「……全部。」
「は?」
「全部一種類づつほしい!!」
しまった衝動買いしてしまった。
昔から小さい人形とかコンプリート要素のあるものは集めてしまう癖があるんだよね。
あの後大喜びするお面屋さんと別れて宿に向かっている。
今日売った細工物の稼ぎが飛んで行ってしまった。
顔には猫仮面をつけているんだけど、なかなか快適なんじゃないだろうか。
まあ、仮面をつけていても私は特徴的な銀の髪のせいでフードを下せない。
あの指名手配については放置してほとぼりが冷めるのを待っている状況だ。
さすがに貴族らしい相手に手は出せない。
小人の腰掛亭に着いた。
ここの主人は小人族のおじさんでだけど、奥さんはネズミの獣人だ。
奥さんは腕輪を付けずに過ごしている。
「戻りました。」
「お帰り、シラユキちゃん。あら、なんだかかわいらしいのつけてるね。」
「あ!お姉ちゃんそれなぁに?」
早速仮面に反応される。
宿の夫婦の娘が私の仮面に興味深々だ。
ちなみに娘さんはネズミの獣人だ。人種が違う夫婦の子でもハーフにはならないらしい。
「ねぇ、それどこで買ったの~?」
「あっちの通りにウサギの仮面つけた人の露店があるの知ってる?」
「ああ!みたことある。そっかあのお面売り物だったのか。」
実は今日帰ってくるまでに似たような感じで何度か子供に話しかけられた。
お面屋さんはターゲットを亜人にしていたけれど、こういうのは絶対子供の方が好きだよね。
さて、折角買ったお面だけれど、このままだと食事とかで困ってしまいます。
なので改造することにしました。
お面の鼻が当たる場所の上あたりから上下に切り分ける。
ちょっとデザインが不自然になったところは自慢の細工技術でちょいちょいと手直しする。
さらにこめかみのあたりに細工を施して、はめ込んでまた一枚のお面に戻せるようにする。
上下に分かれたお面にそれぞれベルトみたいな留め具をつければ……
うん、上出来だね。
これで普段は一枚のお面だけど、食事とかで外したいときは口の部分だけ外れて首のところにひっかけて置くことができるようになった。
逆に上のお面が邪魔な時は、口だけ残して上の部分を持ち上げるようにすることができる。
……お面屋さんには悪いけど、触ってみた感じだと自分でも一から作れそうだね。
デザインも手直ししつつ盗んでやったし。
次の日、早速つけたまま出かけると、お面屋さんの露店の前を通りかかった。
……わあ、子供に大人気。
「ああ!?昨日のお客さん。あれ、なんか改造されてる。いや、それよりもなぜか子供がお面を欲しがるんですよ!!」
「ああ~、昨日やたら欲しがられたからここを紹介したんだよ。売ればいいんじゃない?」
「そうはいっても、そこそこいい素材使ってますし、子供に売れる値段じゃ……」
「じゃあ、もう最初から子供向けに作ったらいいんじゃない?」
結局お面屋さんは、最初の客層を諦めて子供用に安い素材で作ったお面を売ることにしたようだ。
このお面、割と流行って今では街中でそこそこつけている人を見かける。
そういえば亜人変化の腕輪も流行ってるらしいし、そういう流行になっているのかも。
なので、私もあまり注目されることなくお面で顔を隠して過ごせている。
これだけ変装できたなら、そろそろ冒険者としての活動を始めても大丈夫かな。
いい加減最初の目的を果たしたいし、明日からギルド行ってみようかな。
あ、登録の時にもらった冊子読んでないや。
そしてベスターから奪った本も忘れてた。




