フェリウスへの街道
「がははは、すまねえな嬢ちゃん。確かに坊主は失礼だったな。」
私が馬車に引っこ抜かれてから時間は過ぎて、私はそのまま馬車に相乗りさせてもらって、
今は街道沿いにある小さな村まで来ることができた。
その村に一つだけある食堂付きの宿で御者さんと護衛さんの三人で食事をしている。
「声で嬢ちゃんだってことは気が付いていたが、俺くらいになると子供は誰でも坊主って感じになっちまう。」
「それでも女の子には坊主は失礼ですよべスターさん。ねぇシロちゃん」
御者さんは馬車のオーナーでべスターさん。
護衛さんは冒険者ギルドから派遣されてきたリュートさん。
べスターさんは気のいい親父さんって感じの人で、今もエールを飲みながら豪快に笑っている。
私のことを坊主坊主と呼んでくるので、男の子に間違えられているのかなと思ったけれど、どうやらそうじゃなかったみたいだ。
「で、俺はエルフスキーに最近卸されてるっていう新作を狙ってきてたんだが、さすがに手に入らなかったぜ。」
べスターさんはエルフスキーに買い付けに行っていたみたいです。
目当ての者は数が少なくて手に入らなかったけれど、それ以外の工芸品を買い付けれたからそこそこ儲けられそうだそうです。
はて、新作とは何のことだろう。
「それで、なんで嬢ちゃんは一人でたびなんかしてるんだい?」
「そうだね、君はまだ子供みたいだし、保護者はいないの?」
二人の質問にはぼかしを入れながら答えることにしました。
「もうだいぶ前に姉兄とはぐれて、合流するために旅を。多分あっちも探してると思うんだ。
もしかしたら迷宮都市に行けば手がかりがあるかもって教えてもらって……」
「それは大変だったね。じゃあ今は迷宮都市に向かっているのかい?」
「ううん、国家間を移動するための許可証を持ってないんだ。だから冒険者になってランクを上げようかとフェリウスに。」
「冒険者?君がかい」
「冒険者をする実力はあるはずですよ。」
リュートさんは物腰が柔らかい感じのお兄さん。
身に着けている防具や腰の直剣は使い込まれていて、そこそこのベテラン冒険者のようです。
むぅ、私の弓の腕前を見せたはずなのにまだ半信半疑ですか。
べスターさんは私が一人でフェリウスに向かうのが心配らしくて、どうせ行先は同じだからと載せていってくれると言ってくれました。
おかげでフェリウスまでの足が確保できました。しかもただですよ無料
自分に割り当てられた宿の部屋に戻ってきました。
折角なので所持金の確認でもしてみますか。
エルフの村ではお金を扱っていなかったからいまだに大体でしか価値を知りません。
ええと金貨、銀貨、銅貨があって、銅貨以外の二つはそれぞれに滴貨、半貨、丸貨に分かれている。
ほんとは金貨の上にもあるみたいだけど、国ごとに違うもので、高額の取引をするための為替みたいな扱いらしいからこれは商人以外あまり関係ない。
銅貨一枚でパン一個、飲み物一杯って感じで、日本の感覚だと100円くらいの価値かな。
その感じだと、銀貨は一万円、金貨は十万円くらいで滴貨、半貨でその間を補助するって感じ。
あくまで目安で、物流によってだいぶ変わってくるし、国ごとに発行している貨幣が違ったりすることも多いから、旅をするなら価値のある宝石とかに換えて現金は少なめに持っているのがいいみたいだ。
フェリウスに着いて冒険者登録ができるまで、お金を稼ぐのは難しいと思っていたんだけど、
今日倒したサル魔獣の毛皮を丸っと私がもらえることになりました。
早速べスターさんに引き取ってもらって換金率のよさげな宝石と交換してもらえました。
これ一つで宿に五日ほど泊まれるそうです。
「まだ金貨は残してあるし、たぶんフェリウスまでは持つはずだよね。」
一夜明けて、フェリウスへ向かう道をべスターさんの馬車に乗せてもらいながら進む。
街道に馬車が増えてきたからか、べスターさんの馬車も速度を落としてリュートさんは歩いて馬車の周りで護衛をしている。
「なんだか同じ方向に向かう馬車が増えてきましたね。」
「ああ、ちょっと前に別の村につながる道と合流したからな。もうそろそろフェリウスに着くぞ。」
うーん、もっとこう盗賊とか現れたりするのかと思っていたけど、平和に到着できそうだ。
「ああ、嬢ちゃん。あ~失礼なこと聞くが嬢ちゃんずっと顔隠してるし、亜人種だろ。」
べスターさんが言いづらそうに聞いてきました。
顔を隠しているのはエルフだってことを言わない方がいいと教えられていたからだけど。
人族じゃない種族のことだよね。とりあえずうなずいておきます。
もしかして人族以外は迫害されていたりしたんだろうか。
「いや、勘違いしないでくれよ。亜人種だからって国に入るのにはなんの問題もないんだ。
結構昔の話だが、亜人種がまだ差別されていたときに、異世界の勇者様が差別をなくそうとしたことがあってだな。」
べスターさんが荷台でごそごそと何かを探して、腕輪を一つつまみあげます。
「これは付けると亜人の特徴を隠して、人族と同じ見た目になれる魔道具だ。
例の勇者様が作り上げたもので、これが普及したおかげで亜人差別が無くなるきっかけになった。
ああ、見た目が少し違うだけで、根本は一緒の人間なんだって人族に気づかせたそうだ。」
すごい勇者ですね。ただ差別はダメだって言うだけじゃなくてちゃんと差別をなくす方法を考えただなんて。
「だから嬢ちゃんがなんの種族だったとしてもなにか言われることはないはずだが、嬢ちゃんが亜人と思われたくなくて顔を隠しているんだったらこれを売ってやるよ。使えばいい。」
とても便利な魔道具をべスターさんから格安で譲り受けることができました。
「とはいっても効果に差があってだな。もし嬢ちゃんがそいつで隠しきれないほどの種族特徴を持っているのなら、割高の腕輪を買わなきゃいけないがな。」
「ありがとう。知らなかったから助かったよ。
もしかして朝からうなってたのはそれを言うか悩んでたの?」
「ああ、亜人種であろう奴に亜人種だろって聞くのは勇気がいるからな。最悪怒るやつも多い。」
それもそうか。人とは違うことを嫌がる人は多い。
名も知らない勇者さんはとても立派だと思うな。
べスターは感心しているらしいシロを見ながら
「その勇者が、腕輪の売り上げで巨万の富を得たってのは言わんほうがいいだろうな。」
なんて考えていた。
所持金もそうですが、ステータスなどを数値化はしないと思います。
つじつまが合わなくなりそうなので。
もしかしたらどこかで大まかに表示するくらいのことはあるかもしれませんが。




