第6話 蒼き残響
力には、
必ず“記憶”が残る。
それがどれほど時を越えても、
誰かの願いだったなら、
完全には消えない。
HYDRA CHRYSALIS
REBIRTH
第6話 蒼き残響
黒い闇が落ちてくる。
港湾都市・蒼海区。
上空を覆う、
黒海裂界。
その中心から放たれた、
終焉の侵食。
「――回収開始」
巨大な“目”が玲司を見つめていた。
完全に。
狙われている。
「玲司!!」
AQUA-7が飛び出す。
白い装甲が加速。
浮遊ユニット全開。
超圧水刃を展開し、
黒い闇へ突撃する。
衝突。
轟音。
だが。
黒い粒子が装甲を侵食する。
「っ……!」
AQUA-7の右肩装甲が消滅。
存在そのものを削られている。
「下がれ!!」
玲司が叫ぶ。
その瞬間。
黒い闇が玲司へ到達する。
避けられない。
だが。
深海色の光が割り込む。
EVE。
蒼い翼を広げ、
玲司の前へ立つ。
「――防壁展開」
深海粒子が空間へ広がる。
巨大な水膜。
黒い闇と衝突。
空間が軋む。
「――っ!」
EVEの表情が歪む。
押されている。
玲司が目を見開く。
「なんでそこまで……!」
EVEが振り返る。
その瞳。
どこか人間らしい。
「――継承者は、
まだ失えない」
その瞬間。
黒海裂界の“目”が開く。
さらに巨大に。
「――原初残響確認」
玲司の胸が脈動する。
ドクン。
ドクン。
強い。
今までとは比べ物にならない。
「がっ……!!」
頭へ映像が流れ込む。
白い病室。
雨音。
窓際に立つ男。
榊悠真。
「……っ」
玲司が息を呑む。
榊が海を見ている。
静かに。
疲れ切った顔で。
だが。
どこか穏やかに。
『……これで終わるなら』
小さな声。
『少しはマシか』
玲司の目が揺れる。
記憶じゃない。
感情まで流れ込んでくる。
孤独。
痛み。
そして。
“託す想い”。
『……誰かに繋がればいい』
その瞬間。
玲司の胸の原初因子が発光する。
暴走的に。
「――玲司!?」
AQUA-7が振り返る。
海が揺れる。
港全体の水が浮き上がる。
「うぉぉぉぉ!!」
玲司が叫ぶ。
深海色の粒子が爆発的に拡散。
巨大な水流が、
玲司の背後で翼を形成していく。
未完成。
不安定。
だが。
確かに。
“あの形”。
AQUA-7が息を呑む。
「……星海翼」
EVEの瞳が揺れる。
「――適合率急上昇」
黒海裂界の“目”が反応する。
「――危険認定」
黒い闇が一斉に玲司へ向かう。
だが。
玲司が手を振る。
巨大水流が咆哮。
龍のように空を裂き、
黒い闇を押し返す。
初めて。
黒海裂界側が後退した。
都市中の人々が、
蒼い空を見上げる。
「あれ……」
「三年前の……」
誰もが知っていた。
記録映像。
世界を救った、
蒼き翼。
玲司の視界が滲む。
頭の中で、
榊の声が響く。
『……無理すんなよ』
玲司が苦笑する。
「今さらだろ」
その瞬間。
黒海裂界が脈動する。
巨大な裂け目の奥。
さらに深い闇。
何かが動く。
EVEの表情が変わる。
「――まずい」
AQUA-7が叫ぶ。
「全員離脱しろ!!」
玲司が空を見る。
黒い“目”の奥。
そこに。
巨大な人影が見えた。
終焉存在とは違う。
もっと“人間”に近い。
だが。
全身が黒い深海粒子で構成されている。
そして。
その顔。
玲司の心臓が止まりかける。
「……嘘だろ」
その存在は、
静かに玲司を見下ろしていた。
深海色の瞳で。
まるで。
榊悠真に似た姿で。
―――続く
第6話を読んでいただきありがとうございます。
玲司の中で、
ついに榊悠真の“残響”が動き始めました。
そして現れた、
黒海裂界の奥に存在する新たな人影。
REBIRTH編は、
継承だけではなく、
“残された存在”の真実へ近づいていきます。




