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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第54話 アダム計画

世界を救う計画など、最初から存在しなかった。


あったのは、世界を未来へ繋ぐための選択だけ。


その選択を、人は後になって"計画"と呼ぶ。

【UNKNOWN CODE : ADAM】


その文字は、何度画面を更新しても消えなかった。


澪は震える指で端末を操作する。


データベース検索。


外部記録照合。


HYDRA計画アーカイブ。


すべて同じ結果だった。


――該当データなし。


「存在しない……?」


澪は眉をひそめる。


「こんなコード、どこにも登録されていない。」


その時だった。


少年が静かに首を振る。


「違う。」


「消されたんだ。」


悠真が少年を見る。


「誰に?」


少年は苦しそうに目を閉じた。


「……榊蒼一。」


記録庫の空気が止まる。


第一守護者でさえ微動だにしない。


「蒼一が?」


「どうして。」


少年はゆっくりと歩き始める。


壊れ始めたオリジン・セルの欠片へ近付き、そっと手を添えた。


「HYDRA計画は、人類を生かすための計画だった。」


「でも、その前に存在した計画がある。」


「誰にも知られてはいけなかった計画。」


「それが――」


少年は悠真を見つめる。


「アダム計画。」


その名を口にした瞬間。


記録庫全体へ白い光が走った。


結晶が一斉に共鳴する。


すると、一つの映像が自動的に再生された。


榊蒼一が映っている。


今より若い。


まだ白髪も少ない。


その目には強い意志が宿っていた。


『記録番号、A-000。』


『閲覧権限、アダムコード保有者限定。』


蒼一は静かに深呼吸する。


『もしこの記録を見ているなら、計画は失敗した。』


『あるいは――』


『成功し過ぎたのかもしれない。』


悠真は思わず息を止めた。


『HYDRAは、人類を進化させる計画ではない。』


『黒海を生み出す計画でもない。』


『HYDRAとは、時間を稼ぐための檻だ。』


映像の背後には巨大なガラス窓があった。


その向こう側には、一面の黒い海。


しかし、その海には無数の巨大な"影"が漂っている。


魚ではない。


人でもない。


あまりにも巨大で、形さえ認識できなかった。


『本当の敵は、海ではない。』


『海の向こう側にいる。』


その言葉と同時に映像が乱れる。


ノイズ。


激しい警報音。


誰かの叫び声。


『侵入確認!』


『境界が破られます!』


『アダムを逃がせ!』


蒼一は振り返る。


その表情には初めて恐怖が浮かんでいた。


『頼む……。』


『今度こそ、人類を終わらせるな。』


映像はそこで途切れた。


長い沈黙。


誰も言葉を発せない。


澪はゆっくりと呟いた。


「海の向こう側……。」


「黒海より外に、何かがいるっていうの?」


少年は静かに頷く。


「だから、この街は造られた。」


「だから守護者は戦い続けてきた。」


「そして……。」


少年は悠真へ歩み寄る。


「だから君は、生まれた。」


その瞬間。


黒い球体の亀裂が大きく広がる。


パキィィン――


砕け散る音と共に、一本の腕ではなく、一人の人影がゆっくりと姿を現し始めた。


その姿を見た悠真は、思わず息を呑む。


「……俺?」


そこに立っていたのは。


悠真と、まったく同じ顔をした青年だった。

第54話をお読みいただき、ありがとうございました。


ついに語られた「アダム計画」。


しかし、それはHYDRA計画よりもさらに古く、さらに巨大な秘密へと繋がっていました。


そして最後に現れた、悠真と同じ顔を持つ青年。


彼は敵なのか、それとも失われた過去なのか。


次回、物語は大きく動き始めます。


引き続き『HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH―』をよろしくお願いいたします。

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