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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第51話 目覚めの胎動

世界は、ある日突然終わったわけではない。


誰も気付かないほど小さな異変が積み重なり、

やがて取り返しのつかない未来へと変わっていった。


その鼓動は、今も止まってはいない。

ドクン――


鼓動が響く。


先ほどとは比べものにならないほど重い振動だった。


記録庫を漂っていた蒼い結晶が一斉に明滅を始める。


それは警報にも似た、不規則な光だった。


少年は唇を噛み締める。


「間に合わなかった……。」


悠真は最深部を見つめた。


「何が目覚める?」


少年は静かに首を横へ振る。


「違う。」


「目覚めるんじゃない。」


「もう……ずっと前から起きていたんだ。」


その言葉に、澪は息を呑む。


「じゃあ今までの鼓動は……。」


「眠っていたんじゃなく、私たちには聞こえていなかっただけ。」


その瞬間だった。


第二管理者の気配が記録庫全体へ広がる。


姿は見えない。


だが、空間そのものが意思を持ったような圧迫感が二人を包み込む。


第一守護者が再び膝をついた。


その巨大な身体が深く頭を垂れる。


少年も同じように胸へ手を当てる。


まるで絶対的な存在へ敬意を示しているようだった。


悠真だけが立っていた。


胸の鼓動は速い。


逃げたい。


それでも目を逸らせなかった。


すると暗闇の中から、一滴の水が現れた。


ぽたり。


落ちることなく宙へ浮かぶ透明な雫。


あまりにも小さい。


それなのに、目を離せない。


「……これが。」


澪が小さく呟く。


「オリジン・セル……?」


少年は静かに頷いた。


「違う。」


「これは、その欠片。」


「本体は、もっと深い場所にある。」


雫はゆっくりと回転する。


すると内部へ、小さな光景が映り始めた。


海。


青空。


風。


そして砂浜を走る一人の少年。


その少年は突然振り返る。


悠真だった。


今より幼い。


十歳くらいだろうか。


その笑顔は、今の悠真には覚えがない。


「俺……。」


映像はそこで終わらない。


画面の外から、一人の女性が歩いてくる。


白衣姿。


優しく微笑みながら、少年・悠真の頭を撫でる。


『大丈夫。』


『あなたは、きっと成功する。』


その声を聞いた瞬間。


悠真の視界が激しく揺れた。


頭痛が走る。


膝をつく。


「ぐっ……!」


「悠真!」


澪が支える。


しかし悠真は、震える声で呟いた。


「あの人……。」


「知ってる。」


「でも、思い出せない。」


その時だった。


雫に一本の亀裂が走る。


パキッ――


小さな音だった。


だが、その音を聞いた少年の顔色が変わる。


「駄目だ……!」


「触れちゃいけない!」


遅かった。


亀裂から黒い粒子がゆっくりと漏れ出す。


その粒子は水中へ溶けることなく、生き物のように形を変えていく。


第一守護者が初めて戦闘態勢を取った。


胸の結晶が眩く輝く。


第二管理者の声が、記録庫全体へ響き渡る。


『隔離失敗。』


『封印率、低下。』


『第三封印を解除。』


悠真はその言葉の意味を理解できなかった。


だが少年だけは絶望した表情で呟く。


「……最悪だ。」


「封印が、壊れ始めた。」

第51話をお読みいただき、ありがとうございました。


悠真が見た幼い日の記憶。

そして「オリジン・セル」の欠片に生じた亀裂。


止まっていたはずの物語は、ここから一気に動き始めます。


次回、黒海裂界に封じられていた"第三の存在"が姿を現します。


引き続き『HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH―』をよろしくお願いいたします。

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