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8 、HYDRA CHRYSALIS ―REBIRTH― 「終焉の先で、世界は再び生まれ変わる」  作者: Nao9999


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第44話 記憶の継承者

記憶は、脳だけに刻まれるものではない。


深海は、失われた過去さえも静かに抱き続けている。


その記憶を受け継ぐ者が現れた時、止まっていた運命は再び動き始める。

「俺を……知っていた?」


悠真は荒い息を整えながら立ち上がった。


胸の鼓動はまだ速い。


だが、それ以上に頭の奥が熱を帯びていた。


断片的な映像。


知らない景色。


知らない人々。


それなのに、まるで自分自身が体験した記憶のような生々しさだった。


「さっき、何が見えたの?」


澪が慎重に尋ねる。


悠真はゆっくりと首を振る。


「分からない……いや、分かりたくないのかもしれない。」


その言葉を口にした瞬間だった。


ドクン――


再び海底が脈打つ。


都市全体が淡い蒼色に染まり、建物の壁面へ無数の紋様が浮かび上がる。


まるで文字。


しかし人類のどの言語とも違う。


澪は端末を向け、解析を開始した。


「翻訳機能が反応してる……?」


画面には意味不明の文字列が高速で流れていく。


やがて、一文だけが日本語へ変換された。


【継承対象、適合率九十八・七パーセント】


澪の顔色が変わる。


「継承対象……?」


悠真も画面を見つめる。


その数字だけが、不気味なほど鮮明に表示され続けていた。


九十八・七。


あと少しで百。


「何を継承するっていうんだ……。」


誰も答えない。


いや。


答えられる存在は、最初から目の前にいた。


街の中央。


最も高い塔の上。


いつの間にか、一人の人影が立っていた。


他の深海服とは違う。


純白。


まるで新品のように傷一つない装甲。


そして、その胸には黒い結晶が埋め込まれていた。


『観測完了。』


静かな声が響く。


『記録照合開始。』


『個体識別──榊悠真。』


『継承資格を確認。』


悠真の全身を冷たい汗が流れた。


名前まで知られている。


偶然ではない。


最初から、自分を待っていた。


「お前は何者なんだ!」


叫びに応えるように、白い人影はゆっくりと右手を掲げた。


その瞬間。


街中の深海服たちが一斉に悠真へ向き直る。


数百。


いや、数千。


誰一人として声を発しない。


ただ静かに膝をついた。


澪は息を呑む。


「嘘……。」


まるで王を迎える儀式。


あるいは──


長い眠りから目覚めた主へ捧げる礼。


その光景に、悠真は言葉を失う。


すると白い人影が、初めて感情を含んだ声で告げた。


『ようやく帰ってきたな。』


『最後の継承者よ。』


その一言は、深海の静寂よりも重く悠真の胸へ沈んでいった。

第44話をお読みいただき、ありがとうございました。


「保存庫」の正体は、少しずつその姿を現し始めました。


しかし、明かされた謎の裏では、さらに大きな真実が悠真たちを待ち受けています。


次回は、「最後の継承者」という言葉の意味が物語を大きく動かします。


引き続き応援よろしくお願いいたします。

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